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〈静かな波〉
手元に保護していた解決しない小さな音が消えかけた。
予測はされていた。確率曲線が規定値を超えた所で撤収する未来もあった。
しかし今回、解決しない小さな音は撤収に反対した。小さな和音が目指すものは小さな音の解決である蓋然性が高く、それは小さな音が目指すものでもある、と主張している。
わたし・わたしたちも、その意見には同意している。更に、小さな和音に寄り添っている別の小さな音により、こちらの解決しない音の内部に変位が発生していた。他の解決しない音も少しずつ収束しつつある事が観測されている。
わたし・わたしたちにとって、手元の小さな音は唯一無二の大切な音だ。消えてしまう事を避けるべきとするわたしと、小さな音の意思を尊重しようとするわたしが刹那の間せめぎ合う。
そして気づく。どちらの意見も、解決しない小さな音を大切にするという意味で同値だ、と。人類の言葉ではこれを「愛着」などと表すらしい。わたし・わたしたちにも感情というものが存在していた、というのは新鮮な発見だ。
結局リスクはあるが、わたし・わたしたちは小さな和音に協力する事を決めた。今後も積極的な関与はしないが、情報の提供程度は主義を曲げても良いだろう、と結論した。
もしかしたら、わたし・わたしたちも変化する頃合いなのかもしれなかった。




