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ポンコツ神様、戦争を終わらせるために伝説の殺し屋(OL)を召喚したら、状況が最悪になりました  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第7話:洗脳解除の処方箋

ご覧いただきありがとうございます!


第7話は、広場を占領する「魅了の勇者」ガルシアとの直接対決回です。

街全体を覆うチートスキル【絶対魅了(チャーム・オーラ)】に対し、由美さんが解き明かす「洗脳の科学的メカニズム」と驚愕の解除ロジックとは――!?


チート能力を理詰めで完膚なきまでに打ち砕く、スカッと爽快なバトルをお楽しみください!

秋晴れの爽やかな空の下、桃園の町中央広場は異様な熱気に包まれていた。


「さあ! 僕を讃えよ! 僕に命を捧げよ!」


豪華絢爛な甲冑を身に纏った自称・勇者ガルシアが、広場の中央で両手を広げて高らかに叫んでいた。

その周りを、数千人の町民たちが虚ろな目をしながら取り囲み、操り人形のように拍手と歓声を送っている。


「ガルシア様……素晴らしき我が主……」

「命を……命をお捧げします……」


「ハハハ! 素晴らしい! これぞ僕の【絶対魅了(チャーム・オーラ)】の力だ! どんなに意志が強い人間であろうと、僕の放つ神聖な波動を浴びれば一瞬で僕の虜(とりこ)となる!」


ガルシアは満足げに鼻を鳴らし、広場の端に佇む二つの影――屋根から舞い降りてきた桃西由美と、その肩口で不安そうに揺れる光の球(神様)をあざ笑うように見つめた。


「やあ、ようやくお出ましかな、桃園治安維持事務所の暗殺者さん? ……だが残念だったね。この町民全員が僕の肉の壁だ。僕に攻撃しようとすれば、彼らが自ら盾となって死ぬことになるぞ?」


『桃西さん……っ! 町のみんなが完全に操られてる……! どうすればいいの……!?』


神様が悲鳴のような声をあげる。

だが、由美は眉ひとつ動かさず、静かに眼鏡のブリッジを押し上げた。


「肉の壁、ですか。低俗な人質戦術ですね」


「ふん、強がりを! 僕の【絶対魅了】は高位神から授かった絶対の神権スキル! 一度発動すれば、精神魔法の解除呪文(ディスペル)すら受け付けない至高のチート能力なのだよ!」


「なるほど。精神魔法、ですか」


由美は足元に置いた大きなアタッシュケースをカチリと開けた。

中に入っているのは、魔法の杖でも聖水でもない。整然と並べられた無数のガラス瓶と、圧縮ガス噴霧器だった。


「ガルシア氏。あなたが『神聖な波動』と呼んでいるものの正体について、少し解説させていただいてもよろしいでしょうか」


「あ……? 何を言っている?」


「あなたがスキルを発動させた際、広場全体に無色無臭の微粒子――ドーパミン受容体を過剰刺激し、強迫的な依存と服従反応を引き起こすフェロモン様物質が撒き散らされています」


由美は冷静な口調で、手帳を開かずにスラスラと数式と化学式を口にした。


「いわゆる『チートスキル』と称するものの八割は、魔力や神力を触媒にして特定の脳内物質を強制分泌させる生理現象に過ぎません。『絶対魅了』などと大層な名前がついていますが、要するに『重度の薬物依存状態』を人工的に作り出しているだけです」


「な……なにを出鱈目(でたらめ)を! これは神の奇跡だぞ! 科学や化学で説明できるようなものでは――」


「説明できます」


由美は断言した。


「生理現象である以上、そこには必ず『中和剤(アンチドート)』が存在します」


「は……? 中和剤……?」


「事前にリン君の血液データを分析した際、血液中のドーパミン濃度と特定の神経伝達物質の異常値を確認しておりました。ですから、オフィスを出る前に特注の『中和ガス』を調合しておいたのです」


由美はアタッシュケースから高圧噴霧器を手に取ると、風上に向かってノズルを向けた。


「ドーパミン受容体拮抗薬(アンタゴニスト)および、強力な覚醒効果を持つメントール・芳香性アンモニア化合物の微粒子混合ガス。……命名するなら『現実突きつけガス』とでも言いましょうか」


「な、なに……!? 待て! 止めるんだ!」


ガルシアが焦って叫んだ時には、すでに遅かった。


シュアァァァァァァッ!


高圧噴霧器から、真っ白な霧状のガスが風に乗って広場全体へと爆発的に拡散していった。


「う……うぐっ!?」

「ゲホッ! ゲホッ! な、なんだコレ……目が覚めるような刺激臭は……!?」


ガスを吸い込んだ町民たちが、次々と咳き込み始めた。

すると、どうだろう。彼らの虚ろだった瞳に急速に光が戻り、顔から不自然な恍惚感が消え去っていく。


「あ、あれ……? 俺、なんでこんなところで包丁なんて持って……?」

「私……パン屋の仕事を放り投げて、何をしていたの……?」

「うわっ! なんだこの金ピカの男! キモッ!」


わずか三十秒。

数千人の町民たちを縛り付けていた『絶対魅了』のチート能力が、ただの化学反応によって完全に霧散したのだった。


「ば……バカなああああっ!?」


ガルシアは目を剥き出しにして頭を抱えた。


「僕の……僕の絶対魅了が……!? 魔法でもないただの煙で解除されただと!? 嘘だ! こんなことあり得ない!」


『す、すごい……! 町のみんなが正気に戻った……!』


神様が歓喜の声をあげる。

正気に戻った町民たちは、自分たちが謎の男に操られていたことを悟り、ぞろぞろと広場から避難し始めていた。


取り残されたのは、豪華な甲冑を着たガルシアただ一人。


「……さて」


由美は静かな足取りで、ガルシアの元へと歩み寄った。

その手には、いつもの愛用拳銃――グロック19が握られている。


「ひっ……! 来るな! 寄るな悪魔め!」


ガルシアは慌てて背中の聖剣を引き抜いた。


「くそっ! 魅了が効かなくとも、僕には高位神から与えられた【物理攻撃無効】のスキルがある! 銃弾ごときで僕の甲冑は破れん!」


「【物理攻撃無効】、ですか」


由美はピタリと足を止めた。


「衝撃波や動体エネルギーを拡散・吸収する空間歪曲型のバリアですね。確かに、通常の銃弾では傷一つつけられないでしょう」


「ハハハ! 覚悟しろ! 聖剣の錆にしてやる――」


「ですが」


由美は冷たい声で言葉を遮った。


「そのバリアは『外部からの物理的衝突』に対して発動するもの。……『密着状態での音響および内部振動』まで防げる仕組みにはなっていませんね?」


「……え?」


ガルシアが呆然とした瞬間――。


由美の身体が消えた。


――バシュッ!


近接格闘術(CQC)の神速の踏み込み。

ガルシアが聖剣を振り下ろすより早く、由美は彼の懐へ潜り込むと、グロックの銃口をガルシアの喉元(甲冑の隙間)に直接押し当てた。


「なっ――」


「零距離射撃(コンタクト・ショット)。衝撃波はバリアを突き抜け、あなたの体内に直接骨伝導として伝わります」


由美の冷徹な瞳が、ガルシアの至近距離で光る。


「業務妨害罪、ならびに公然猥褻・洗脳罪。……判決は『即時処刑』です」


ズドンッ!!


消音器(サイレンサー)越しのくぐもった重低音が響く。

直後、ガルシアの目と耳から白煙が吹き出し、彼は膝から崩れ落ちて地面に倒れ伏した。

バリアは突破されずとも、体内に直接響き渡った超高圧の衝撃波により、彼の脳震盪と三半規管は完全に破壊されたのだ。


「あ……が……」


泡を吹いてピクピクと痙攣する自称・勇者を見下ろし、由美はパンッ、と銃口の煙を軽く払った。


「神様、警察への通報と、邪教徒の身柄引き渡し手配をお願いします」


『は、はいっ! すぐやります!』


秋風が吹き抜ける広場で、由美は乱れた髪をサッと整え、静かに溜息をついた。


「まったく……今週の残業代は、邪教団の口座からきっちり引き落とさせていただくとしましょう」

第7話をお読みいただきありがとうございました!


脳内物質の過剰分泌という科学的アプローチから魅了を解除し、自称・勇者を一撃で沈めた由美さん。どれほど強大な魔法やチートスキルであっても、現実の物理・生理現象である以上、ロジックで攻略できるという彼女の真骨頂でした!


次回、第8話「決算報告と平穏な日常」では、今回の事件で被った損害を邪教団の隠し金庫から徹底的に回収する「取り立て編」をお届けします! ぜひお楽しみに!

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