盤面は詰みかけてるのにヒロインの脳内UIだけはゼクシィの表紙をハッキングしてる
当たり前のように自室に戻り、ベッドに並んで腰掛けた。
「どうして、シモンさんは自らあんな風に?」
「シモンは俺を信じて、噛み位置を狭める為に自ら柱したんだ」
あのままなら、4対3でジノの処刑は免れなかった。
「俺とお前は黒塗り位置なので、襲撃されない。だから、ロルフとティアで2分の1なんだ」
ジノの丁寧な説明にルミナは納得した。
「2分の1……ジノ様はどちらだと思いますか?」
「正直どちらも変わらないと思ってる。ティアもロルフも、俺達に縄を向けて来てるので」
「ティアの方が、ゼノビア達と距離が近い。だから俺ならロルフを護衛する」
「そうなんですね……」
(もう確認する必要もないが、ルミナが真『騎士』でなきゃどのみち詰みだ……)
「そういや、ネネが戻って来ないな」
「いないんですか?」
「朝からいない」
(まぁどっかで寝てるんだろう)
その時、改めてルミナと部屋に二人きりだという事実に気付く。
そもそも昨日の今日の告白の後、意識しないという方が、無理なのかもしれない。
何にも考えず、ベッドに腰掛けてしまったことを今更ながら後悔した。
(……しまった、ネネがいないと言わない方が良かったのか)
今日のルミナは淡いピンクのカクテルドレス姿で、耳元でパールのイヤリングが揺れていた。
薄いリップの塗られた、小さな唇。
少し開いた胸元は、前に屈んだ際に胸の膨らみが見えそうだった。
(おいおい、どこ見てんだ俺は?)
額に手を当てて目を閉じ、何とか落ち着きを取り戻そうとした。
(変な気が起きそうになる……)
「ジノ様?」
ルミナの眼差しを直視出来ず、慌てて顔を背けた。
意識していることを、ルミナに気付かれたくはない。
精一杯取り繕うとするも、自然と早口になる。
「とにかく、今夜GJを起こして、明日残った村人と、ゼノビアとニコを順に吊れば勝ちだから……」
「ジノ様……」
ジノの手の上にルミナが手を重ねた。
じっと上目遣いで、こちらを見つめて来た。
淡い水色の双眸は翳りが帯びる。
「──もし、この勝負に負けたら、私達はどうなるんでしょう?」
「負けるなんて口にすんな」
ジノは強い口調で言った。
初日に人狼を処刑出来たのに、その後はずっと流れが悪くなっていた。
予定通り、《霊媒師》ローラーが完遂されず、リネットに縄がかかったのも痛い。
ミレイユの襲撃が響いていた。
人狼側はかなり遣り手なのだ。
自滅していく村に上手く乗っかる形で、処刑を免れている。
「俺はまだ諦めてない」
「!」
ルミナの瞳を真っ直ぐに見つめ、言い聞かせるように言った。
「とにかく今夜が山だ。絶対に勝つぞ」
「はい」
◇ルミナ視点◇
話し合いが終わって、いつものようにジノに付いて、当たり前のように彼の部屋へ入る。
リネットがいなくなり、二人きり。
彼はいつも理路整然と、盤面の説明をしてくれ、次にどうするべきか行動を指し示してくれる。
ジノの処刑を免れる為に、シモンが敢えて柱をし、それによって襲撃位置を2分の1にまで絞り込むという話だった。
「俺ならロルフを護衛する」
そう言った彼の着崩したシャツから、少し見える鎖骨が綺麗だった。
ルミナも今の今まで一度もGJが出ないことに胸を痛めていた。
ずっとはっきり言えないままでいたが、真の『騎士』は他でもなくルミナ自身だった。
(要は、私のセンスが無さすぎるのよね……)
初日はジノを護衛したが、それ以降女性を中心に護衛を入れてみていた。二日目のイリスとかジノを敵視していた人を護衛なんか出来る訳もなく──。
そもそもミレイユという偽物と分かっている位置を、護衛しようと思う《騎士》なんか何処にもいない。
普通は失敗の襲撃なのに、結果的にリネットが処刑されてしまい、偽物の筈のミレイユの結果が信用されてしまっている。
それが今の村人達の、自分達への不信に繋がっていた。
ジノをこっそり見つめていると、慌てて彼が顔を背けた。
横を向いた彼の耳が赤くなっている。
(ひょっとして、告白したのが響いている?)
返事こそまだ聞いていないが、昨日のあの雰囲気は、絶対に手ごたえがあった。
「ジノ様」
ジノの左手に自分の手を重ね、彼をじっと見つめる。
彼の赤い瞳と視線が確かに絡みあった。
「──もし、この勝負に負けたら、私達はどうなるんでしょう?」
「負けるなんて口にすんな」
彼は強い口調で言い放った。
「俺はまだ諦めてない」
真っ直ぐにこちらを見つめながら、はっきり言った。
「!」
(彼は、私との結婚を諦めてない!)
ルミナは胸の奥がジンと痛んだ。嬉しさで涙ぐむ。
そして、自分でこの勝利を掴み取ってみせると決意した。
(今日こそ、GJを出さなければ)
(私に結婚なんかする資格がない)
読んでいただきありがとうございます。
作者多忙につき、更新頻度がまちまちになります。
申し訳ありません。




