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5-1 昏き残り火




 第五話 帰郷


 (馬を殺めて(あつもの)を煮 敵我(てきが)に分かつ)

 馬を殺して熱いスープを煮出し、敵も味方もなく皆に分け与えた。


 (孤将(こしょう)のみ連行して 兵士を放つ)

 敵の将軍一人だけを連れ去り、あとの兵たちはすべてその場に解き放った。


 (郷に還りて 黙して五月の田を耕やす)

 戦を終えた彼は故郷へ帰り、今は黙って五月の田を耕している。


 (誰か知らん 至味こそ是れ真の槍やりなるを)

 敵の胃袋に刻み込んだ「至味」の狂気こそが、武力よりも深く相手を畏れさせた。





 フィデリオ・ルフィーニは、身代金と引き換えに郷里へ引き取られた。


 ギュイ・アンガスを囮として使い、敵の小隊長を捕らえた本事案は、ジャック・カラスコ小隊長の肝入りの作戦であり、軍法会議はこれまでのギュイ分隊の軍令違反を、作戦の一部であったとして特例で不問とした。


 本作戦で負傷したギュイ・アンガスは、治療のために郷里へ返された。





 ……精算完了だ。

 手数料は高くついたが、差し引き大幅な黒字。

 ギュイ、お前という爆弾は、この賭場(戦場)には少しばかり、火力が高すぎた。

 あとは田舎でその情熱を、田んぼにでもぶつけてろ。


 ジャックは整えられたばかりの爪で、ギュイの除隊届けに署名した。


 「ジャック・オア・ベター。

 俺の手札には、お前はもう重すぎる。

 ……あばよ、ジョーカー」





 数年後。「土喰らいのフィデリオ」と名乗る狂将が戦場の恐怖を独占していた。


 彼はギュイ・アンガスを求めて戦場を駆け巡り、捕らえた敵兵に土を食わせて「うまいか?」と聞いた。


 かつての慈悲深く理知的な青年は、もういなかった。

 彼がどうしてそうなってしまったのか、語りたがる者は少なかった。

 しかし、少しずつ少しずつ、あの日何があったのかは広まっていった。





 噂を聞きつけ、再び彼を戦場へ引き戻そうとする使者が、緑の生え揃った五月の畑に降り立つ。


 「ギュイ・アンガス。貴公のような武勇を持つ者を畑で遊ばせておくわけにはいかない」


 その農民は、腰を伸ばして使者を見つめ、雲の影がひとつ畑を通りすぎてから、やっと口を開いた。


 「……腹が減っているな? ならば座れ。この土が育てたものを食わせてやる」







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