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111 記者会見当日 顔合わせ編


 エリオス王国に戻ってから2週間。戻ってからはいつもの日課であるランニングと騎士団での模擬戦。組合でスレイさんとの訓練を続ける日々だった。


「セイ!」


「打ち込みが強くなってきましたな!」


 実戦経験も増えてきたからか、ジャック爺さんとの打ち合いも様になるようになってきた。


 それでも爺さんは身体強化が80%って感じだが……。とにかくフェイントに引っ掛かる。


「はっはっは! 長年、剣を振ってきた賜物ですな」


 まさにその通りだろう。まだまだ敵う気がしない。


 というか、俺は剣を振り始めて1年未満だ。爺さんからしてみればヒヨッコどころか殻から足を出した程度だろう。


「これくらいにしておきましょうか」


「そうですね」


 今日の訓練終了はいつもより少し早い。というのも、今日は例の記者会見があるからだ。


「どうですかな?」


「うん、スッキリした。これで言いたい事を言えると思います」


「英雄殿の思った事を伝えればいい。きっと気持ちは伝わるはずです」


 キースが用意してくれた冷たいタオルで顔を拭きながらサッパリ。爺さんに頷き返し、朝食を食べて備えよう。


 食堂に行くと今日の朝食はパンだった。スクランブルエッグとベーコン。サラダとスープ。理想的な朝食だ。


「お、今日のパンはナーシィちゃんのだね?」


「は、はい」


 保護されたナーシィちゃんはまだ教会脇の住居に移動していない。さすがに一人きりは可哀想だし、彼女には料理人になりたいという夢ができた。


 最初はパン屋さんをやりたいと言っていたが、王城の調理場を見学しにいったら種類豊富な料理に目を奪われてしまった。


 パンだけじゃなく、料理自体を作りたい。そう願った彼女は王城の調理場で修業を始めたというわけだ。


 彼女が作った料理は俺やアリアちゃんに優先的に提供される。俺達が味見係としてかって出たのもあって、彼女の作った料理は半人前であろうが提供されている。


 といっても、料理長や他の料理人も驚くほどの知識吸収力と手間の良さ。経験を積みながら味のセンスや独自のセンスを昇華するだけだと料理長に言わせるほどの才能を持っていた。


「うん。美味しい」


「えへへ」


 彼女の嬉しそうな笑顔を見て朝から癒される。朝食を食べて準備を終えたら本番だ。


 王城の会議室には各新聞社が訪れ、他国からの外交官も参加している。


「やっぱりエヴァンは来れなかったか」


 俺はギリギリまでこの場に来ると連絡を受けていた親友の名を呟いた。


「うむ。やはりルーベンス国内で魔獣の動きが活発化しているようだ」


 本当は一緒に参加してルーベンス王国も協同すると発表する予定だったが、ルーベンス国内で魔獣による大移動や活動活発化の兆しが見えたそうで。


 軍の将であるエヴァンがそちらを放置するわけにはいかない。


「オルダニアも不参加だ。まぁこちらは内戦が勃発してしまったからな」


 オルダニアは外交官や新聞社自体が参加していない。各地方で文化が別れるオルダニアでは内戦が勃発して、それどころじゃないといったところか。


「組織が絡んでいるかもって件はどうですか?」


「いや、こちらで調べたところ影は見えない。あちらの一部地域では奴隷制度があるだろう? その制度に関する事で争いが起きたようだ」


 オルダニア内には奴隷となっている人を開放しようという動きがあるようで、その活動を支援している地域と奴隷を主な労働力として当てにしている地域がぶつかり合っているようだ。


 中央区は動向を探りながら間に入れないかとタイミングを見計らっている。


 この件に関しては関わらない方が良いと王族一同、宰相のリーベルさんに釘を刺された。


 下手に関わると解放戦線に参加させられて英雄の活動どころじゃなくなるし、他国の政治に巻き込まれる事になるからと。


 奴隷になっている人に関しては確かに思いはあるが、さすがに英雄としての使命をそっちのけで他国の政治に関わるのは……。


 というわけで、エリオス王国や各国も静観。英雄や教会も静観という事になる。


「英雄様。お久しぶりでございますな」


 別室で王様と待っていると協力商会として参加するエドワーズ商会の会頭、ロクサヌ伯爵が到着。俺と王様に挨拶をしていると、次は教会からの人員が。


「英雄様。初めまして。私はカタリナと申します。教会本部で司教として働いております」


「これはどうも、初めまして」


 教会の担当者は初めて会う女性だった。アリアちゃんと同い年くらいだろうか?


「私の娘でございます。学園には通っていませんが、アリア姫様とも同い年なので私とよりも打ち合わせがしやすいのではと思いまして」


 そう言ったのは大司教、俺が召喚された時にケツを拭く紙をくれたパリピ爺ちゃん。


 そうか。娘さんなんだ。


 アリアちゃんが正統派清純ロリ巨乳お姫様なら、カタリナさんはおっとり系お姉さんシスターだ。背が高いせいか、アリアちゃんの方が妹に思えてしまう。


「英雄様のお話は聞いております。教会だけではできなかった事です。どうか、お力をお貸し下さい」


「いえ、俺の方が力を借りる側なので……。どうぞ、よろしくお願いします」


 お互いにペコペコ頭を下げ合う。社畜時代を思い出してしまった。


「すいません、お待たせしました」


「ごめんなさい、お待たせしました」


 揃って入って来たのはアリアちゃんとユキ君。


 アリアちゃんは公務で使う白いドレス姿で。ユキ君は白衣着用で手には箱を持っていた。


「こちらが魔導具です」


 ユキ君が箱の蓋を開けて皆に見せた魔導具は手袋やブーツ、胸当てや眼帯など様々だ。


 これらはキースが使う手袋型の魔導具をさらに改良した物。彼が2週間でやってくれました。マジ有能すぎ。


「物があれば説得力が増しますな。こちらも会計や資金に関しての資料は全て揃えました」


「我々、教会も既に各地を回って情報収集しております。現段階で得られた情報はこちらにまとめております」


 ロクサヌ伯爵と大司教さんが作った資料をテーブルに乗せる。


「すまぬ。待たせたな」


 最後に入室して来たのはエリスさん。今回使う資料、外部に出して新聞にも掲載可能な資料を持ってやって来た。


「既に会場入りしている者達には資料を渡しておる。彼らが目を通す時間として2時間設けた」


 今回、結構ギリギリだった。事前に資料を渡せればよかったが、エリスさんによる口頭説明が必要な部分も多い。


 だったら当日渡して読む時間を設けようと、資料まとめの時間を稼いだという経緯があった。


「開始までの2時間。最後の打ち合わせといこうか」


 王様が全員を座らせて、最後の打ち合わせ。どの順番で説明するのか、もう一度通しで説明を行って流れの最終確認をした。


「最後に英雄様から今回の計画について全体を語って頂けたらと思います」


 俺は最後にどう計画を進めてどうしたいか、将来的にはどうしたいか。展望や想いを語る役目だ。


「ユウキ様が想っている事を正直に言ってくれて構いませんからね」


「うん。ありがとう」


 緊張する俺の顔を見て、アリアちゃんがぎゅっと手を握ってくれた。


 あったけえ。


「皆様。お時間でございます」

 

 入室してきたヨハンさんに準備完了と告げられて、遂に始まる。


 俺と仲間達の異世界記者会見が!


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