後日談.結婚式編 ミルアとミルカ
俺から飛び退くように離れると、物凄く威嚇してくるミルアちゃん。先ほどまでのおどおどとした雰囲気は全く無く、俺を物凄く睨みつけてくる。
「くそっ、ここはどこだよ。姉貴め、変な奴に私たちを預けやがって! ミルアが泣いてるじゃんかよ。何がミルアのためだ。それでミルアを泣かせていたら意味ないじゃん!」
……まるで別人のような話し方だな。見た目はミルアちゃんだけど、中身は全くの別人のようだ。
「ええっと、君はミルアちゃんで良いのか?」
俺が尋ねると、キッ! と再び睨みつけてくるミルアちゃん。だけど、このままでは話が進まないとミルアちゃんも感じたのだろう。警戒しながらも話し始めてくれる。
「ミルアはさっきまでおどおどと泣いていた方さ。私の名前はミルカ。言い方を変えればもう1人のミルアさ」
この攻撃的な性格をしているのはミルカちゃんか。二重人格という事なのだろうか。しかし、なぜこのような事になっているんだ? 色々と疑問は浮かんでくるが、このまま対峙している訳にもいかない。
「ミルカちゃん、取り敢えず落ち着いて話が出来る場所へ行こう。ここで見合っていても仕方ないし」
そう言ってミルカちゃんの手を取ろうとちかづくと、物凄く暴れる。まるで猫が威嚇するかのようにフシャーと威嚇してくる。
うーん、困ったな。無理矢理押さえつけて連れて行く事も出来るけど、あまり手荒な真似はしたくはない。だけど、このままにしても話が進まないし。そう思っていたら
「何してるの……おにぃ?」
音がしたからか、ハクが部屋に入って来た。ちなみに今俺がいる部屋は、転移専用の部屋だ。ここの魔法陣は各国と繋がっており、決められた人しか使えない。俺は魔法陣無しでも行けるから関係ないが。
ハクは俺とミルカちゃんを交互に見て、少しの間の沈黙。そして、右手を左手の平にポンと叩き
「……誘拐?」
ちがーう! 誘拐じゃない! ……いや、ミルカちゃんからしたら誘拐と変わらないのか? ミーティアさんのお願いで連れて来たけど、本人は嫌がっていた訳だし。ミルカちゃんから見れば誘拐なのか?
俺が1人で考えていたら、ハクはゆっくりと扉を閉めて、どこかへ走ってしまった……まずい。これはまずいぞ。絶対誰か呼びに行ったのだろう。
ミルカちゃんを有無言わせずに魔国に帰すか? でも、そんな事をすればミーティアさんに魔国とは縁が結びたく無いと誤解されてしまう。
かと言って、このままこの場にいてもみんながやってくれば……ミルカちゃんがちゃんと説明してくれれば大丈夫なのだが、今俺を威嚇しているところを見ると、ちゃんと説明してくれないかもしれない。
そして、その時は来てしまった。部屋の外から聞こえる物凄い足音の数。そして勢い良く開かれる扉……勢い良く開き過ぎて壁にぶつかり割れてしまっているぞ、おい。
先頭は当然ながら目が全く笑っていない笑みを浮かべたアレクシア。その後ろには勢揃いだった。結婚式の話でもしていたのか、ナノールの王都からフィーリアも来ていた。エアリスに至ってはカゲロウを抜剣済みだ。
さすがのミルカちゃんもこれを見て目を丸くする。そんなミルカちゃんをアレクシアたちはチラリと見るだけで、気が付けば婚約者たちに囲まれていた。
「さあ、レイ。何か申し開きはあるかしら?」
「……アレクシア、落ち着いて話を聞いてくれ。多分ハクから話を聞いたのだと思うけど、そこには勘違いというものがあってな」
「ふぅ〜ん? 私たちがハクちゃんから聞いた話は、レイが女の子を連れ込んだって事なのだけど、どこが勘違いなのかしら?」
エアリス、カゲロウを肩でトントンとしながら睨まないで。物凄く怖いから。雰囲気が極道の女みたいになっているぞ?
でも、その言い方なら全く間違っていない。確かに女の子を連れ込んでいるのは連れ込んでいる。ちょっ、フィーリア!? 魔法発動しようとしないで! この部屋吹き飛ぶから!
「はぁ……はぁ……んっ! 婚約者の皆さんだと思わなかったのですが、見ず知らずの女の子と逢引している姿を見ると、嫉妬と興奮で……これがNTRなのでしょうか?」
んな訳あるかぁっ!! な話がややこしくなるからお前は黙ってろ!
その間にもジリジリと寄ってくる婚約者たち。
「み、みんな、落ち着いて話をしよう、な? ほ、ほらアレクシア、怒っている顔も綺麗だけど、笑っている方が俺は好きだな」
「ふふ、これでいいかしら?」
いやいやいや、怖いから! 口元だけ笑っているのは怖いから! そして、振り上げられる右手。
「まっ、待て! 待つんだアレクシア!」
「問答無用よ!」
◇◇◇
あ〜、冷たい床が気持ち良い。両頬が物凄く熱いから、冷えた床のおかげで冷やされていく。少し視線をずらすと、さっきの俺みたいに囲まれているミルカちゃんの姿が。
ただ、物凄く怒った婚約者たちに囲まれているせいか、先ほどまでの勢いは無い。ここからでは聞こえないが、どういう経緯で来たのかを聞いているのだろう。
「ごめん……おにぃ」
そこにハクが謝りに来た。俺が叩かれた事を言っているのかな?
「気にするなハク。早く説明しなかった俺が悪いのだから」
俺は寝転んでいた床から体を起こして、しゃがんでいたハクの頭を撫でる。ハクは気持ち良さそうに目を細める。その間に話し合いは終わったのアレクシアたちがやって来た。
「レイ、いくら魔王の頼みでも無理矢理連れて来たら駄目じゃ無い」
「そうですよ、レイさん。ミルアちゃん塞ぎ込んで出てこないそうですよ」
フェリス、プリシアの順に怒られる。うっ、それは悪い事をしたな。
「でも、仕方ないと思うわ。彼女の話を聞けば、魔王がレイに預けたのも頷けるし」
そこにキャロがそんな事を言って来た。今すぐに聞きたかったけど、流石にこの場所で話を続けるのもあれなので、会議室に向かう事にした。あそこなら防音、盗聴防止もしっかりとしてあるから、外に話が漏れる事は無い。
「それじゃあ、今はミルカちゃんで良いのかしら? 魔王ミーティアがあなたをレイに預けた理由をもう一度話して頂戴」
先ほどまで囲まれていた恐ろしさからか、すっかり大人しくなってしまったミルカちゃん。それからミルカちゃんはポツリポツリと話し始めた。
本日は「復讐の魔王」を投稿しました。よかったらご覧下さい。
それから、「転生少年」の続編も書き始めました。後日談を書きながら投稿するか、終わってから投稿するかは迷っていますが、引き続きお楽しみにしていただければと思います。
ちなみに主人公は女性です。既に「転生少年」でも出ています。




