宰相、何もしてなかった
騎士団が消えた翌日。
王都。
普通。
めちゃくちゃ普通。
人は働くし、店は開くし、税も取られてる。
「……おかしくない?」
ラーハルトが言った。
ついに。
「何がですか?」
「騎士団が消えたんだぞ?」
「はい」
「なのに」
一拍。
「何も起きてない」
沈黙。
全員、考える。
「……まあ」
取り巻きA。
「騎士団なくても回るんじゃないですか?」
「いや回るなよ!!!!」
むしろ回るのが問題だった。
「では」
宰相の息子ユリウスが口を開く。
「確認してきます」
「何を?」
「“誰が回しているか”を」
ちょっとカッコいい。
「行ってこい」
こうして。
唯一まともな判断が実行された。
■宰相執務室
扉の前。
(大丈夫だ)
ユリウス、自己暗示中。
(宰相は国の中枢)
(ここは変わらない)
開ける。
「失礼いたし――」
止まる。
「……誰?」
知らない人が座ってた。
めちゃくちゃ仕事してる。
書類処理が異常に速い。
「何だ」
普通に話しかけられた。
「いや、ここ宰相室ですよね?」
「はい」
「宰相は?」
「おります」
指差される。
奥。
ユリウスの父。
座ってる。
ただ座ってる。
「……父上?」
「来たか」
穏やか。
何もしてない。
「……何してるんですか」
「座っている」
「知ってる!!!!」
■現実
「……では」
ユリウス、震える。
「仕事は?」
「彼がやっている」
知らない人を見る。
めちゃくちゃ仕事してる。
「全部?」
「全部」
「最初から?」
「最初から」
「……」
ユリウス、思考停止。
「……じゃあ宰相って何?」
一瞬の間。
「肩書き?かな?」
「疑問形!!!!」
■追撃
「ご説明いたします」
知らない人、参戦。
「本日付で宰相職は廃止されました」
「は?」
「理由は不要だからです」
「言い切った!!!!」
「実務は既に別系統で完結しております」
「……」
「役職のみ残っていたため整理しました」
「掃除感覚!!!!」
■帰還
「殿下」
ユリウス、帰還。
「どうだった?」
「宰相は」
一拍。
「存在していませんでした」
「は?」
「正確には」
「名前だけありました」
「概念!!!!」
■王太子
「……ちょっと待て」
ラーハルト、ついに焦る。
「騎士団が消えて」
「宰相も消えて」
「今この国」
「誰が回してるんだ?」
沈黙。
全員、考える。
そして。
誰も答えられない。
その日。
政治が一つ消えた。
最初から存在しなかったかのように。
■おまけ
王太子:
「俺、誰に守られてたの?」
側近:
「分かりません」
王太子:
「俺も!!!!」




