EP15.1「閑話 呆れと疑問」ルシウス視点
文字数少ないです。
ガイくん。きみは全く…………何てお人好しなんだ。
遠く離れた場所、森の中へと入って行くガイくんと小娘をボクは見送っていた。
きみはきみ自身に関係のない問題に首を突っ込み、解決しようと奮闘するのだろう。
呆れた感情を持ちつつも、彼に対する想いは変わらない。
いや、寧ろだからこそ、ボクがきみに執着してしまうと言っても過言ではない。
きみは優しい。お人好しだ。
そう思えば思うほど、彼の隣を歩く小娘に冷たい感情が湧くが、ガイくんはそれを許さないだろう。
そう思い、改めてガイくんに思いを馳せる。
きみは「異形者」と呼ばれる前から、今と同じく優しい人だったのだろうか?
いや、きっとそうなのだろう。
力を持つことで性格が悪くなる奴はいるが、力を持つことで善性に目覚めて人助けをする奴などいない。
少なくともボクはそんな奴知らない。
元々きみが持っていた心。
それをここまで失くさずに持ち続けた結果がクラークウンゲ殺しに繋がった、とボクは考えている。
だからこそ、ボクはきみを知るきっかけになったわけだが。
「…………」
消えたガイくんと小娘の方角から村全体へと視線を移す。
あの場所はもっと閉鎖的な空気に満ちていたが、それでも素朴な雰囲気はどこか似ている気がした。
ボクがいた時、あの場所にガイくんもいれば、何か変わったのだろうか?
考えたところで時間が戻るなんてことあるはずがないのに、どうしても考えてしまう。
きみのように、優しい人がボクと共にいてくれれば、こんなにも複雑な気持ちを抱えることはなかったのだろうか?
「…………いや」
そう考えるのはもうよそう。
別々の場所に生まれ、違った道を歩んだことで初めてきみの存在価値を知ることになったのだ。
きみならボクの気持ちに理解を示し、寄り添ってくれるだろう。
今はまだ知らないだけだ。
ボクの気持ちを、ボクの想いをきみが知ったら、きみは共感し、ボクの手を取ってくれるだろうか?
……………………。
取って欲しい。
そうであって欲しい。
これから起きるであろう戦いの数々を考えても、命を預けるに足る信頼をきみは既にボクから築き上げている。
モンスターと言われ、人から嫌われ、疎まれ、拒まれるきみだからこそ、ボクは――――
風が吹き荒び、肌を撫でていく。
自然に敵意はなく、ただあるがままに流れてそして消えていく。
醜くも人という存在に縋っていてはただ傷つくだけだ。
けれど、それを口にしても意味がない。
彼自身が、自らの考えでその愚かしさに気づくことで、初めて同じ道を歩めると言える。
その時が来るのをボクはただ待つだけだ。
困っているなら手を差し伸べても良い。
ガイくんは知らないだろうが、ボクはきみに救われた。
その恩をいつでも返したいと思っている。
「…………」
彼の先行きを想ったあと、一緒に行動する小娘に対して疑念を抱く。
アイツは何だ?
ただの人間か?
しかし、そうとは思えず、やはり違和感を感じた。
正体を現すのを期待して殺そうとしたが、ガイくんに阻まれてしまった。
結果として彼に嫌われたのだ。
失策だったな。
あの山はガイくん以外、他の人間は住んでいなかったはずなのに…………どこから現れたんだ?
他の……というと気になることはもう一つある。
それはガイくんと出会ったときにあった魔族の死体だ。
見たことのある顔だった。
あれはライダル派の将軍――――ブタクバランの部下にいた魔族だ。
どうしてこんな場所にわざわざライダル派の魔族が押し掛けてきたんだ?
まさか、ガイくんを狙って派遣したのか?
「……………………気になるな。調べてみるか」
瞬間移動するため、身体全体に魔力を浸透させる。
既に彼の姿は見えず、今は森の中を歩いているのだろうと推測する。
一目見てから離れようかと考え、すぐにやめた。
何か嫌な予感がする。
一度、本土に戻ったほうが良いかもしれない。
「また来るよ。ないとは思うが…………死なないでくれよ、ガイくん」




