魅力的なものは色々ある
「え、海辺で月見?いいなぁ!」
囲炉裏部屋でクロが声を上げる。
「うむ。話しを聞くだけで風流だとわかる……。できることなら、ワシもそこに混ざりたかったものだ……」
無念さを隠さずに言う銀河。
「オレらって、しばらく海とか見れなさそうだもんなぁ……」
ため息をつきつつ言うアオ。
「だよなー」
アオの言葉に頷き同じようにため息をつくクロ。
そんな二人の様子を見て、白波は困り顔で言う。
「海辺のこと、すみません。皆が期待していたのはわかってましたが、でもあれは……」
「あ、うん、わかってる!白波はちっとも悪くないから謝らないでくれ!」
「そうそう!事情はちゃんとわかってるんだ。ただ、なんか海って楽しそうじゃん?だからつい残念でさ……」
スズメの計画を引き留めた自覚のある白波が座敷童たちに申し訳なさそうな顔を向けるが、事情をすでに把握している座敷童たちはぶんぶんと手を振って白波は悪くないことはわかっていると言った。
「いつか力をしっかり取り戻して人の世に出たときに、思う存分遊ぶさ」
「うん、そうだよな!」
言い合うクロとアオだが……。
「とはいえ、ワシらは座敷童だ。そうそう海など見れるものではないぞ?」
「う……」
「そ、それは……」
銀河の言葉に絶句するクロとアオ。
「言われてみれば、八真名の家についている間に、海の現地なんか行ったことはないな、俺……」
「オレも……」
家から離れてどこかに遊びに行くなんて、考えてことも無かった……。
座敷童とは家に居るものだ。
「家の者が海に行って、その話しを家族としているのは何度も聞いたことがあるけどな……」
うむむとうなるクロとアオ。
と――。
「そうだ!」
ぽん!とアオが手を打った。
「オレ、イイこと思いついた♪」
「イイこと?」
「アオのイイことか……」
クロは単に不思議そうな顔をしただけだが、銀河は少し苦笑いを浮かべている。
「なんとなく、聞く前から内容がわかりそうな気がしますね……」
白波が銀河と顔を見合わせ肩をすくめる。
「なんだよ!」
むくれるアオ。
「俺、わかんないんだけど……」
クロが首を傾げると、アオはクロの肩をバンバン叩いて「イイヤツだ!」っと笑い声をあげた。
「痛いって!で、なんだよ、イイことって?」
「海辺の家につけばいいんだよ」
「へ?」
「だからー、海で遊びたかったら、海辺にある家の座敷童になれば、いつだって海で遊び放題だろ?」
自信満々に言い切るアオ。
「え?……それは、なんか違うと思うぞ」
「そんなことだろうと、思ったわい」
「ですね」
あきれ顔になるクロ、銀河、白波。
「なんでだよー。家の前に海があれば、海で遊び放題だろ?」
「それよりまず、つける家が在るかどうか問題ではないか?」
「だよなー。もし井戸で気に入った家が見つかったとして、それが山の中にあったらどうする気なんだよ?」
「え、それはー……」
むむむ…と言い淀むアオ。
「だって普通に考えて海の側にある家なんて、その絶対数がそうでない家より少ないだろーが」
「ええー……」
クロに確率が低いと指摘されアオは凹む。
「イイ考えだと思ったんだけどなぁ……」
「ワシとて海で遊びたいのはやまやまではあるが、その為に座敷童としての本分を見失うのは間違っておると思うぞ」
銀河に頭をぽんぽんと宥める様に叩かれて、アオはしょぼんと沈む。
「まぁ、まずは力を取り戻すことですね。人の世に行けるのはそれからですし、もしかしたら、海辺にある家と縁が繋がる可能性だってありますから」
「う、うん!そうだよな!」
可能性としてはゼロではない――と、気持ちを持ち直すアオ。
「でも、もしアオが『この家!』と感じた時は、たとえその家のある場所が海のそばでなくとも躊躇せず行ってくださいね」
「わかってるよー」
白波に念を押されて、苦笑いするアオ。
「あ、なぁ白波、アオのことはとりあえず放って置いてさ……」
不意に気がついたと言う感じで、クロが話しに入ってくる。
「勝手に放らないでくれるか?」
アオがふくれっ面でいうが、クロは無視をする。
「白波のルーム、またあちこち頻繁に動き回るようになってるって聞いたんだけど」
「あ、はい、そうです……」
「そのあたりのことは、ワシらは向こうに行くことが出来んのでよくわからんのだが……」
「なーんか、スズメがぼやいてたなぁ……」
「ええ、完全に固定することが出来無かったと言うのもありましたしね……」
スズメは白波のルームに固定の術を掛け、一か所に固定しようとしたのだが、完全に固定化することは出来なかった。
術を掛ける前よりは動く頻度が減りはしたが、スズメが思うようにすることは出来なかったのだ。
「スズメが術を掛けたところで、完全にその動きを封じることができないし、あの地を取り込むことも断念したので、無駄な労力だと掛けていた術を解いたんですが……」
「なんか、まえよりウロチョロするって宝から聞いたんだけど、それってどんな感じなんだ?」
「うーん……どうなんでしょうねぇ……」
クロの問いに白波は少し困ったように考え込む。
「白波はそうは思ってない?」
「それが……どうやら僕のルーム、僕の前では猫被ってるみたいなんですよ……」
「は?」
困ったようにそう言った白波の言葉に、座敷童たちは目を丸くする。
「猫被るって……ルームが?」
「なんだ、猫を飼っておるからか?」
「あ、そういや猫触りたかったなぁ……」
「それ、今関係ないからな!余計な未練思い起こさせるなよ!」
白波のルームには、座敷童たちにとって希少な触れる猫が居ることを思い出したアオとクロ。
「ああ、海だけでなく、猫のこともあったんだった……」
「もうアオは猫屋敷にでも憑きに行けよ!」
「人界の猫は触れないだろーが!」
「わかってるよ!」
「やめんか、二人とも……。どうしても猫が触りたいのなら、早く力を取り戻し、人界に出れば良いのだ。さすれば、黄魚や緑花と同じように猫と戯れられるぞ」
うんざり顔でクロをアオを嗜める銀河。
「わかってるよー!てか、銀河猫触りたくねーの?」
「いつかワシが力を取り戻し人界に出ることができたら、その日のうちに白波のルームを訪ねようと決意しているほどには触りたいと思っておるが?」
それがどうした?としれっと言う銀河――。
「だよねー」
暖かく、柔らかいものは人だけでなく座敷童たちにも魅力的なのだった。
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