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ポンコツ神様、戦争を終わらせるために伝説の殺し屋(OL)を召喚したら、状況が最悪になりました  作者: 凪塩 未来


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シーズン2第2話:チート殺し(物理)

ご覧いただきありがとうございます!

第2話は、どんな重傷も一瞬で治すチート能力「超回復」の刺客に対し、由美さんが徹底的なロジックと暗殺術で挑むエピソードです。


理不尽な異世界チートvs現代の冷徹なプロの暗殺技術。「チート殺し(物理)」のカタルシスをお楽しみください!

パンッ!


乾いた銃声が広場に響き渡り、ライルの右眼球が綺麗に吹き飛んだ。

だが、次の瞬間にはドクドクと血肉が渦巻き、数秒も経たぬうちに彼の眼球は元の完全な状態へと再生していた。


「ヒヒッ! 効かねぇって言ったろぉ! お前のその小さなオモチャじゃ、俺様の不死身の肉体は傷つけられねぇんだよ!」


ライルは血塗れの顔を歪めながら哄笑し、血に染まった爪を再び由美の心臓めがけて突き立てた。

常人であれば反射的に身を引くか、驚愕のあまり硬直するところだ。


しかし、由美は一歩も引かなかった。

彼女は最小限の身のこなしで爪の軌道を紙一重でかわし、すれ違いざまにライルの脇腹へ、仕込みの特殊ナイフを深く突き立てる。


——ザシュッ!


「グアッ……!?」


「再生速度の限界値および、細胞分裂のエネルギー消費量についてのデータ収集完了です」


由美は冷徹に呟きながら、突き立てたナイフをグリリと捻り、そのままライルの肝臓を正確に抉り取った。

鮮血が噴き出すが、ライルの身体は即座に肉芽を発生させ、傷口を無理やり塞ごうとする。


「き、貴様……! なんだこいつは……痛え、痛えぞぉっ!!」


「不思議ですか? あなたのその能力は『超回復』であって、『無敵』ではありません」


由美はライルから一歩身を引き、落ち着いた足取りで距離を取ると、ホルスターにグロックを戻し、代わりにベルトから奇妙な形状の金属製シリンダーを取り出した。


「細胞を瞬間的に再生させるためには、膨大なエネルギーと酸素、そして何より『物理的な修復の基盤』が必要です。どれほど再生能力が高かろうと、それを上回る速度で構造を破壊し尽くせば、細胞は分裂の限界(ヘイフリック限界)を迎え、組織は必ず崩壊します」


『な、何を言っているんだい、桃西さん!?』


上空で私の気配が不安そうに揺れる。

『あいつはどんな傷だって直せる化け物だぞ! 普通の攻撃じゃキリがない!』


「ご安心ください、神様。私は魔法や奇跡の類いは使えませんが、現代科学と冷徹な物理法則の使い手としては、この世界の誰よりも優秀な自信があります」


由美が手に持ったシリンダーの安全ピンを歯で引き抜き、ライルへと投げつけた。


「第一段階、窒息(低酸素状態)による再生阻害。――環境を整えます」


ゴボボボッ……!


シリンダーから凄まじい勢いで噴き出したのは、周囲の酸素を急速に奪い去る高濃度の窒素ガス、そして視界と呼吸器を完全に封じる特殊な発煙化学物質だった。

瞬く間に、広場の中心が濃密な白い霧に包み込まれる。


「がっ……!? 息が……息ができねぇ!? なんだこれ、煙か……!?」


ライルは喉をかきむしり、酸欠の苦しみにもがいた。

人間が生存し、細胞を再生させるためには酸素が不可欠だ。どれほど強靭なチートスキルを持っていようと、呼吸する空気そのものが存在しなければ、細胞分裂のエネルギー源が絶たれ、再生速度はみるみるうちに低下していく。


「動かないでください。これより『精密解剖(ゴミの分別)』を始めます」


濃霧の中から、カチャリ、と金属が擦れ合う音が響いた。

姿は見えない。だが、死の気配だけが確実にライルの喉元へと迫っていた。


「ひっ……! 来るな、来るな怪物ぅっ!!」


パニックに陥ったライルは、手当たり次第に周囲へ爪を振り回し、闇雲に叫び声を上げた。

だが、その恐怖の叫びこそが、自身の位置を完全に敵に知らせる致命的なノイズとなっていた。


シュッ――。


風を切り裂く音。

由美が放った高強度の特殊ワイヤーが、ライルの両足首を素早く、寸分狂わず絡め取る。


「ぐわっ……足がっ!?」


「捕縛完了」


一瞬にしてバランスを崩し、ライルが地面に倒れ込む。

その背中に、冷徹なまでの重みが乗った。由美がライルの背中に覆いかぶさり、その両腕を背後で完全にロックしたのだ。


「ま、待て……! 殺すな! 俺には高位神様の加護が――」


「神の加護とやらは、労働基準法や刑法、あるいは物理法則よりも優先されません」


由美の冷たい声が、ライルの耳元に囁かれた。

彼女は手際よく、ライルの首の頸動脈と気管の交点に、特殊な神経断裂ナイフを正確に突き入れた。


ズプッ、と嫌な音がする。


「がはっ……!?」


「脳への血流を遮断。酸素供給停止。これより、あなたの再生能力を物理的に上回る速度で、中枢神経系を完全破壊します」


容赦のない、一切の感情を排した作業。

それはまるで、古びた機械の不具合のあるパーツを、専用の工具で淡々と取り外していくような、冷酷なまでの正確性だった。


ライルの身体が痙攣し、必死に肉芽を再生させようと脈打つ。

だが、由美が打ち込む連続的な外科的アプローチと、酸欠によるエネルギー枯渇の前では、その「超回復」の光も次第に弱々しいものへと変わっていき、やがて――パツリ、と糸が切れるように消え失せた。


「……作業、終了です」


静まり返った広場の中。

白い煙がスーッと晴れていき、そこには完全に動かなくなったライルの姿と、息一つ乱さず綺麗にスーツの裾を整える由美の姿があった。


『す……凄まじい……』


私は天井の隅から降りてきて、呆然と目の前の光景を見つめた。

『どんなチート能力を持った異世界の怪物でも、桃西さんにかかれば、ただの「手間のかかる不法投棄物」扱いで片付けられちゃったよ……!』


由美は足元に転がる死体を一瞥し、やれやれといった様子で小さく息を吐いた。


「異世界人だろうと、高位神の刺客だろうと、物質世界に存在する以上、物理法則からは逃れられません。不確定要素はありましたが、プロとして手順を踏めば十分に対応可能な範囲のトラブルでした」


彼女は手帳を取り出し、ボールペンで今日の業務項目に『レ』点を書き込んだ。


『第一刺客:排除完了』


「ですが、神様」


由美の瞳が、ふと遠くの空――高位神界が広がっているはずの天頂へと向けられた。


「これはまだ『警告の第一波』に過ぎません。あの男を送り込んだ黒幕は、私たちの存在が邪魔で仕方ないのでしょう。今後、さらに厄介な特性を持った刺客が送り込まれてくる可能性が高いです」


『うん……そうだね。高位神にとって、僕たちのような「自分たちの思い通りにならない存在」は、一刻も早く消したい目障りなゴミ箱みたいなものだからね……』


私は切なそうに光を曇らせた。

だが、由美はそんな私を励ますように、いつもの穏やかな、けれど力強い笑みをほんの少しだけ浮かべた。


「恐れる必要はありません。私たちの仕事は、この街の平和な日常――ルーティンを守り抜くことです。どんな厄介な案件(トラブル)が持ち込まれようと、納期までに完璧に片付けてみせましょう」


その言葉に、私の胸の奥に熱いものがこみ上げてきた。

そうだ。僕たちには、この冷徹で頼もしい「最高の社員(相棒)」がついているのだから。


「さて、神様。現場の処理と警察(あるいは裏の処分屋)への引き継ぎ手配を行います。一度事務所に戻りましょう。十時のコーヒーブレイクの時間です」


「そうだね! 温かいコーヒーを淹れるよ、桃西さん!」


朝の惨劇が嘘のように静まり返った広場を後にし、二人は並んで事務所へと歩き出した。

しかし、彼らの背後を遠く見つめる「別の視線」が存在することに、この時の二人はまだ気づいていなかった――。

第2話をお読みいただきありがとうございました!


どれほど凄まじい再生能力を持っていようと、「呼吸を止め、再生速度を上回る物理破壊を加えれば死ぬ」という極めて現実的で容赦のない由美さんの手腕が炸裂しました。


次回、第3話「高位神の宣告」では、刺客を倒された黒幕である高位神が直接介入を開始します。神々の威光に立ち向かう二人の物語をぜひご覧ください!

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