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ポンコツ神様、戦争を終わらせるために伝説の殺し屋(OL)を召喚したら、状況が最悪になりました  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第10話:違法チート薬物の脅威

ご覧いただきありがとうございます!


第10話からは、隣接する大都市「グランベル市」を舞台にした出張捜査編がスタートします!

街に蔓延する違法薬物「チートドラッグ」の密売組織を突き止めるため、由美さんと神様が敵のアジトへ潜入。


薬物で異能を操るチンピラたちに対し、由美さんが繰り出す冷徹でスマートな戦闘&制圧劇をぜひお楽しみください!

隣接する大商業都市『グランベル市』。

その裏寂れた工業地区の一角に位置する放棄された倉庫の屋根の上で、桃西由美は静かにスコープを覗き込んでいた。


手には、特殊な消音加工が施されたボルトアクション式の狙撃銃。

そのレンズの先には、グランベル市警の監査官エリスから提供された情報に基づき特定された、違法チートドラッグの末端密売グループのアジトが捉えられていた。


『ねぇ、桃西さん……』


由美の肩口で、神様が周囲の電磁波ノイズをかき消しながら小さく声を潜める。


『あの中、すごい魔力と神威の混ざった嫌な気配が充満しているよ。みんなあの虹色の薬を飲んで、おかしなことになってる……』


「ええ、確認しています」


由美はスコープを覗いたまま、淡々と状況を分析した。


「薬物の主成分は、神界から廃棄された神威粒子の濃縮液。それを人間の肉体に無理やり定着させることで、一時的に『発火(ファイア)』や『硬化(ハード)』といった下位のチート能力を誘発させている。……人体に対する負荷が大きすぎて、数日もすれば脳細胞が焼き切れて廃人になる欠陥品ですね」


劣悪な環境で違法なドラッグを精製し、市民を食い物にする悪質な密売組織。

桃園治安維持事務所の規約に照らし合わせても、放置すれば必ず我が管轄区へ悪影響を及ぼす「危険な害虫の巣」だった。


「これより、グランベル市警との合同突入作戦に先立ち、外部オブザーバー(桃園治安維持事務所)としての『先行排除業務』を開始します」


倉庫の内部。

薄暗いフロアの中央で、チンピラ風の男たちが派手に盛り上がっていた。


「ひゃはははっ! 見ろよこの炎! 俺は今や無敵の魔法使いだぜ!」


男が手のひらに不気味な赤い炎をボワッと纏わせ、周囲の仲間たちが喝采を送る。

その足元には、虹色に光る小瓶がゴロゴロと転がっていた。


「おい、次の出荷分の精製はどうなってやがる? グランベル市中のジャンキーどもがもっと寄越せって騒いでるぞ」


「へへ、ボス。裏の神官から仕入れた原料がまだ残ってら。これを使えばもっと――」


その時だった。


――ガァァンッ!!


倉庫の天井のガラス窓が激しく砕け散り、凄まじい閃光と爆音がフロア全体を包み込んだ。

由美が投げ込んだ特殊閃光音響弾(フラッシュ・スタングレネード)である。


「な、なんだぁっ!? 眩しっ、耳がっ……!」

「ぐあぁっ、目が潰れた……!」


突然の奇襲に、強化された肉体を持つチンピラたちが一斉に崩れ落ちる。

閃光の煙が晴れるより早く、天井から一筋の黒い影が舞い降りた。


着地と同時に、黒のパンツスーツに身を包んだ桃西由美が、容赦なく電磁スタンロッドを振るう。


バチバチバチッ!!


「がはっ……!?」


炎を纏って威張っていた男が、電流によって一瞬で白目を剥いて床に沈んだ。


「な、なんだお前は……!? 侵入者だ、やれぇっ!」


残ったチンピラの一人が、恐怖に顔を引きつらせながら懐からナイフを取り出し、薬物を一気に飲み干した。

直後、彼の全身が異様に膨れ上がり、皮膚が岩のように硬化する。


「うおおおおおっ! 俺の体を鋼鉄にする【絶対硬化】だ! 銃弾も通さねぇぞ!」


強化された膂力に任せ、男は周囲の鉄パイプをぐにゃりと曲げながら由美へと突進した。

常人であれば、その圧倒的な質量と怪異の前に恐怖で足がすくむところだ。


しかし、由美の足取りは微動だにせず、冷静そのものだった。


「【絶対硬化】ですか。確かに、皮膚表面のモース硬度は通常の鋼鉄を凌駕していますね」


突進してくる巨漢を目の前にして、由美はポケットから小型の超音波発振器を取り出し、スイッチを入れた。


「ですが、筋肉組織や骨格そのものがそれに耐えられる構造に進化しているわけではない。……いわゆる『張り子の虎』です」


ドンッ! と踏み込み、由美は巨漢の足首の関節――硬化しきっていないアキレス腱のピンポイントへ、特殊警棒を正確に叩き込んだ。


「が、ぐあぁっ……足がっ!?」


バランスを完全に崩し、巨漢が前のめりに倒れ込む。

由美はその背中に素早く乗り上げると、首元に麻酔性の特殊神経剤を噴霧した。


「組織の末端による違法薬物の所持、および公務執行妨害。……処理、完了です」


わずか一分足らず。

チートドラッグで強化されていたはずの密売グループの戦闘員たちは、誰一人として由美に有効打を与えることなく、全員が床に転がって沈黙していた。


外で待機していたグランベル市警のパトカーのサイレンが、遠くから近づいてくる。

倉庫の扉が押し開かれ、息を切らせたエリス監査官が部下を引き連れて飛び込んできた。


「も、桃西殿……!? 一体、何が……?」


エリスは、床に転がる意識を失ったチンピラたちと、微塵も乱れのないスーツ姿で書類にペンを走らせる由美の姿を見て、言葉を失った。


「想定よりも小規模な末端アジトでしたが、押収したチートドラッグのサンプルおよび製造マニュアルの回収に成功しました」


由美は手際よくチャック付きの証拠品バッグをエリスに手渡す。


「ご苦労様です、エリス監査官。これより、市警の皆さんで身柄の拘束と現場検証をお願いします」


「い、いや、待ってくれ……! この数人の武装組織を、たった一人で……しかも無傷で制圧したというのか……!?」


「我が事務所では、いかなる暴徒に対しても迅速かつ経済的な無力化手順をマニュアル化しております。特別なことではありません」


由美は淡々と答え、手帳を胸ポケットに収めた。


「ですが、エリス監査官。安心するのはまだ早いです。現場から押収したマニュアルを予備分析したところ、このドラッグの精製には、個人が扱えるレベルを超えた『高度な神聖触媒』が使用されていました」


由美の瞳が、僅かに鋭さを増す。


「つまり、この末端組織の背後には、チートドラッグの安定供給を行っている『大元の製造拠点』――組織の真の黒幕が存在します」


「なに……!? 黒幕がまだいるというのか……!」


「ええ。私たちの出張業務は、まだ始まったばかりのようです」


由美は優雅に一礼し、次なるターゲットを見据えるようにグランベル市の中心街へと視線を向けた。

第10話をお読みいただきありがとうございました!


グランベル市での初陣となった密売アジトの潜入・制圧。薬物による一時的なチート能力も、適切な無力化装備の前には無力という由美さんの手腕が光りましたね。


次回、**第11話「ドラッグの黒幕」**では、違法チートドラッグを裏で製造・流通させている真の黒幕(元・高位神の神官)へと迫ります! ぜひご期待ください!

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