第6話「誰も住みたくない家」
それから十三年後。
祖父から、父に電話がかかってきた。
実家を建て直したい、という話だった。
けれど、土地の所有者は父だ。
家を建て直すには、土地の所有者である父の了承が必要だった。
父は了承した。
しばらくして、父の従兄弟から連絡があった。
「家、建て直したんだってな。この前、見に行ってきたよ」
以前の家は、掘っ立て小屋のような古い家だったという。
「ずいぶん立派な家になってたぞ」
従兄弟は、祖父とも話をしたらしい。
「立派な家になったな」
そう言うと、祖父は答えた。
「そうだな。部屋も作ったんだ」
祖父夫婦の寝室。
再婚相手の連れ子である息子と娘の部屋。
そして、再婚後に生まれた息子の部屋。
「それはよかったな」
従兄弟がそう言うと、祖父はこんなことを言ったという。
「でも、新しくしたところで、俺の物にはならないけどな」
土地の所有者は、父のままだった。
父はその話を、従兄弟から聞いた。
祖父は、再婚後に生まれた息子をたいそう可愛がっていたという。
その一年後、父は母と結婚した。
父は自分で別の土地を買い、そこに家を建てた。
父の実家に戻ることはなかった。
それでも、実家の土地は父の名義のままだった。
そして父は、自分が住んでいないその土地の固定資産税を払い続けた。
やがて、祖父が可愛がっていた息子も成人した。
父は、その弟に言った。
「あの土地、お前に譲るから住まないか?」
しかし、弟は断った。
「あんな家、住みたくない」
そして、こうも言ったという。
「親も好きじゃない。俺は家を出る」
弟はその言葉どおり、家を出ていった。
父が十三歳のとき、突然自分のものになった土地。
父自身はそこを出て、別の場所に家を建てた。
祖父が可愛がっていた息子も、その家を出ていった。
それでも土地だけは、父の名義のまま残った。




