5.面白い子
「……本当に優しいんだね、黒沼って」
「優しくはないですよ」
「相当モテたんじゃない?」
「これっぽっちもモテませんね」
皿に残った枝豆を食べていた黒沼が、何を言っているんだ、というような顔でこちらを見ている。
そろそろ何か食べるものも追加した方がいいだろうかと思いつつ、白砥は顔をしかめた。
「嘘だぁ、絶対モテるだろー。そんだけ優しくて気が利いて背が高くて顔が良くて、モテない理由がなくない?」
「優しくも気が利いたりもしないですからモテませんよ。背は多分高い方ですけど顔も普通ですし」
「気は利くじゃん! だってさっきのほら、根津さんに変に思われないように『みんな』って言ったとかもさ、そんなの急に思いつく? 僕絶対無理」
先程、白砥が根津に追われながら会社を出たとき。
待っていてくれた黒沼は、「みんな待ってますよ」「人を待たせているので」と言って白砥を根津から引き離した。
だから白砥はてっきり、自分がいない間に設計部の面々が一緒に飲みに行くことになったのだろうと思っていたのだけれど、根津から十分に距離を取ったところで確認したら、黒沼はあっさりと言ったのだ。
――誰も誘ってないですよ。俺と白砥さんがサシで飲みに行くって根津さんにバレたら、なんか余計な勘ぐりをされそうだったので、ああ言っただけです。
そんな機転を利かせてくれて、飲み物がなくならないように気を配ってくれて、背が高くて、顔が良くて、勤務態度はすこぶる真面目で、フラれたくらいで昼を食べなくなる駄目な上司に差し入れをするほど優しくて。
黒沼は本当に、よくできた若者なのである。
「じゃあ逆にモテない理由があるわけ?」
「外見の割に中身が硬くて期待外れらしいですよ。あと表情が薄いのが怖いみたいです、別に自分では薄いと思ってないんですけど。それと目つきが悪いので、睨まれてるような気になるそうです。背が高いのも、真顔で見下ろされると怖いって言われます」
「……、……まあ、うん、そういう子も、いるかぁ……」
そういえば、総務にいる同期から、黒沼が来ると新人女子が怯えてしまって困る、と最近言われたことを思い出した。
百九十センチ近い高さから無表情にあまり目つきの良くない切れ長の一重でじっと見られていると、厳しく睨まれているような気分になるらしい。
黒沼とてまだ入社二年目なのだからそれほど萎縮しなくてもいいとは思うが、今年の春入ったばかりの新入社員からすれば二年目でも先輩は先輩だし、やはり緊張してしまうのだろうか。
(いやでもさ、中身が硬いのはむしろいいところなんじゃないの? 真面目で勉強熱心な好青年じゃん。この子、普通にいいところしかないんだけど)
確かに黒沼は、見た目だけなら現代的というか、いわゆる「チャラい」若者に近いのかもしれない。明るい髪色、しかもハーフアップで、私服も垢抜けているように思う。白砥にファッションの知識があまりないから、この辺は感覚の話になってしまうけれど。
そうした外見上のイメージと、業務時間中の私語は基本的に一切しないとか、上司や先輩には絶対に敬語を崩さないとか、酒の席でもほぼはしゃがないとかの、生真面目な性格がかみ合わないと思われるのかもしれない。
しかし黒沼のそうした勤勉さや礼儀正しさを好意的に見ている白砥からすれば、何が問題なのかまるでわからない、というのが本音であった。
「こんなに良い子なのにねえ……」
「ええと……ありがとうございます?」
「僕なんかのために泣いてまでくれたのにねえ」
「あっ……れは、その、……忘れてもらえると、助かるんですが……!」
珍しく露骨に動揺した様子で言った黒沼が、箸でつまみ上げたばかりの鶏の天ぷらを取り皿に落とす。
彼の慌てた顔など見たのは初めてで、思わずじっと見つめていたらだんだん横を向かれてしまった。
「……白砥さん」
「ん、なぁに」
「あの、後生なんで、あんまり見ないでもらえると」
「なんで?」
「……その、ええと、心臓に悪くて」
「えぇ、なんでぇ? 見てるだけだよ?」
しどろもどろになっている黒沼なんて、今後見る機会はないかもしれない。これはしっかり目に焼き付けておこうと、白砥は上機嫌で首を傾げた。
すると黒沼は意外に残り少なくなっていたジョッキの中身を一気に飲み干して。
「っ推しに! そんな可愛い顔でじっと見られたら! どうしていいかわからなくなるじゃないですか!」
やや赤い顔でそんなことを言うものだから、白砥は思わず笑ってしまった。
「んはは、黒沼って面白い子だねえ」
「面白くはないですよ! もう一杯飲んでいいですか!」
「いいよぉ、じゃあ僕のも頼んで。あ、あと焼き鳥食べよ。黒沼は?」
「俺これ食べたいです」
「んふふ、いいよぉ。入れて入れて」
二人で、あれがいいこれにしようなどと言いながら、タブレットを操作する。
ひとしきり注文を終えたところで、ふと黒沼が言った。
「あの。……結婚、するってことは……聞いてたんですか?」
「……んーん。聞いてなかった」
「……そう、なんですか……」
僅かに顔をゆがめた黒沼を、白砥は黙って対面から眺める。
悔しさとも憎しみともつかない感情が、確かにそこに見えた。
(黒沼って、よく見ると意外に表情豊かだよなあ。喜怒哀楽自体が薄いわけじゃなくて、顔に出づらいだけなのかも。これなら確かに、自分では表情が薄いなんて思わないよね)
いちいち鏡を見て確認するわけでもないのだから、自分では気づきにくいのかもしれない。
きっと黒沼は、いろんなことを感じていても表に出にくいだけなのだ。だからよくよく見ていれば、彼の感情を理解することはそこまで難しくないのである。
なるべくなら部下のことを理解したいと常々思ってきた白砥にとって、それは嬉しい発見だった。
「根津さんもね、それを謝らなきゃって思ったんじゃないかな。でもさ、僕は別に謝られたくないんだよ。だって、勝手だと思わない? 謝る根津さんの方はそれでさっぱりするんだろうけど、謝られた僕はどうすりゃいいんだよって。謝られた以上許さないのも、僕の心が狭い話になるじゃん? かといってさ、許したよ良かったねおめでとう、とは正直言いたくないし」
「言いたくないのが普通ですよ、それは」
「だよねぇ。約一年は二股掛けられてた可能性まであるし、ちょっとまだ許しがたいんだよな」
「……え?」
「あれ、黒沼も聞いてない? 同じ中学校の幼なじみと、交際一ヶ月でのスピード婚だって」
「それは、その、噂では聞きましたけど」
「事実なんだよね。で、その子と再会したのってさ、実は一年前の同窓会なのよ」
「……」
その夜、根津は帰ってこなかった。
何時になっても帰ってくる、と出かける前には約束していたのに、盛り上がってて帰れそうにない、というメッセージが来て、家に帰ってきたのは結局翌日の昼過ぎだった。
久しぶりに会う友人との話が盛り上がることくらいあるだろう。そのまま誰かの家に泊まることだってなくはない。そう思ったから、白砥もなにも気にしていなかったけれど。
思えばその頃から少しずつ、根津との距離が広がっていったような気がする。
「一年前に再会して、一ヶ月前から付き合いだしたってこともね、まあ、あるかもしれないとは思う。……でも順当にいったら、付き合って一ヶ月で結婚ってことはないんじゃない? 結婚まで行くくらいなら、一年までとはいわないけどさ、少なくとももうちょっとは付き合ってたでしょうよ」
「で、でも……白砥さんと別れたのは、一ヶ月前、なんですよね」
「そうだねぇ」
「……そしたら、それって、……それまでの間って、浮気、じゃないですか」
「ま、そうなるねぇ」
「……」
黙り込んでしまった黒沼の顔を見る。少し目が潤んでいるような気がした。
「泣かないよー、黒沼ー」
「泣かないです。泣かないですけど、……そんなのって、良くないです」
「良くないですよね、僕もそう思う」
「なんで、根津さん……俺、白砥さんには幸せになって欲しいって、本当に思って……だから根津さんならって、なのに、なんで……っ」
頼んでいた料理と酒が一気に運ばれてきて、黒沼が言葉を切った。空いた皿とジョッキが、素早く回収されていく。
また冷たくなったジョッキを持ち上げて、白砥は笑った。
「……幸せ、かあ」
黒沼の気持ちは、嬉しいのだけれど。
「幸せって、どうやったらなれるんだろうね。……どうしたら良かったんだろう、僕は」
「……白砥さん……」
「なんか、よくわかんなくなっちゃった。あのね、なりたいんだよ? なりたいんだけどね、幸せって。でも、ちょっと今は、わかんなくなってるかも」
ほんの一ヶ月前までは、なれるような気がしていたのだ。
けれど、四年間積み上げてきて少しずつ信じられるようになったものが、またあっけなく崩れてしまって。
そうして崩れた足場の上にただ呆然と立っているのが、今の自分なのだとしたら。
いつかまた、それを積み上げられる日は――来るのだろうか。
「……なりましょう」
静かな声がした。
黒沼の目が、じっとこちらを見ている。
わずかだが、確実な熱を持って。
「幸せになりましょう、白砥さん。白砥さんは絶対に幸せにならなきゃ駄目です」
「そ、そう言われても」
「差し当たって俺にできることなら何でも手伝いますから、なりましょう、幸せ」
「いやあの、なりましょうっていってなれるもの? 幸せって、なんか、こう……違くない?」
「違くないです。なれます。いやむしろならなきゃダメです、なりましょう幸せ」
どん、と一気に半分ほど空いたジョッキがテーブルに置かれる。
(……もしかして黒沼、酔ってる?)
そういえば、飲み会の席でも黒沼はあまり酒を飲まない。
白砥は体格の割に酒には強く、今日は最初の一杯こそ早めに空けたがそのあとはペースを落としたこともあって全く酔ってはいないけれど、もしも黒沼が酒に弱いのなら酔いが回っている可能性は十分あった。
「白砥さんは俺の推しなんですよ。世界で一番幸せになって欲しいんですよ。なのになんですか? 世の中どうなってんですか? どうして白砥さんがこんな目に遭わなきゃならないんですか? 俺の理想の推しなんですよ? 二次元にしか存在しないと思ってた全ての要素を兼ね備えた存在が三次元に降臨してくださってるんですよ? 奇跡ですよ? 推さないほうがおかしくないですか?」
「ちょ、ちょっと黒沼落ち着いて、ね、まず一回お水飲もう」
「図面引かせたら誰より早くて正確で綺麗だし、この小柄な身体で設計だけじゃなく加工までこなすし、誰に対しても人当たりが良くていつも笑顔で、話すのも聞くのも上手くて誰にでも好かれてて、俺みたいに無口で無愛想な部下のことまで気に掛けるほど優しくて、でも何かあれば上役にだろうが噛みつくような勇ましさもあって、実年齢マイナス十歳くらい幼く見えるのも可愛くて、自分のことなんて二の次で人のために尽くしちゃう健気さが放っておけなくて、そんな白砥さんが幸せになれないならこの世界がまずおかし――」
「ストップ! ストーップ! 黒沼! そこまで!」
とんでもない勢いで言葉を吐き出し続けている黒沼の口を白砥は手で押さえた。
実力行使になってしまったのは申し訳なかったが、何を言っても彼の口が止まらなかったのでもうそれ以外の解決策が思いつかなかったのだ。
(あああ、もう、恥ずかしいったら……!)
幸いにして黒沼の声は割と小さかったので、店内の注目を集めるほどではなかったけれど、突然面と向かって褒められ続けた白砥の顔はすっかり熱くなってしまっている。
(嬉しいけど、嬉しいけどさ、もう褒め殺しなんだよここまで来ると! あと過分に黒沼のひいき目が入ってる気がする! 絶対そう!)
図面なんて当たり前だが中西の方がよっぽど早くて正確だし、加工だって一通りこなせるというだけで工作部の同期には遠く及ばないのだ。顔が童顔なのは自分でも気にしているところなので、褒められてもちょっと嬉しくはないのだが。
とにかく、黒沼は少し自分を美化し持ち上げすぎているきらいがある。理想の推し、と言っていたけれど、作り上げたその理想に一部分だけ合致した白砥を、無理矢理理想そのものだと思い込んでいるだけなのではないだろうか。
(うん、きっとそうだな。僕なんかが、誰かの理想になることなんてあるわけないし)
白砥は一人納得した。それならば理解できる。
恐らく黒沼には理想の推しの姿というものがしっかりとあって、そのどこかに白砥がかすったのだ。だからこんなに熱心に「推して」くれているのだろう。
自分は彼の理想などではないと、早めに訂正してやる方が黒沼のためなのだろうが、少なくとも今は聞いてもらえない気がする。
もご、と押さえ込んだ口が苦しげに動いたから、白砥は両手の人差し指一本ずつを残して黒沼の口の前でバツ印を作った。
「あのね、黒沼。その、気持ちは嬉しいよ。えっと、お……推し? て、くれてるっていうのも、別に嫌とかじゃないの。ただ、ちょっとだけ落ち着いて欲しい。僕に何があったとしても、世界は別におかしくないからね」
「……、……すみません、取り乱しました」
「大丈夫?」
「はい……でも、俺、白砥さんに世界で一番幸せになって欲しいっていうのは、本当なんです……」
「ふふ、うん、それはね、ありがと。信じてるよ」
しゅんと肩を落としながら言った黒沼に笑って答える。
黒沼には悪いが、自分が彼の本当の理想ではなかったとしても、その言葉だけはありがたくもらってしまおうと思った。
それは、白砥がもう一度前を向くための支えになった、大切な言葉だったから。
「そのために、俺にできることなら何でもしますっていうのも、本心なので。もし良ければ、何にでも使ってください」
「うーん、そう言われてもなあ……」
どうやったら幸せになれるのかもわかっていないのだから、使ってくれと言われても困ってしまう。
首をひねりながら砂肝の串に手を伸ばせば、黒沼が水を一口飲んでから手つかずだったチヂミに箸を伸ばした。
「じゃあ、ひとり暮らしで、何か困ってることとかないですか?」
「高いところの物が取りにくいとか?」
「それはあの、脚立などを使っていただいて……」
「んはは、ごもっとも。……そうだねえ、休みの日に出かけるのが、ちょっと、億劫になったかな」
外出すること、それ自体が嫌なわけではないのだ。
けれど休日に出かけると、どうしても家族連れやカップルが目について。
その中でたった一人の自分を自覚すると、少し呼吸がしづらくなってしまう。
気にする方が愚かなのだとわかっていても、ついこの間までは自分も隣に誰かがいてくれたのだと、あるいは誰かが待っていてくれたのだと、思い出してしまって。
「僕ね、水族館行くのが好きでさ。年パス持ってるくらい通ってたところがあるんだけど……そこもね、なんか、行きづらくなっちゃって」
「遠いところですか?」
「ううん、近いよ。会社帰りに行ったこともあるくらい」
スマートフォンで場所を検索して見せてやれば、黒沼は興味深そうにそれを覗き込んだ。
「駅のすぐそばなんですね」
「そうなの。だから行きやすくて」
「じゃあ、今度の土曜に行きませんか」
「……え、……でも」
休日の水族館といったら、それこそ家族連れやカップルが大量にいるだろう。
元々水槽を覗き込んでしまえば周りもあまり気にならない質だし、黒沼が隣にいてくれるのなら、確かに自分はさほど周囲を気にしないで済むかもしれない。
だが、男同士でいわゆるデートスポットのような場所に行くことを、黒沼の方は気にしないのだろうか。
「あ、予定があるようなら、別の日で構わないです」
「そうじゃないんだけど……いや、でもさ、さすがに悪いよ。休みの日にまで上司の顔なんて、見たくないでしょ?」
「推しの顔なんて毎秒見ていたいくらいですけど」
「じゃ、じゃあさ、男二人で水族館ってのはどうなのよ。その、ちょっと珍しいっていうか、あんまり多くないと思うけど……」
「全く気になりませんね、これは立派な推し活なので」
「おしかつ」
「推しを応援するために推しが好きな場所に推しと行く。超ハイレベルな推し活です。まさか人生でこんな機会を手にすることがあろうとは思いませんでした。ありがとうございます、白砥さん。これからも全力で推させてください、あと振込先の口座番号を教えてください」
普段の口数の少なさなどどこへやら、深々と頭を下げ流れるように感謝の言葉を述べた黒沼に困惑する。
何か今、最後に余計な一文が挟まれなかっただろうか。
「あの、待って? 今なんか、その、口座って言った? な、なんで?」
「え、さすがに有料ですよね?」
「水族館のチケットの話?」
「白渡さんとの外出の話ですが」
「なんでだよ! そんなとこにお金かからないよ! あ、でも水族館のチケットは自分で買ってね、あと交通費も自腹ね」
「それはもちろんなんですけど、どうして俺の推し活に対価を払わせてくれないんですか?」
「どうしてもなにも、ただ一緒に出かけるだけで普通お金は取らないでしょ……?」
白砥にはわからないが、もしかしたら「推し活」とはそういうものなのであろうか。
未知の文化に困惑していれば、渋々、といった感じで黒沼が頷いた。
「推し本人にそう言われてしまっては、悔しいですが仕方ありません。では、当日は、俺のことは人型の壁だと思ってもらって構いませんので。そばに控えておりますから、周囲の視線が気になるときにでも、適当に呼びつけて使ってもらえたら」
「んん? 待って、どういうこと? 僕は普通に黒沼と水族館に行くつもりなんだけど?」
「いえいえそんなお気遣いなく。俺のような一介の白砥さん推しオタクが推し本人である白砥さんの隣に並ぶなど、さすがに不敬だと心得ておりますので」
「またなんかややこしいこと言い始めたな」
「ややこしいことではないんですよ、ただ俺は推しから認知されたいタイプじゃなくてですね、その場の壁とか床とか部屋の隅の観葉植物とかになって見守っていたいだけなんです。推しにはふさわしい相手と幸せになって欲しいわけで、あのそもそもですね、推しに対して抱いている感情は確かに好意ではあるんですが恋愛感情的なそれとはまた違っていまして、といってもこれはあくまで俺の場合の話なんですが――」
黒沼はいつもとほぼ変わらぬ無表情、いつもと同じ淡々とした声音で話しているが、言葉の勢いと発言の内容だけがとんでもないことになっている。
日頃の会社での無口無愛想無表情、と無が三拍子そろった彼の様子を思い出し、白砥はこっそり笑ってしまった。顔と声音はその状態からさほど変わっていないのが、余計に面白い。
(……黒沼って、こんな愉快な子だったんだなぁ)
もしもこちらが彼の素なのだとしたら、普段会社ではかなり我慢をしているということになる。
だとすれば、時々こうして飲みに誘うなどして、息抜きをしてもらった方がいいのかもしれない。黒沼の勤勉さは中西も買っているのだ、できることなら長く一緒に働きたかった。
(嫌がられてはいなさそうだったし、また誘ってもいいか、土曜日に聞いてみようっと)
とりあえず、会社の飲み会ではあまり酒を飲ませない方がいいタイプだということはよくわかった。
今度酒を勧められていたら間に入って断ってあげようと思いつつ、いまだ一人で滔々と推しと推し活について話し続けている黒沼に優しく相槌を打ちながら、白砥は最後に残っていたねぎまの串を取り上げた。




