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後日談.結婚式編 ミルアの過去

少し鬱な話がありますのでご注意を。

 私が生まれて来た中で、一番初めに思い出す記憶といえば、暗くジメジメとした中で過ごして来た記憶だ。


 魔族は、魔王グラディエルを筆頭に魔族以外の種族の存在を許せない過激派と、私たちの家系のように多種族とも手を取り合って生きていこうとする穏健派、どちらにも属さない中立派に分かれていた。


 分かれていたと言っても、中立派が圧倒的に数が多い。その次に過激派で穏健派なんて本当に魔族全体の中の少ししか存在しなかった。


 それでも、穏健派が無くならずに耐えられたのは、私たちの家系が他の魔族に比べて高い能力を有していたからと私はお姉ちゃんから聞いた事がある。お姉ちゃんほどになれば、七魔将とも戦えるほど。


 でも、その中でも1番の力を持っていたのは、お姉ちゃんは私が持っていると言う。私はそうは思わなかったけど。


 私たち穏健派は、過激派から見つからないように人里離れた山奥や、本当なら住めないようなところで暮らしていた。そうしないと、過激派から命が狙われるから。その上、一つの場所に残らずに、数ヶ月おきに場所を移動したりもした。


 暗くてジメジメとした洞窟の中、毒沼の側、魔物の住処の近くなど、本来なら誰も行かないような場所で私たちは暮らして来た。


 だけどその生活も変わったのが、数年前に七魔将が復活し始めてからだった。七魔将が復活してからは、過激派の魔族たちが私たち穏健派を探し始め、狩り始めたのだ。


 それからは、今まで以上に酷い逃亡生活になった。食事が食べられない日は当たり前、過激派に見つかれば、男は殺されて、女は犯される。


 私に優しく微笑んでくれたおじさんや、女の子らしさを教えてくれたお姉さん、私を守ってやると言った男の子……みんなが過激派に殺された。


 その事実は私の心を壊すには十分だった。そして、その時に私たち家族も過激派に見つかってしまった。私たちを守るために、お父さんがかなりの数の過激派に向かって行って、目の前で惨殺されるのを見た。


 お母さんが、私たちを逃がすために囮になって捕まり、私たちを炙り出すために、公開処刑と称して、みんなの前で魔族の男たちに犯されて、それでも私たちが現れなかったら、ゴブリンやオークを入れた檻の中に入れて、魔物たちに犯させたりした。


 その時の涙を流しながらも歯を食いしばり、手を力強く握りしめたために血を流しながらも、我慢するお姉ちゃんの姿が忘れられなかった。


 でも、私の心はもう耐えられなかった。こんな思いをするぐらいなら死んだ方が良いんじゃないのか、と思うようになってきた。


 その時くらいからだろうか、心の中で声が聞こえるようになったのは。私を励ます声、私を助ける声、その声は私に何度も話しかけてくれた。私が暗い気持ちにならないように。


 それからは、その心の声、ミルカと時折体を入れ替わるようになった。ミルカは戦闘が得意のようで、何度も私を助けてくれた。何も出来ない私とは大違い。


 お姉ちゃんは過激派から逃げながらも、穏健派を次々と纏めて行って、ミルカはそのお姉ちゃんの助けをする。そんな風にして、何とか数を集めて、過激派も簡単には手を出せない風になった頃に、大戦があった。


 その大戦で七魔将は全て倒され、過激派の大部分も大戦から帰って来なかった隙を突いて、お姉ちゃんが魔族を纏めて行った。そして新しく魔国が誕生した。


 ◇◇◇


「……だけど、当然過激派全員がいなくなったわけじゃない。その中にはお姉ちゃんには勝てないから私を狙う人もいた。中立派も今はお姉ちゃんに従っているけど、もしかしたら手のひらを返すかもしれない」


 俺たちは黙ってミルカちゃん……いや、この雰囲気はミルアちゃんだな。彼女の話を聞いていたけど、何も声を発する事が出来なかった。


 それと、同時にミーティアさんが無理矢理にでもミルアちゃんを俺に連れさせようとしたのもわかった。多分国が落ち着くまで、遠ざけようとしたのだろう。


 当然、俺と縁を結ぶ事で、今の魔王の座を盤石なものにする、他国に侮られない様にするという目論見もあるのだろう。だけど、その中でも1番はミルアちゃんを守るという思いが伝わってくる。


「でも、私はお姉ちゃんを助けたいんです。私の身を守るための話はわかっていますが、私をお姉ちゃんの元に帰してください」


 俺と初めてあった時の様にオドオドとした雰囲気は無く、力強い目で俺を見てくるミルアちゃん。仕方ないな。俺はミルアちゃんを見返す……事なくクロナの方を見る。


「クロナ、まずはクロナの弟子って形で雇おうか」


「そうですね、それが良いと思います」


 俺の言葉にクロナは頷く。フェリスとエアリスはミルカちゃんのときに手合わせをお願いしようとか言っているし。そして、話について来られず困惑な表情を浮かべるミルアちゃん。


「えっ? か、帰してくれないのですか!?」


「いやいや、今の話を聞いて帰せると思うか? 結婚云々は抜きにしても、命が狙われている子をそのまま帰すことなんて出来るわけがないだろ?」


「で、ですが、今もお姉ちゃんは1人で戦っているんです! わ、私は側に……」


 まだ、そんな事を言うミルアちゃんの下に俺は近寄りミルアちゃんの頭をポンポンとする。ミルアちゃんはビクッとするけど、恐る恐るといった風に上目遣いで俺を見てくる。


「安心しろ、俺たちがしっかりと助けてやるから。結婚とか関係無く俺たちとミーティアさん、ミルアちゃんはこれで縁が出来た。知り合いを見捨てるほど俺も落ちぶれてはいないさ。だから、安心しろ。ミルアちゃんもミーティアさんもしっかりと守るから、ライト」


「はい、レイ様」


「今から魔国に行ってミーティアさんの護衛をしてくれ。明日にはこちらにくるから取り敢えずそれまでな」


「わかりました」


 ライトは軽く微笑みながら礼をすると、光って消える。


「ちょっと、レイ、執事長を勝手に動かさないでよ。私が侍女たちに怒られるじゃない。彼、人気なんだから」


 そして、アレクシアに怒られた。そういえば、ライトは女性から人気だったな。まあ、1日だけだから許して欲しい。


「ミルアちゃんも取り敢えず今日はここで休むと良い。明日もう一度ミーティアさんと話をしよう」


「……はい」


 よし、取り敢えずは落ち着いたかな。彼女の事もあるが、まずは明日の面倒な奴らから終わらせるか。

本日は「黒髪の王」を投稿しました。良かったらご覧下さい。


続編の主人公の女性の年齢は16歳です。

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