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自走式火薬樽は取次を通してください

閻婆惜でございます。

本日は、梁山泊へ戻った後の配置整理です。

水軍衆は増えました。

伝令役も増えました。

北山酒店の担当も決まりました。

成果は大きいです。

ですが、問題も増えました。

李逵様です。

宋江様を慕ってくださるのは結構です。

ですが、夫婦の部屋の前で叫ばれると困ります。

ここは宋江様の部屋であり、私の部屋でもございます。

男が一人で取次もなく来る場所ではありません。

攻略本には、こんな日常業務まで載っておりませんでした。

水軍管理。

危険人物管理。

婚姻案件管理。

そして、李逵様用の貼り紙作成。

梁山泊へ戻っても、休暇はありません。

本当に、朝の茶を飲む暇もございません。

梁山泊へ戻ってから、私はようやく眠れると思っていた。

思っていただけだった。

朝になり、帳面を開き、昨日作った覚書をもう一度確認する。

水軍管理。

危険人物管理。

婚姻案件管理。

この三つだけでも十分多い。

だが、梁山泊は私に休暇を与えてくれるほど優しくなかった。

「宋公明殿はいるか!」

戸の外で、大きな声が響いた。

筆が止まった。

朝です――

声が大きいです。

そして、ここは宋江様の部屋でございます。

同時に、私の部屋でもございます。

私は宋江様の妻であり、同じ部屋を使っている。

つまり、宋江様を探して男が一人でここまで来るということは、私の生活圏へ男が取次なしで踏み込んでくるということである。

規律違反。

風紀違反。

そして何より、うるさい。

「宋公明殿!」

また声がした――

戸が揺れた。

やめてください。

戸にも罪はございません。

宋江様は、ちょうど外へ出ていた。

梁山泊へ戻ったばかりで、挨拶やら相談やらが多いらしい。

その結果、宋江様を探す李逵様が、夫婦の部屋の前まで直送されてきた。

自走式火薬樽、生活区画に到着。

返品不可。

取扱注意。

非常に困る。

私は立ち上がり、戸を開けた。

そこに、李逵様が立っていた。

黒い。

大きい。

声も大きい。

そして、何の悪気もなさそうな顔である。

悪気がない――

これが一番厄介でございます。

「奥方、宋公明殿はいるか」

「おりません」

「どこだ」

「存じません」

「奥方なのに知らねえのか」

知りません。

妻は位置情報管理装置ではございません。

私は一度、深く息を吸った。

怒鳴ってはいけない。

相手は自走式火薬樽である。

火花を散らすと爆発する。

「李逵様」

「何だ」

「宋江様をお探しの場合、いきなりこちらへ来るのはお控えください」

「なぜだ」

「ここは宋江様の部屋であると同時に、私の部屋でもございます」

「そうか」

「はい。夫婦の部屋です」

「夫婦の部屋」

李逵様は少し考えた。

理解しているのか、していないのか、顔では分からない。

「つまり、男が一人で取次もなく来る場所ではありません」

「とりつぎ?」

「誰かに先に伝えてもらうことです」

「最初からそう言え」

今、言いました。

かなり丁寧に言いました。

「今後は、宋江様をお探しの時は、まず外の者に尋ねてください。部屋の戸を叩くのは最後です」

「急ぎなら?」

「急ぎでもです」

「飯の時は?」

「飯の時もです」

「喧嘩の時は?」

「喧嘩をしないでください」

李逵様は不満そうに鼻を鳴らした。

分かっていない。

完全には分かっていない。

これは貼り紙が必要です。

難しい文では駄目だ。

この方には仕様書より貼り紙である。

私は頭の中で文面を考えた。

一、宋江様を探す時は取次を通すこと。

二、夫婦の部屋の前で叫ばないこと。

三、戸を壊さないこと。

四、喧嘩の報告をしに来ないこと。

五、食べ物の要求は厨房へ。

多い――

張り紙一枚では足りない。

「奥方、宋公明殿が戻ったら言ってくれ」

「何をでしょう」

「俺が探していたと」

「承知しました」

「すぐだぞ」

「なるべく早くお伝えいたします」

「なるべくじゃねえ。すぐだ」

「取次を通してください」

李逵様は、また鼻を鳴らした。

そして、ようやく去っていった。

足音が遠ざかり、やっと静かになった。

私は戸を閉め、机に戻り、筆を取る。

そして、昨日の覚書の下に新しい項目を書き加えた。

六、李逵様の単独訪問は禁止。

七、宋江様の所在確認は取次制。

八、夫婦の部屋前での大声は禁止。

梁山泊に戻った途端、管理項目が増えている。

悪女になる暇どころか、朝の茶も飲めない。

その後、晁蓋様と呉用様の前で、江州組の配置整理が行われた。

宋江様も同席している。

李逵様は、宋江様の背後に立っていた。

近い。

とても近い。

護衛と言えば聞こえはよいが、実際には懐いた大型犬である。

ただし、噛む力が強すぎる。

「まず、水軍衆だ」

晁蓋様が言った。

李俊様が進み出る。

「川筋の者は、こちらでまとめられます。張横は舟を扱い、張順は水中のことに向きます」

張横様が頷き、張順様は静かに頭を下げた。

大変よろしい。

李俊様は全体を見る。

張横様は川を押さえる。

張順様は水中任務。

水軍配置として、非常に分かりやすい。

「李俊様を中心に、水辺の者をまとめていただくのがよろしいかと」

私が言うと、晁蓋様は大きく頷いた。

「うむ。宋江もそれでよいか」

「もちろんだ。李俊殿なら安心できる」

宋江様も納得している。

呉用様は扇の向こうで少し笑っていた。

その笑いを見て、私は警戒を一段上げた。

この方は、水軍配置も婚姻配置も同じ顔で見る可能性がある。

危険です――

次に、穆弘様と穆春様である。

穆弘様は、屋敷を焼いてまで人を連れてきた。

財を惜しまない。

撤退判断も早い。

人をまとめる力もある。

「穆弘様は、人員や物資の扱いにも向いておられます」

「奥方はよく見ておるな」

晁蓋様が笑う。

見ております。

見ないと事故になりますので……

「穆春様は現場対応が早いです。急な移動や受け入れの時に力を発揮されると思います」

穆春様は少し照れたように頭を下げた。

良い反応です。

評価しやすい。

薛永様は、少し離れて立っていた。

まだ梁山泊の空気に慣れていない顔である。

途中採用。

いや、途中同行。

正式な手続きは何もない。

「薛永様は、武芸もあり、外で人前に立つことにも慣れております」

「芸人だからな」

薛永様が苦く笑った。

「外回りや使い走り、土地の様子を見る時に向いているかと」

「なるほど」

呉用様が頷く。

その頷き方が、また何か考えていそうで嫌です。

そして、李立様である。

李立様は静かに立っている。

静かに立っているだけなのに、なぜか不安になる。

「李立殿はどうする」

晁蓋様が聞いた。

私は即答しかけて、一拍置いた。

「北山酒店がよろしいかと」

李立様がこちらを見た。

「酒店でございますか」

「はい、店舗運営経験はございます」

経験はある。

非常にあります。

ただし、その経験の中身が問題である。

「ただし、飲食物への信用管理が必要です」

「信用管理?」

李立様が首を傾げた。

「薬を盛らないでください、という意味です」

場が一瞬止まった。

張順様が咳払いをした。

李俊様は目を伏せた。

宋江様は苦笑した。

李立様は、少し困ったように笑う。

「奥方、はっきり言われますな」

「実績がございますので」

「昔のことです」

「最近も危なかったです」

李立様は黙った。

事実でございます。

「北山酒店は任せます。ただし、定期確認は必要です。厨房、酒、水、薬、客の扱い。全部です」

「そこまで見ますか」

「見ます」

きっぱり言った。

李立様は肩をすくめた。

「分かりました。薬は盛りません」

その言い方も少し不安です。

ですが、言質は取りました。

覚書に書きます。

戴宗様は、伝令役としてすぐに話がまとまった。

神行法。

役所事情。

情報連絡。

この方は、移動と連絡に向いている。

しかも、李逵様の扱いも多少分かっている。

多少――

本当に多少ですが……

「李逵はどうする」

晁蓋様が言った瞬間、私は宋江様を見た。

宋江様も私を見た。

李逵様は、なぜ見られているのか分かっていない顔をしている。

「李逵様は、宋江様の近くで」

私は言った。

「ただし、規律を定める必要がございます」

「規律?」

李逵様が顔をしかめた。

「はい。先ほどの件です」

「先ほど?」

「夫婦の部屋の前で叫んだ件です」

晁蓋様が吹き出した。

呉用様は扇で口元を隠した。

宋江様は額に手を当てた。

「李逵殿」

宋江様が低く言う。

「婆惜の部屋でもあるのだ。むやみに訪ねてはならぬ」

「宋公明殿に会いたかっただけだ」

「ならば、人を通せ」

「人を?」

「そうだ」

李逵様は、少し不満そうだったが、宋江様に言われると大人しくなった。

制御装置、作動確認。

「分かった。次からは、人を通す」

よし――

一応、前進です。

私はすかさず言った。

「では、貼り紙を出します」

「貼り紙?」

李逵様がまた首を傾げる。

「李逵様用です」

「俺用か」

「はい」

「字は読めるぞ」

「短く書きます」

「ならいい」

いいのですか……

いいようです。

貼り紙案は、後で考える。

その後、配置の話は一通り終わった。

李俊様を中心に水軍衆が整えられ、張横様と張順様がそれぞれの持ち場へ向かう。

穆弘様と穆春様は、人や物の整理にも関わる。

李立様は北山酒店。

薛永様は外回り。

戴宗様は伝令。

李逵様は宋江様の近く、ただし取次必須。

成果は大きい。

ただし管理が多い。

私は部屋に戻ると、また帳面を開いた。

水軍配置。

危険人物配置。

北山酒店監査。

李逵様訪問規則。

婚姻事故防止策。

項目が増えている。

増えすぎている。

その時、戸の外で足音が止まった。

まさか――

私は身構えた。

「奥方」

声は李俊様だった。

よかった――

自走式火薬樽ではない。

「どうぞ」

そう言うと、李俊様は部屋へ入らず、戸口に控えた。

さすがでございます。

取次、距離、声量。

全部、分かっておられる。

「先ほどの配置の件、改めて礼を」

「礼など。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「扈三娘殿のことも、覚えております」

小さな声だった。

私は、少しだけ目を伏せた。

「ありがとうございます」

「奥方は、ずいぶん忙しいですな」

「はい」

否定できない……

李俊様は穏やかに笑った。

「それだけ、守りたいものが多いのでしょう」

その言葉に、私は少しだけ黙った。

守りたいもの――

宋江様の身柄。

梁山泊に集まる人材。

これから来る扈三娘様の選択肢。

そして、自分が悪女として処理されない未来。

多い。

本当に多い。

「守るというより、事故を減らしたいだけです」

「それも守ることです」

李俊様はそう言って、静かに去った。

私は帳面に視線を落とした。

事故を減らす。

逃げ道を作る。

配置を整える。

地味である。

非常に地味である。

だが、たぶん、それが私の戦い方だ。

外では、李逵様の声がまた聞こえた。

「宋公明殿はどこだ!」

私は筆を握りしめた。

取次――

取次を通してください。

梁山泊の日常は、今日も騒がしい。

そして私は、また一行を書き足した。

九、李逵様への貼り紙は大きな字で作成すること。

閻婆惜でございます。

本件、江州組の配置整理についてご報告いたします。

水軍衆は、李俊様を中心に整いました。

張横様は舟。

張順様は水中任務。

戴宗様は伝令。

李立様は北山酒店です。

ただし、李立様には監査が必要です。

薬を盛らない。

これは最低条件でございます。

そして、李逵様です。

宋江様の近くに置くしかありません。

ですが、夫婦の部屋へ取次なしで来るのは困ります。

貼り紙を作ります。

大きな字で作ります。

水軍は増えました。

頭数も増えました。

管理項目も増えました。

梁山泊は、今日も騒がしいです。

朝の茶は、まだ飲めておりません。

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