↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ神様、戦争を終わらせるために伝説の殺し屋(OL)を召喚したら、状況が最悪になりました  作者: 凪塩 未来


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/14

第8話:東西同盟と、一人の女

ご覧いただきありがとうございます!

第8話は、長年の宿敵である東城組と西清会が「暗殺者OL」を排除するためにまさかの禁断同盟を結ぶエピソードです。


数百人の敵が待ち受ける大罠へ向かう由美さんと、彼女を「共犯者」として支えることを決意した神様。いよいよ物語はクライマックスの大決戦へと突入します!

血と硝煙に塗れた歴史の中で、誰一人として想像すらしていなかった奇跡――いや、悪夢が現実になろうとしていた。


東の暴力「東城組」と、西の暴力「西清会」。

数十年間にわたり、この街の覇権を巡って血で血を洗う死闘を繰り広げてきた不倶戴天の敵同士が、いま一つのテーブルに着いていた。


街の境界線上に位置する、打ち捨てられた教会。

無数の銃口が交錯する不穏な空気の中、東城組の組長・獅子倉(ししくら)と、西清会の会長・黒田(くろだ)が対峙していた。


「……互いに幹部を殺られ、兵の半分を失った。笑えねえ冗談だ」


獅子倉が深く刻まれた顔の皺を歪め、不機嫌そうにタバコの煙を吐き出す。

対する黒田も、眼鏡の奥の目を冷たく細めながら、机の上に広げられた何枚もの写真を指で叩いた。


「噂の『黒い死神』……いや、黒スーツの女だな。東の兵も西の兵も、見境なく狩り尽くしている。奴の狙いはこの街の暴力の根絶――つまり、我々双方の全滅だ」


「たった一人の女に、この俺たちがここまで追い詰められるとはな。……黒田、商談と行こうじゃねえか」


「同感だ、獅子倉。奴を生かしておけば、我々の明日はない」


二人の首領は言葉短く頷き合い、固い握手を交わした。

長年の憎悪を上回る、圧倒的な未知の恐怖。たった一人の女暗殺者の存在が、絶対にかみ合わないはずだった二つの巨大な暴力を強固に結束させてしまったのだ。


「全戦力を投じる。街の中央広場に大がかりな罠を仕掛け、奴を誘い出す。包囲網を敷き、数百の弾丸で蜂の巣にしてやるのだ」


「――というわけだね。いやはや、凄まじい展開になってきたよ……!」


私はスラムの路地裏で、手帳に路線図を書き込んでいる由美の肩のあたり(気配)で声を張り上げた。


「東城組と西清会が手を組んだんだ! あんなに憎み合っていた連中が、君という『共通の敵』を倒すために完全な一時停戦協定を結んだ。明日、中央広場で君を誘い出すための罠を仕掛けて待ち構える気だ!」


由美のペンの動きが止まった。

彼女は静かに顔を上げ、夜空を見上げる。その瞳には動揺の色など微塵もなく、むしろ不気味なほどの澄み切った静寂が宿っていた。


「東西同盟、ですか。思っていたよりも早く動いてくれましたね」


『え? 動いてくれましたねって……君、最初からこうなることが分かってたの!?』


「当然です」


由美は手帳をパタンと閉じ、胸ポケットにボールペンを戻した。


「孤立した二つの勢力を追い詰める最も効率的な方法は、双方に共通の脅威を認識させることです。個別に潜伏されるよりも、一箇所に全戦力を集めてもらった方が『掃除』の効率が劇的に向上します」


『ひえっ……! じゃあ、この同盟すらも君の計算通りだったってことかい!?』


「ええ。ですが、罠だと分かっていて飛び込む以上、相応の準備が必要です。敵の数は概算で二百から三〇〇。弾薬量、配置、退路の遮断……向こうも本気でしょう」


『当たり前だよ! 相手はこの街の暴力を牛耳ってきたプロのヤクザたちだ! 罠だと分かってるなら行くな! 逃げよう、桃西さん! いまならまだ別の方法を——』


「行きましょう、神様」


由美は私の言葉を優しく、しかし絶対に拒否させない力強い声で遮った。


「逃げれば、奴らは再び街の散開し、潜伏します。そうなれば再びだらだらとした泥沼の惨劇が繰り広げられるだけです。一網打尽にできる機会は、明日の一度きりしかありません」


『でも……! いくら君が凄腕の暗殺者だって、数百人の武装集団に正面から挑むなんて無謀すぎる! 君が死んじゃったら元も子もないんだよ!?』


由美はふっと柔らかく微笑んだ。

第7話で見せた、あのかすかで温かい、人間らしい笑みだった。


「ご安心ください、神様。私はプロです。無謀な賭けはしません。それに――」


彼女は愛用のグロックの弾倉をカチリと装填し、まっすぐに空を見据えた。


「私には、世界で一番頼りになる『共犯者』がついていますから」


『……共犯者?』


「ええ。奇跡は起こせなくても、私と共にこの街の終わりを見届けてくれる、ポンコツで優しい神様が」


その言葉に、私の(形のない)胸が熱くなった。

奇跡も起こせない。力もない。ずっとただ見ていることしかできなかった情けない僕を、彼女は対等なパートナーとして、共に戦う「共犯者」として認めてくれたのだ。


「……分かったよ、桃西さん」


私は覚悟を決めた。自分の消滅すら恐れず、集められるすべての神力を胸の奥に灯しながら、強く呟く。


「行こう。君がこの街のゴミをすべて掃除するなら、僕は君の目になり、耳になろう。最期まで君と一緒に戦うよ!」


「はい。よろしくお願いします、神様」


月明かりが照らす夜の街。

東と西という二つの巨大な暴力が待つ中央広場へ向けて、一人の暗殺者と一人の神様は、静かに踏み出した。


決戦の夜が、幕を開ける。

第8話をお読みいただきありがとうございました!


東と西の完全同盟すらも「一網打尽にするチャンス」と言い切る由美さんの頼もしさと、神様との固い絆。

次回、第9話「決戦、中央広場」では、数百の敵が交錯する中で最大規模の暗殺無双アクションが繰り広げられます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。