味方の足を引っ張るアホに限って自分が正義の味方だと疑わない
昨夜の犠牲者はヴォルフだった。
朝食の席で、ヴォルフの姿が見えないので、誰目線からでもそれは明らかだった。
朝食後に始まった話し合いの席で、残ったニコによる『霊媒師』の結果が発表されるが、勿論リネットの結果は白でしかない。
ニコは全員を眺め、こう言った。
「この中に、まだ人狼が二人残ってるわ」
それは全くの事実だった。
ニコ曰く、自分の対抗のクラリスで人狼を処刑出来ている計算だが、それはあくまで誤りであった。
真実の村目線では、人狼はフェリクスしかまだ処刑出来ていない。
「護衛先はシモンだ」
ジノが真っ先に護衛先を明かすが、GJは一度も起きていない。
「やっぱり、フェリクスが『騎士』だったのでは?」
ゼノビアが言う。
「フェリクスは白なので……」
ニコが遠慮がちに結果を繰り返す。
ゼノビアもニコも、今日は全力でジノに縄をかけにくるだろう。
「もう、流石にここまで生きている『騎士』はおかしいだろう。ジノを処刑したい。その後でルミナも」
やはりロルフが縄をこちらに寄せて来る。
昨日の時点でそれは明白だった。
「……賛成。きっとフェリクスが真『騎士』でしょ? ジノとルミナが残りの人狼なんじゃない?」
「フェリクスさんが『騎士』ってことは絶対にありません!」
ルミナが敢然と否定した。
それを見て、ジノは今日も提案することはひとつだ。
「『霊媒師』ローラーの完遂だ」
「僕も『霊媒師』完遂を指示する。ニコの処刑一択だ」
ずっと傍観していたシモンが口を挟む。
ティアは隣にいたゼノビアと顔を見合わせる。
「ニコが『霊媒師』真でしょう?」
「ミレイユが襲撃された時点で簡単じゃない?」
ゼノビアがこちらに視線を向けながら頷きながら言った。
「ジノとルミナが残りの人狼でしょうよ」
「ジノを処刑しましょ」
「……同意だ」
「私も」
激しいヘイトがジノへ向き、ルミナが立ち上がって必死で大声で叫んだ。
「ダメです! 『霊媒師』ローラー完遂ですって!」
(ゼノビアとニコ、そしてロルフとティアが俺の処刑に賛成したら、もう覆せない)
(万事休すか──)
「……僕が柱をする」
「!」
「シモン、お前何言ってる?」
「こうするしかない。君達を守るには、僕が柱するしかないんだ」
「2分の1だ。この意味が分かるな?」
「……分かる」
「必ずGJを出すんだ。それで勝てる」
「ここでジノでなく、シモンを処刑しろって?」
ロルフが異論を唱える。
「……シモンを処刑する位置が分からない」
不安そうにルミナがジノを見つめている。
「処刑はジノでいいだろ?」
シモンの柱発言があっても、ロルフがゴネ始めて話が停滞する。
「……柱するって言い出す時点で、シモンが『人狼』はないんじゃない?」
丸眼鏡のティアが首を傾げ、ゼノビアが同調する。
「ジノ処刑でいい」
「ジノ様!」
ルミナが目に涙を溜め、ふるふると首を横に振る。
「あぁ、もう僕が人狼なんだよ!」
シモンが立ち上がった。
「もう降参だ、早く処刑してくれよ」
(……シモン!)
ジノとルミナはシモンを凝視した。
シモンが真っ白で唯一の真っ当の村人だと分かっている。
「……正体をばらしたなら、処刑ね」
ニコが静かに言った。
その日処刑されるのはシモンになった。
別室に連れて行かれる際、シモンがこちらを見つめて笑いながら言った。
「負けたら、絶対許さない」
(目が笑ってなかったな)
シモンを見送って、ルミナが駆け寄って来た。
「ジノ様、どうしてシモンさんが柱なんか」
シモンが処刑されたことに、納得がいっていない様子だ。
「シモンは俺達が潔白なのを信じてるからさ」
「そうでもしないと、俺が処刑されていた」
ルミナはサッと血の気が引く。
「いいか? 2分の1だ。この意味が分かるか?」
「シモンが処刑され、村人は俺と姫さん、そしてティアとロルフの4人だ」
「大して『人狼』はニコとゼノビアの2人」
「まだ村人の方が多いが、あのアホどもは、俺達が村人だと信じてない」
「『人狼』達は、残り人数が4人になれば飽和だ。まだ村人は4人残ってるから」
「今日ティアかロルフが必ず襲撃される。だからシモンは2分の1だと言ったんだ」
「あっ!」
ルミナは気付いたようだ。
「私とジノ様は黒塗りされているからですか?」
「そうだ」
「GJを起こせとはそういうことで、もしGJを起こせば、真『騎士』が生きていることを、あのバカ達にも嫌でも分からせられる」
「つまり『騎士』が生きている事実があるだけで、ゼノビア達は終わりなんですね?」
ジノは何度も頷いた。
「だから今夜が正念場だ。外したら俺達の負け」
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