表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

4-1 うまいか?




 敵兵は「若君」の助命を願い、ギュイ分隊の縄をほどき、自ら縄にかかった。

 若君と呼ばれ、フィデリオ・ルフィーニと名乗った青年は、縄にかけられて地面に座ったまま、心ここにあらずといった様子だった。夢を見ているような物言いで、ギュイ隊長に問いかけた。


 「罠だったのでしょうか?」





 第四話 泥餐の将


 (沈黙して言わず 計謀に非ざると)

 「罠だったのか」との問いにギュイは答えない。答えるまでもなく、この惨劇が計略であるはずはなかった。


 (残汁(ざんじゅう)(すく)いて味わい 涙 (ふた)つながら流る)

 彼はただ、鍋に残ったスープを指で掬って舐め、失われた「至福」を思って涙を流した。


 (敵将を捕え来りて 汚土(おど)を食らわす)

 敵の将を引きずり出し、スープの混じった汚れた土を無理やり食らわせた。


 (五月雨(さみだれ)深く 恨み未だ休まず)

 降り続く五月の雨の音の中、ギュイ隊長の深い恨みはまだ癒えることはなかった。





 「うまいか?」

 ギュイ・アンガスの目は(くら)かった。

 うまいはずはない。土を詰められた口では答えられるはずもなかった。

 しかし、その声の優しさにぞっとして、フィデリオは気がつくと頷いていた。何度も、何度も、何度も。

 「そうか」

 ギュイは嬉しそうに、血で濡れた大きな手に、煮込みの混ざった土を盛ると、フィデリオの口に押し当てた。

 「なら、もっと食え」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ