1-2 背中の勲章
軍令違反。その罪は重い。重いはずだ。
新兵テオは混乱していた。
ならなんで、ギュイ隊長はお咎めなしなんだ…?
ギュイ分隊は動かない。
配属されて二週間、身をもってわかったことだ。
「退け」。退かない。
「行け」。行かない。
しかもその理由がよくわからない。
炊事をしてるから、という時もあればしてないときもある。
とにかくギュイ分隊は、まるで遊撃部隊のように勝手が許されていた。
ギュイ隊長の実家が太いとか?
これはない。と、テオは思った。
ギュイ隊長は農民くさかった。
爪の先まで土がにおいたつような、腰を曲げて大地と対話する男の香りがした。
あと装備がショボかった。
軍の上層部と恋仲とか?
これもない。と、テオは思った。
ギュイ隊長は美丈夫ではない。
むしろ、その風貌は恐ろしく、岩山のような体躯をして、口がくさかった。
そういうのが好きな人間もいるかもしれないが。可能性は低そうだった。
実はかなりの実力者で、いざとなれば凄まじい強さを見せるとか?
テオはこれがいちばんありそうに思えた。
軍隊に所属しながら、戦の勝敗に動じずにいられるギュイ隊長の姿は、とても小物にはみえなかった。
テオは、ギュイ隊長が軍服を脱いだ姿を見たことがあった。
その盛り上がった上半身には何百もの鞭の痕があった。
過去の戦いの傷痕か、敵に捕まって拷問をされた痕なのだろうとテオは思った。
痛々しいというよりはかっこいい、男の勲章に見えた。
そのすべてが軍令違反で食らった鞭の数だとは、この時のテオは夢にも思わなかった。




