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1-1 不動の分隊長





 第一話 ギュイ分隊、動かず



 (遥かに聴く 砲声の長空を震わすを)

 遠くで鳴り響く大砲の音が、広い空を震わせているのが聞こえる。


 (隊長は端居(たんきょ)して 豆の煮らるるを香ぐ)

 だが隊長はどっしりと腰を据え、ただ豆の煮える香りを確かめている。


 (眼に敵を見ずんば 心乱れず)

 「この目で敵を捉えぬ限り、心をかき乱す必要などない。


 (一炊の出来 是れ戦場なり)

 今、目の前の鍋の出来こそが、死守すべき戦場なのだ」





 砦の方角から、砲撃音が聞こえる。

 「隊長、本当に行かなくていいんですか!」

 部下が詰め寄っても、その男は煤けた手で鍋の蓋を少しずらし、蒸気の匂いを確認してこう言う。


 「落ち着け。俺が見ていないものは、起きていないのと同じだ。……それより、皿を出せ。ちょうどいい具合だ」


 男がようやく重い腰を上げ、「……よし、行くか」と言うとき、だいたい勝敗は決している。

 ギュイ・アンガス率いるギュイ分隊は、一時が万事そんな調子だった。





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