EP7.1「閑話 取返しの付かないこと」???視点
文字数少ないです。
私は彼のことが好きだ。
私より背が高く、目は沢山あって肌の一部が紫色になっている。
八重歯が伸びたように大きな牙が二本生えていて、口を閉じても収めることが出来ないようだ。
その姿を見ただけで何故だろう。
私の胸は心臓を掴まれたように締め付けられる。
初めて会ったはずなのに、どうしてこんな気持ちになるの?
最初は拒絶させられた。
彼は何かに怯え、恐怖に抗うかのように強がりつつも情けない姿をしていた。
けれどどうしてか、怖いとは思えず、情けないとも切り捨てられない。
私は彼のことを知らないはずなのに、ようやく本音に触れることが出来たと思ってしまう。
そんなにも辛そうにする姿を見たくないとも思った。
あなたがそんな気持ちを抱く必要はないと確信を持って言える。
何も覚えていないのに、私にはそう言える根拠のような気持ちがあった。
間違っていない。
これが間違いのはずがない。
悲しいけれど。
その後、彼はやっぱり助けてくれた。
モンスターに摑まれ、崖下に落ちてもあなたの声が聞こえた。
懐かしい。
改めて思う。
どこか懐かしいと。
郷愁に駆られるような自分の居場所のようなものを彼から強く感じる。
それは間違えることのない絶対的なものであり、それさえあれば怖いものなど何もないと言い切れる。
現に彼と出会ってから一緒にいる間、私は恐怖や不安を感じたことなど一度もなかった。
強いてあるとするなら、彼が私の前から姿を消したときだ。
彼と離れると必ず取り返しのつかないことになってしまい、私は後悔することになる。
私はそれを知っている。
けれど、しつこく彼に付きまとって嫌われないだろうか?
『私のこと好き?』
「んなわけあるか!?」
嫌われてしまった。
その場の勢いで言っただけかもしれないが、彼の本心かもしれない。
でもそんなことで彼から離れるほど、私の気持ちはヤワではない。
あなたが私を嫌いになっても私の気持ちは変わらない。
あなたに生きてほしい。
泣くほど辛いことがあるなら、泣き止むまでそばにいる。
あなたの悲しい気持ちを本当の意味で分かち合うことは出来ないけれど、私はどこにも行かない。
あなたが他人に対して距離を置くのは知っている。
そして困っている人がいるとどうしても助けてしまうことも知っている。
理由は判らないけれど、そんなあなただからこそ、私は救われた。
あなたがどこかに行くのなら私も一緒についていく。
決して一人にはしない。
寄り添う私を許してほしい。
私の帰る場所はあなただから。




