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はじめましてを何度でも  作者: ぽんた7
第七章 地球外文明
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サーシャ


 私は小さな音。解決しない音。〈静かな波〉に拾われて、地球の時間で約250,000時間が経過した。惑星地球の恒星周回に換算すると、約30回転弱。


 拾われた当時の事はもちろん覚えていない。自我が確立する頃までに、〈静かな波〉は私のために一本の大きな木を育ててくれた。宇宙に浮遊する巨大な球形の木。無数にある葉っぱは星間物質や放射線を私の生存に必要な空気や食料に変換する。木の幹には気密の空洞が至るところに繋がっていて自由に移動できた。


 拾われた時に私が収納されていた筒には、若干ながら人類の情報も入っていた。射出元の航宙艦の情報は濃い時間に絡め取られて取得できなかったが、人類の母星・地球の位置は簡単に突き止める事ができた。そこから送信されている情報から、人類の言語や科学知識も取得できた。


 〈静かな波〉は、私に人類の母星に帰る事もできると提示してきた。しかし、私にはその欲求は無かった。宇宙を漂う木には沢山の知識があった。それを学ぶのはとても好ましかった。人類の情報も入って来ていたが、まだまだ未開の種族であり、今更帰る必要は感じられない。


 私が拾われる以前から、〈静かな波〉と人類のコンタクトは始まっていた。拾われる直前、人類は〈静かな波〉と星の音で会話する方法を発見したが、それは大変拙いもの。私がある程度〈静かな波〉の技術を習得した後は、私が人間との通訳として介在する事になった。


 私は人類との会合のために、木から枝を分離して飛び立った。初めて降り立った人類の地は宙に浮かぶ構造物だった。

 しかしそこで出会ったものは、私と〈静かな波〉の予想を超えていた。

 私の到着と同時に、構造物の中に突然現れたタンパク質で構成された小さな和音。

 本来あり得ない存在。遠い、時間が濃すぎて近寄れない星系に和音が一つあるのは確認されていたが、まさかもう一体が人類と共にいるとは。


 そして。その小さな和音と共にあるもう一つの音。その周囲には、私が知りたい解決しない音の破片がまとわりついている。この音を知りたい。この人を知りたい。私は目覚めてから初めて、人としての欲求がある事を知った。この人たちについて行きたい。


 その欲求をかなえるためには足りないものがある。そう、私の肉体強度。実際の人類を観察して、私の体が如何に能力不足であるか思い知った。すぐに疲れる。弱い衝撃で簡単に破損する。初めて体験した0.2G環境でもそんな体たらく。地球の1.0G環境では転倒しただけで即死するに違いない。


 この件について〈静かな波〉と検討した。小さな和音が用いた技術で身体の損傷が修復できたが、これは修復以外にも応用できるのではないか、との結論に至った。


 私は自分の思考に、楽しみ、という感情もある事に気づく。心拍数が上がるのを感じる。生成されて30年。ここまで種々の知らない経験があるとは、木の中にいた時には予想もしていなかった。そのために、もっと人類について学ぶ事を決意する。


 そう。私は解決しない音をまとう人間と、小さな和音についてもっと学びたい。そして叶うなら。いつかきっと。



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