欲しいのは…
「でもー白波ーってーお店してー、お金貰ってもーどうするのー?」
白波が紅にお茶とお菓子(紅のリクエストにより安倍川餅)を出していると、紅が少し不思議そうな表情で問いかけてきた。
「お金…ですか?え?」
「うん、使うとこーないよねー?」
双方で首を傾げ合っている。
「お金……?」
「喫茶店ーするんだよねー?」
紅にとって喫茶店――お店とは、お金を得るための施設という認識だ。
「……ああ」
白波は少し困ったように首を傾げていたが……。
「僕、お金を貰おうとは思っていませんよ」
思ってもいなかったので、一瞬紅に言われたことが分からなかったと笑う。
「第一、精霊や神様はお金なんて持っていないでしょう?あれは、人が使うものですから……」
「えー持ってないけどー、要るって言われたらー探してくるよー」
「え?」
「今のじゃーないかもだけどー、埋まってるのとかー、川とかー、海とかー」
事故や事件、もしくは人の任意で地中に埋まったり、水没したりし、そのまま見つかっていないお金はそれなりにあり、人外の存在ならば容易にそれを見つけて拾ってくることができる。
「えーと……」
「あとー普通にー道にー落ちてることもあるー」
落とし物になるお金も少なくない。
「それは……勝手に持ってきちゃうと、落とした人困りますよね?」
「あたしたちにー関係なーいよねー」
「いえいえ、ダメですから!というより、要りませんし!」
お金はいらないのだと、白波は言い募る。
「じゃあーなんでー喫茶店ーしたいのー?」
そう聞く紅に白波は軽く息を吐いてから言う。
「……情報が欲しいんです」
「情報ー?」
「はい……」
少ししょぼんとした感じで頷く白波、そんな白波をフォローするため宝が口を挟む。
「白波、自分がすっごい箱入りだって気にしててさ、外のことをもっと知りたいんだって。それでどうしたらもっと外のことを知ることが出来るか、最近スズメに相談してたんだってさ」
「箱入りー?」
「はい。僕はこの界……スズメが僕の為に創ってくれたこの界から、千年出ていません。その間、スズメや精霊たち、座敷童の皆さんから色々お話を聞いたりして、知ったことも沢山あります。でも……」
ふうっ…と、白波は息を吐く。
「もし今、宝が力を完全に取り戻して、人の世で生きていこう。家を作ろうってなったとしたら……外で――今の人の世で、僕…生きていけると思いますか?」
「うん、無理ーだねーっ!」
紅ははっきり、元気に言い切った。
「ですよね!」
言い切られた白波は、片手で顔を抑える。
今の白波が人の世に出て家を構えるなんて、出来るはずがない。
千年もの間、神の欠片であるスズメにずっと保護されてきたのだから――。
「でもさ、オイラが力を完全に取り戻すのってまだまだかかるんだから、今からそんなに気に病むことないと思うんだけどな?」
気づかうように宝が言う。
「そうは聞いていますが、この前のように纏まって力を取り戻すこともあるでしょう?」
白波はお気楽はことを言う宝に少しじとっとした目を向ける。
スズメがたまたま関わったタツノオトシゴの神様が宝の力を纏まって持っていて、今回それを譲ってもらうことが出来たことで宝は一気に力をつけていた――。
「そーいえばー、力が結構戻ってきたからー、他の力の欠片もー探しーやすーくなったーとかー言ってたっけー」
「まーね!」
紅の言葉に宝はふん!と胸を張る。
「だから、僕も頑張らないと!」
「うん、気持ちは嬉しいけどさぁ、無理はしなくっていいよ」
「だよねー無理してもーろくなーことないよー」
「うう……」
ぴっと紅に白波ルームには不似合いなカーテンを指さしつつ言われ、白波は呻く。
「それにースズメだってー宝がー座敷童にちゃんと戻ったとしてもー、すぐに出て行けーなんてー言わないと思うよー」
「それは、そうだとは思うのですが……」
だからと言って、それに甘えてしまうのはどうかと思う白波――。
「甘えるも何も、今の白波にしたのはスズメだからなぁ……。そこは頼っていいと思うなーオイラ」
「そうでしょうか……」
「うん。でもー、あたしはー白波がー喫茶店してくれたらー嬉しいなー!とは思うよー」
「はい?」
紅の言葉に白波は顔を上げる。
「だってーもう外に出たのにー、白波のーお菓子もらうのー、なーんか悪いなーって思ってたーのー」
紅が今の人の世で座敷童として万全の状態で居続けるためには、白波の菓子に頼らなけらばならない……。良の気がどうしても足りない――。
万全でなくて良いなら……例えば、ずっと眠り続ける状態でいれば、白波の菓子に頼らずとも良いが――。
「でもー家のことーなーんにも見えないままー護ってるのってー、つまんなーいよねー!やっぱりー家の子のこととかー見てたいしー、出来ればーちょーっとくらいー手も出したーい!」
「おい、手を出すのはダメだって!」
「わかってるー!」
とはいえ、きっとやってしまうのだろう……。
「お店だったらー対価払ってー、白波のーお菓子食べれるーでしょうー?そんなだったらー気兼ね無ーく、ここに来れるなーって思うのー」
だから白波が喫茶店をすると言うのなら、それは嬉しいと言う紅。
「でもー、これはーダメー!」
びしっ!と紅はまたレースのカーテンに指をさす。
喫茶店は嬉しいが、ちゃんと落ち着けるいい店にして欲しい――と、紅は言った。
「あははは……」
紅の指摘に笑うしかない白波だった。
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