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はじめましてを何度でも  作者: ぽんた7
第三章 疫病都市
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階段


除染を済ませた健二がゲートを出ると、そこは灰色の部屋だった。真ん中にチビが座っている。


「あれ? お前いつのまに首輪なんて付けたんだ?」


「澪にもらった。格好良いだろ?」


 なんでまた。


「歌が入ってる」


「?」


「このキンキラがメモリーチップなんだと」


「ああ、そういう」


 チビの前にウィンドウが開く。描かれる五線譜。澪の声で再生が始まる。


「ああ、百合子の鼻歌だ」


 譜面、なんだか段数多いんだが。にーしーろーやー、え、32小節も?


「こんなに長かったんだ、百合子の歌」


「これでもまだ途中らしいぞ」


「大曲じゃんか」


 演奏が終わる。譜面が閉じてしばし沈黙、と思いきやチビが変な声を出す。


「どぅるるるるるるるるる~」


「またそれ?」


「じゃん! リザルトがめん~」


 宙に半透明のウィンドウが現れた。前に見たリザルト画面だ。百合子のおかっぱ頭、塗りつぶしが少し増えている。


「百合子ちゃん復元率32パーセント~。どんどんパフパフ~」


「おお。相変わらず意味はわからんけど」


「ボーナス内訳は~、癖二つ発見+10、音モチーフ接触+5、患者全体への貢献+2!」


 百合子以外への干渉にも点入るんだ?


「なかなか良い感じだったにゃ。攻めた行動が百合子ちゃんに好印象にゃ」


「そうかなあ、引かれてたんじゃないかなあ、暴力的、って」


「そんな事無かったにゃ。大切なのはいかに認識させるか。お前がインタラクションしたって事実を欠片が認識して初めて復元が進むのにゃ。果報者め、リア充破砕しろ。爆縮してしまえ」


 わからん。


「ま、おいおいね。で持ち越しどうする?」


「一つはその首輪だよな。そんな長い旋律覚えられん」


「にゃるほど。お前音楽の成績悪かったもんな」うんうん首を縦に振る猫。


「ほっとけ」


「でもこれ、キュートな俺様が貰ったものだから数に入れなくていいにゃ。他に何かないかにゃ?」


 うーん。なるべく時代関係なく役に立つものが良いよなあ。


「太平洋戦争でも思ったんだけど、非常用の薬とか欲しいかも。あの防空壕みたいなとこでもし数日籠もる事になったら衛生面が不安」


「なるへそ。堅実なところだにゃ。じゃあ緊急用医療セットで。プログラマブルな抗菌剤付けとく」


「おお、そんなんあるのか」


 それっていわゆるナノマシンって奴じゃね? ほんとこいつ、相当な未来から来てるよなあ多分。


「あるのにゃ。で、もう一つの枠どする?」


「ドローンと戦闘したときのヘッドアップディスプレイって?」


「ああ、あれは塔と俺様の機能だから対象外。登っても使えるにゃ。出番があるかどうかは知らんけど」


「それじゃあ、パワーローダーは? リナ先輩チューン済みバージョンで」


 チビは、しばし考え込む。後ろ足で立って腕を組んでいる。器用な奴だ。


「まあいいか。電源無限オプション付きで許可しよう。お前運用考えてなかっただろ?」


「そっか、確かに。さんきゅ」


 無色の部屋の真ん中に、音もなく階段が現れた。チビと共にステップに足をかける。


「んじゃいこか~」


チビが先に消える。健二は黙って階段を登り始めた。手は空。だが首輪には旋律。耳の奥にも、まだ旋律。




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