出発のとき
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「では、クレア姫。馬車にお乗りください。御者車ではございませんが、こうして座る席も付いてございます」
そう言って、マヒムは、クレアを二頭立ての幌馬車の席に案内した。
改めて幌馬車とは、荷物も積めるが、人を乗せることが主な目的の馬車である。
クレアは、この幌馬車で、この村にやって来た。
「あなたは、わたしたちが、これから楽しく旅行に行くとでも、思ってるわけ」
「いえ。そうではございませんが、こちらに来られたときと同じ馬車でございます。なにか不備でもございましたでしょうか」
このマヒムは、理不尽とも思える、クレア姫の言い分に、内心腹を立てながらも、丁重に質問を返した。
「幌馬車で来たのは、リッチたちの眼を欺くためよ」
クレアは、マヒムにそう答えた。
「でしたら、同じように、また幌馬車に乗られては?」
「あなた。なにも考えてないの? ここに来た目的と、これからの目的は、全然違うわ。この馬車に乗っているときに、リッチたちに襲われたら、どう対処するわけ」
「ですから、そのために、十兵衛さまに会いに来られたのではないのですか?」
マヒムは、内心のイラつきを隠しながら、クレア姫に尋ねる。
「わたしは当初。十兵衛と同じ馬に乗って、背中にと思っていたけれど、まだアレではね」
そう。少年は、馬に乗るの初めてだった。鐙に足を掛けて、鞍に座ることはできたが、そこからは簡単にはいかない。
「よーし。いい子だ。大人しくオレのいうことを聞いてくれよ」
少年は、なんとか、馬を落ち着かせるところまでは成功していた。
「だから、わたしも馬に乗っていくわ」
クレア姫を幌馬車に乗せてきた御者は、ここでお役御免となるが、これから別の馬を借りて、王様にこのことを伝えに行く大事な役目がまだあるのだ。
「申し訳ないけど、わたしにも、馬を用意してちょうだい」
クレアは、そばにいた村人に、そう命じた。
そうして高貴なクレア姫にと、用意されたのは白馬だ。
クレアは、その間に、鎧を身につける。
身につけた鎧は、全身を覆うものではなく、胸、肩、腕、腰、脚の部分を防御する、動きやすいものだ。
この鎧を身につけたクレアは、騎士としての美しさも纏っている。
クレアは、鐙に足を掛けて、鞍に跨った。
「出発の準備はいいわね! すべては死の王リッチを倒すために!」
クレアは、そう号令した。




