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はじめましてを何度でも  作者: ぽんた7
第六章 大飢饉
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43/73

階段


 意識が戻ると、健二は塔の階段の踊り場に立っていた。チビも横にいる。空間は色彩を失い、静かな灰色に包まれていた。


 中空にリザルト画面が現れる。


「ちゃちゃちゃ、ちゃーちゃー……まあ今回はいいか」


 チビが、いつものファンファーレを口にしようとして止める。健二は黙っている。チビも茶化さない。いつもの百合子ウィンドウが表示される。


「リザルトにゃ。復元率50%→75%、プラス25」


 ボーナス内訳が別ウィンドウにリスト表示される。


・新たな癖発見(能動誘発):+6

・音モチーフの双方向到達(百合子の歌→主人公の合奏→百合子の認知):+10

・医療用ナノマシンによる命の救出:+8

・ヒロインからの明確な好意表明を引き出した:+8

・言葉を超えた別れ:+5

・村全体の救済(飢饉対策・代官失脚):+3


 いつものようなチビのナレーションがない。


 その下に減点も並んでいる。


・主人公が先に消える:-10

・時代的整合性への抵触(ナノマシン使用):-2

・整備プローブの時代外使用:-3


 減点項目「人格表出不完全」が消滅していた。


「復元率3/4到達にゃ。よくやったにゃ、健二」


 チビの口調から毒舌が少しだけ抜ける。


 健二は床に座り込む。


「お絹さん、泣いてたな」


「そーだね」


「言葉、何も残せなかった」


「そだね、でも言葉じゃないもん残したでしょ」とチビ。「手を伸ばして止めたけど、彼女には届いたにゃ」


 健二はインベントリから簪を取り出す。お絹の形見。銀の地に桜と雪輪の彫り。


「これ、持ってていいのか?」


「次の階層への持ち越し報酬って事にするにゃ。お前さんが受け取らんと、お絹さんの想いが宙に浮くにゃ。どうせ他にこの時代から持ち出す物なんてないにゃ?」


 健二は簪を目の前にかざし、まじまじと見る。銀色の素地が渋く光る。細かい彫り模様。芸術品に造詣の無い健二にも、手間のかかった逸品だと判る。


「立山屋宗次郎、か。父の代からの三春の縁、ってのは塔の用意したものなのか、本当に立山屋という家があったのか」


「よくできた家訓だったろ? 塔の用意だとしても、お前さんが背負って動いたのは本物にゃ」


 これ以上聞いても無駄な事も判っている。一つため息をつくと健二は立ち上がった。


「行くか」


「行くにゃ」


 階段の最上段に向かって、健二は歩き出す。背後には、薄れていく白河の村の景色があった。灰の雲、喜びに沸く村人、走り回る子供たち、なじみの旅籠、お絹が頭を下げる姿。しかし健二は振り返らない。


 銀の簪を懐に、健二は階段を上る。






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