4-2 異形の供物
テオは、土を食わされる敵将の喉がごくりと鳴るのを聞いた。
それは拒絶の音ではなく、恭順の音だった。
恐怖が極限を越えたとき、人は怪物の論理に染まるのではないか。そんな仮説を立てながら、その儀式を見ていた。
なぜ儀式だと思ったのか? それはギュイ隊長が手に盛った土が、どこか供物のようだったから。人知を越えた「異形の神」や「古き獣」への捧げ物。そう見えてしまった自分自身を、そして目を背けられなかった自分自身を、どう捉えていいものかわからなかった。
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「おや? また上がった……」
ジャック・カラスコは、馬上で、首をかしげた。
一度は消されたはずの煙が、今度は以前よりも太く、力強く立ち上っている。それは森に不穏をもたらすような、どす黒い灰色の柱だった。
「燃料を変えたか。あるいは、何か別のものを燃やしているか」
ジャックは小隊を引き連れて、ギュイ分隊の捜索に向かっていた。炊煙が途切れて半刻あまり。そろそろ目標地点につくはずだった。
ギュイがいた辺りから立ち上る新しい煙に、少しの胸騒ぎがする。彼の知るギュイ・アンガスは、自分が納得できない場合は軍規も雨も無視するが、これほど荒々しい火を焚く男ではない。彼はおき火を愛する、ゆえに、煮炊きに時間がかかるのだ。
「……敵さんに誘われてるかも知れねえな」
ジャックがその場所に辿り着いたとき、鼻を突いたのは、五月雨が森を打つ匂いでも、野蒜が煎じられる香りでもなかった。
戦場ではありふれた、鉄錆のような鮮血の臭気と、獣皮のような古い血の臭気。
そして、それ以上に強烈な、「肉が焼ける脂の匂い」だった。




