『平穏に暮らしたい』と言いながら全速力で走る奴の背中には、大抵ろくでもない運命がベッタリ張り付いてる
こんにちは。
ひたすら修行のように毎日執筆しております。
王女達が帰った後、ジノはすぐさま行動を開始する。
ありったけの路銀を袋に詰め、最低限の荷を作る。
「夜のうちに、遠くへ……」
聖剣を押しつけられて、勇者をやらされるなど、寿命が幾つあっても足りない。
「ただ、平穏に暮らしたかっただけなのに」
母が死に、孤児となって、流れ着いたこの村で必死に生きてきた。
ジノは闇夜に紛れて、小屋を出た。
降るような星空の下、感慨深く一度振り返ると、
──弾丸のようにその場から走り去った。
翌朝、喜び勇んで迎えに来た王女は、もぬけの殻の小屋を見て愕然とする。
「ゆ、勇者様が……」
「チッ、あんの野郎……」
「これは逃げましたね……」
三者三様の反応を見せ、即座にルディは行動を起こす。
「ルゥ、国境警備隊に連絡だ。捕縛命令を出せ」
「勇者に懸賞金でも懸ける気ですか?」
ギリギリと唇を噛み締めて、ルディは頭の中で、勇者の逃走ルートを予測する。
(アイツは勇者をやりたくないんだ)
ルミナス領では、勇者捜索の手が激しく回るので、どう考えても国外逃亡の方があり得る。
(こうなることは、想定しなきゃダメだった)
ルミナはみるみる表情を翳らせ、俯く。
「具合が悪そうなのに、無理強いしたせいでしょうか?」
「いや、あの吐血は病気とは違う気がしますけどね」
ルゥは自分の髪の中から、一羽の小鳥を取り出すと、
「レグルス、話は聞いてたろ? んじゃ、よろしく」
小鳥は小さく頷くと、指先から力強く羽ばたいて飛んでいった。
「姫様、勇者様は必ず見つけますので」
どう考えても、あの森の中の大量のゴブリンの死体は、勇者ジノの仕業だろう。
何より、ジノ以外の村人全員が、広場にいたこと。
あれだけのゴブリンを、全て撲殺していることから、勇者による尋常な力であることは間違いない。
ただどうしても腑に落ちないのが、こんな辺鄙な田舎の村で、あんなに大量のゴブリンが湧くことなど、到底あり得ないのだ。
「ルディ……大丈夫?」
「あっ、申し訳ありません、姫様」
考えに耽って、姫を心配させてしまった。
「勇者様は、おそらく国外に逃げると思います」
「それなら国境の町まで、とりあえず移動しましょうか」
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