第4話「見たものは、存在する」
白い木を見つめていると、言葉にならない違和感が胸の奥に引っかかった。
(……なんだろう、この感じ)
目を離せない。
理由は分からない。
それでも、視線だけがそこに留まり続ける。
気づけば、ハルは家のドアを開けていた。
ゆっくりと、白い木へと歩み寄る。
一歩、また一歩。
そのときだった。
白い木の輪郭が、わずかに――固まる。
(……あ)
さっきまで、霧のようにぼやけていたはずなのに。
ほんの一瞬だけ――
そこに“ある”と分かった。
はっきりと。
まるで、ピントが合ったみたいに。
(……固まった?)
胸の奥が、ひやりと冷える。
(……見たからだ)
そう思った瞬間。
ぼやけていたそれが、わずかに現実へと近づく。
輪郭が、形を持ち始める。
次の瞬間。
風が、止まった。
音も、葉の揺れも。
すべてが、一瞬だけ消える。
「……来ます」
すぐ横で、リアの声が聞こえた。。
ハルは息を止める。
(……なにが)
答えは、すぐに現れた。
白い木が崩れる。
倒れない。折れない。
ただ、ほどける。
砂の塊が一気に崩れるみたいに、形だけがばらばらに解けていく。
その中から、黒い“なにか”がにじみ出た。
(……これ)
夢で見た物同じ。
黒い揺らぎ。
でも、森であったのより小さくなってる?
そして前よりもずっと近い。
(……ぼくが、呼び出した?)
喉が、ひりつく。
黒いそれは形がない。
煙みたいに揺らいでいる。
でも、そこにいる。
さっきよりも強く、そこに“ある”感じだけがはっきりしている。
それはまだ形が曖昧で揺らいでいる。
だから、どこにあるのかも分からない。
「……ハル様」
リアの声。
「……下がってください」
黒いそれがこちらへ向く。
形はない。
でも、向けられたと分かる。
視線を向けられたみたいに。
背中に、冷たいものが走る。
(……来る)
体を引く。
それは無意識の反応
次の瞬間――遅れて、地面がえぐれた。
音より先に、土が抉れている。
まるで見えない何かが通り過ぎて、あとから傷だけが残ったみたいだった。
「……っ」
何も見えない。
でも、確かにそこにいる。
“通ったあと”だけが、はっきり残っている。
それは、まだ存在が確定していない
でも、確かに存在している。
ハルはふとそんな事を感じた。
戦闘が、始まった。
読んでいただきありがとうございます。
今回は、少しだけ戦闘の入り口まで進みました。
「見たことで存在が近づく」というのが今回のポイントです。
ここまで読んで頂きありがとうございました!




