主催者が現場に混ざりたがるのはだいたい老害の始まり
──そして運命の朝。
話し合いの前に朝食の席で、全ての決着が付く。
ジノとルミナはいち早くテーブルに着き、残りの村人であるロルフとティアが現れるのを期待を込めて待った。
彼らが姿を見せるまで、緊張が続く。
ロルフがまず現れ、ジノ達は胸をホッと撫で下ろす。
そもそもルミナがロルフを護衛していたなら、彼が生きているのは当たり前だ。
あとはティアが姿を見せれば、ジノ達村人の勝利が確定する。
「……おはようございます」
恐る恐るダイニングルームに入って来たティアの姿を確認し、ジノは小さくガッツポーズをした。
ルミナはそれを見逃さなかった。
「やりましたね、ジノ様」
「あぁ」
普段そこまで感情を見せないジノが、あどけない笑顔を見せた。
(ジノ様って、やっぱり可愛い!)
(これで勝利、私達の結婚が現実に……)
「えっ、ゼノビアとニコは?」
二人がなかなか姿を見せず、ティアはやきもきしているようだった。
結局朝食の席に二人は現れず、執事のアナウンスが入った。
「昨夜の犠牲者は誰もいませんでした」
このアナウンスを聞いて、ティアもロルフも席を立ち上がった。
「えっ、どういうこと?」
「……GJしかない」
こちらに視線を向け、ロルフは複雑な笑みを浮かべる。ティアも状況を理解したようだった。
「私達、ひょっとして、ずっと間違ってたの?」
「……『騎士』は真だったのか!」
「疑って申し訳ない」
「……あの、その本当にごめんなさい!」
ロルフはその場で深々と頭を下げ、ティアは余程悪いと思ったのか、土下座までした。
(まぁ、利敵に近いことしてたからなぁ……)
「2分の1を外しちゃったわ」
そう言って、ホールに入って来たのはゼノビアとニコの二人だった。
「シモンの柱が効いたわね」
「いい線までいったと思わない?」
「狂人ミレイユの漂白噛みが上手い」
ジノが褒めると、ゼノビアもニコも顔を見合わせて、お互いを褒めた。
「だから、漂白が強いって話したでしょ?」
「ゼノビアの言う通りにして良かった」
「ほんと、よくミレイユ襲撃を同意してくれたわ」
「……すっかり騙されてたし。私ダメダメだ」
ティアがしゅんと項垂れた。
「初日にフェリクスが処刑されてしまったから、私達に出来ることは少なかったのよ」
二人は人狼側の辛かった裏側まで皆に話した。
「私達の負け。みんなお疲れ様!」
ゼノビアの負け宣言で、ここで述べ6日に渡るゲームが終了した。
何処からともなく執事が現れてアナウンスした。
「皆様お疲れ様でした。村人陣営の勝利です」
喜びのあまり、ルミナはジノに首に抱きついた。
ジノは突然のことで両手が一瞬泳いだが、困惑しつつも、そっとルミナの背中に手を回す。
(……まぁ、とりあえず勝てて良かった)
身体をパッと離し、ルミナが笑顔で言った。
「ジノ様、これで私達結婚出来ますね」
「は?」
ジノは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
選抜試験がこれで終わりとは到底思えない。
(まだ気が早いと思うが……)
「あっ、やっぱり二人はそういう仲なんだ?」
「良いなぁ〜私も素敵な相手が欲しい」
ゼノビアが冷やかし、ティアは羨ましがった。
「あーーーーっ!」
リネットの声がしてそちらを見やると、ホールの扉が開いていて、見知った顔が列を成して入って来た。
リネットはこちらに小走りで駆け寄り、ルミナとの間に割り込むようにして入って来た。
「ちょっと、なんで二人だけで喜んでんの?」
「別にそういう訳じゃない」
「私がちゃんと占いをしたお陰だから、私の勝ちでしょ?」
リネットが鼻高々に、腰に手を当てて得意げに言い切った。
(う、うーん……)
「……いいえ。私が最後にGJを出したからです」
どうやらルミナはリネットと張り合うようだ。
「私なんか理不尽に吊られて、墓場に見立てた地下室にいたのよ? 部屋は薄暗いし、ベッドは棺だし、食事はパンと牛乳とかだし……」
地下での生活の不満をリネットが漏らす。
「僕なんか初日から君の所為で地下に送られ、棺で寝る羽目になって散々だったんだが?」
後ろにいたフェリクスがそうぼやくと、リネットが噛み付く勢いで反論した。
「私の所為? あんたが真っ黒なのがそもそもいけないんじゃない?」
どうやら地下は地下で楽しくやっていたようだ。
「とにかく一番の功労者は私でしょ」
「私……いいえ、やっぱりジノ様です」
「──いいや、一番の功労者は僕」
その声に一同が振り向く。
「僕が柱したから、勝てたんだ」
栗毛のパーマ頭のパッとしない地味顔、シモンだ。
目を凝らすと、その肩にはネネの姿が。
ネネはこちらに気付くと、気まずそうに顔を背けた。
(まさか……)
シモンの笑顔の既視感の理由が分かった。
「そりゃ、柱もするわ……」
ジノはシモンに歩み寄ると、耳元で囁く。
「……おい、主催者が参加していいんか?」
「私だって純粋な参加者なんだから、別に構わない」
「は? どういうことだ?」
「言葉通りだよ」
シモンはニヤリと笑った。
「ここは、いいところだろ? ここも塔主の持ち物の一つさ」
「魔導の塔の塔主の座は、そう簡単には明け渡せないって話さ」
一筋縄ではいかない相手なのは理解はしていたが……。
(主催者自ら選抜試験に参加してんのはどうなんだ?)
「皆様、港に迎えの船が参っております」
「お帰りの準備を済ませた方から、ご乗船下さい」
執事が帰りのアナウンスを始めた。
「おい、まだ試験続くんかよ」
「次で最後だよ」
──シモンもとい、ジークはあっさり明かした。
「あっ、他の参加者に私の正体はまだ言うなよ?」
読んでいただきありがとうございます。




