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どれだけ心を閉ざしても、空気が読めない武器というのは玄関の隙間から土足で入ってくる

こんにちは。

今回もよろしくお願いします。



(しばら)くして、王女が湯から上がってきた。

待機していたルディは、タオルを広げて立ち上がる。


「姫様、湯加減はどうでしたか?」


「……」


「姫様?」


王女はどこか放心している。のぼせたのか……?

よく見ると額に青痣が出来ていた。


「姫様、この痣はどうなされたのですか?」


「……滑って転んだの」


王女が指で額をなぞると、瞬く間に痣は消えた。


「ヒールが使えるからって、怪我をしていいって訳ではありませんよ?」


体を拭くのを手伝い、素早く着替えさせる。


「……もう、気を付けて下さい」


転んでぶつけたから、こんな感じなのだろうか?


「ルゥ!!」


即座に離れた場所にいた弟を呼び、状況を共有する。

ルディは常に警戒を怠らない。


「こっちは特に誰も来ませんでしたよ」


「……ふむ。一旦、村長宅に引き上げよう」



王女一行がその場を去り、ようやくジノは安堵(あんど)する。

お陰ですっかりのぼせてしまった。


「どうしてよりによって……」


まさか王女と鉢合わせるとは。


ここに来たということは、あのゴブリンの死体の山も見られただろう。


「処理しとけば良かったかなぁ……」


だが今更処理したら、余計に怪しまれるだろう。

王女一行に既に見られてしまっている。


「まぁ、いっか」


そもそもゴブリン達を、ジノが一人で倒したという証拠もない。


少なくとも王女とジノがここで出会った(・・・・・・・)事実はない。


王女達も暇ではない。こんな何もない村にいつまでも滞在しないだろう。


そう高を(くく)って、自宅に帰ったのだが──。


「夜分にすみません」


何者かが、小屋の扉を叩いた。


「……」


ジノはげんなりする。

晩飯を済ませ、後片付けをしていた時だった。


煮炊きをした後で、部屋の明かりも外に漏れている。流石に居留守は無理だろう。


「……何か?」


扉越しに声を掛けた。


「あの……聖剣を抜ける方を探していまして」


「……さっさとここを開けろ。王女様がおなりだ!」


ルディはイラついていた。

最初のノックで出て来いと思っていたからだ。


扉がやや開き、黒髪の男が顔を出した。重い前髪で顔の大半が隠れ、人相は分からない。


「聖剣を抜けるか試して頂けます?」


「……」


男は答えない。

沈黙は了解なのだと解釈し、ルミナは聖剣を押し付けた。


男はおもむろに受け取ると、抜こうとするモーションをし、首を横に振って、即座に王女に突き返した。


「はい、無理っす」


物凄い速さで扉が閉まり、一同は呆気に取られた。


「人見知りの方でしょうか……?」


「何なんだ? アイツは」


「どうせダメだったんでしょう? もう帰りましょうよ」


ルミナは突き返された聖剣をまじまじと眺める。

沈黙をずっと保っていたそれは、脈打つように淡く光を放っていた。


「!」


聖剣が(よろこ)んでいる?


「姫様、どうかなさいましたか?」


「聖剣が……」


「えっ?」


暗がりの中、聖剣は微かに光を帯びている。


「ルゥ!! そいつを確保だーーーーっ!!」


「すみません、もう一度ちょっと良いですか?」


ドンドンドンドン!


ルゥが扉をしつこく叩く。

激しく扉を叩かれる音に、ジノは頭を抱えた。


(チクショウ、ここまでか……いや、まだ舞える!)


仕方なく扉を開けると、騎士は靴のつま先を滑り込ませてきた。


「何ですか? 夜遅いんで、ご近所に迷惑ですよ」


「……いや、どこに近所の家があるんです?」


村外れのポツンと一軒家にその言い分はおかしい。


「あの、もう一度聖剣を抜いてみて貰えませんか?」


王女が聖剣を差し出すも、男は首を振った。


「いや、さっき無理だったじゃないですか」


「四の五の言わずにとっとと、抜けや」


ルディが男の手を取り、聖剣を握らせようとした。


「いや、ちょっと無理……」


そう押し問答しているうち、ストンと鞘がその場に落ちた。


カンカラカーーーン!


「!!」


「…………」


地面に転がった鞘。


抜き身になった聖剣は男の手にしっかり握られていた。

読んでいただきありがとうございます。

僕なら居留守普通に使います。

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