表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はじめましてを何度でも  作者: ぽんた7
第三章 疫病都市
19/35

移送


 その後。新薬によって徳さんや他の新株感染者は命を取り留めた。まだまだ予断を許さないが危機は脱したらしい。


 しかし耐性株拡大により、第七施設の医療チームを別の重症者センターへ移送する事になった。澪含む医師全員が対象。患者も順次移送。


---


 移送前日。いつもの裏口。チビを膝に乗せて撫でる澪の姿があった。膝の上で香箱を作って座り込み、喉を鳴らすチビ。


「岡田さんには感謝しきれない。会う事があったら宜しくね」


 胞子の雪が無音で降る。

 いつもは澪にしか聞こえない胞子からの旋律。この時はチビにも聞こえていた。歌う澪。


「ふんふん、ふふーん。ふふふふーん」


「にゃんにゃん、にゃにゃーん、にゃにゃにゃにゃーん」


 繰り返す猫に目を見開く。


「あなた、メロディ聞こえるんだ? というか猫なのに歌えるの!?」


「にゃにゃにゃにゃーん」


「うそ…… あなた本当に猫?」


「にゃーん」


「そっか。なんだか不思議な猫だとは思ってたけど」


 澪は、ポケットから首輪を取り出した。


「そうそう。これ、プレゼント」


 澪の細い、でも医師の力強い指が首輪をチビに装着した。


「野良猫に間違われて捕獲されないようにと思って、用意しといたの」


 赤いレザーの首輪。鈴は付いてないが、金色のオーナメントがぶら下がっている。


「そこに集めた旋律データのメモリーチップが入ってる。もし岡田さんにまた会えたら、渡しておいてね」


 チビを膝から下ろして立ち上がる。


「お別れね。一緒に連れて行けないのは残念だけど。あなたと岡田さんには救われた。ありがとう」


 手を振って裏口から中へ入っていった。その場に残されるチビ。


「こちらこそ、百合子の欠片を守ってくれてありがとうにゃ」


 つぶやくチビの声は誰にも届いていなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ