4-3 馬肉の羮
視界が開けた先で、ジャックは馬の歩みを止めた。
そこには、彼の「手に余る」光景が広がっていた。
木の枝には、馬の首と、首をなくした馬の体が、縄に吊るされ揺れている。
地面には、重なった死体と、飴細工のようにひしゃげた兜や鎧。
血だまりを避けるように、武具や装備がまとめてある場所があり、縄に縛られた人間たちが二十名ばかり座っていて、全員見覚えがなかった。
その中心で、ギュイ・アンガスが背中に矢を立てながら、竈を守っていた。
傍らには、吊るされた馬から切り出したのだろう、赤い肉塊が、葉の上に置かれている。
ギュイは、巨大な平鍋を火にかけ、その肉を切り崩しては放り込んでいた。
鍋の中では、血と脂がグツグツと泡を立て、狂気じみた芳香を放っている。
「……なにやってんの」
ジャックの呟きに、ギュイがゆっくりと顔を上げた。その顔は返り血で真っ赤に染まり、瞳には底知れない虚無が宿っていた。
ギュイは黙って、手にした小刀を肉の隣に置いた。
「ジャックか。……ちょうどいい。馬肉の羹を作ろうとしてるのだが、人手が足りないんだ。手伝ってくれ」
見た目の壮絶さに比べて、ギュイの声は、いつもと何も変わりがなかった。
だがジャックは見た。ギュイの対面には、後ろ手に縛られ、口の回りに「泥」を塗られて、ガタガタと震える若き将の姿があった。
ジャックは、冷や汗が背中を伝うのを感じた。
「他の隊員はどうした」
「水や生姜を探してもらってる。あとキノコと野蒜と」
「これあとどのくらいかかる」
「……一日は動けん」
ジャックは天を仰いだ。




