男は盤面の謎を解きたがり 女はただ自分だけを見てほしがる
ルミナはリネットの処刑が余程ショックだったのか、終始元気がない。
その日の夕食は、いつもより更に味気ないものになった。
「実際に死ぬ訳じゃねーから……」
「……はい。でもリネットは真『占い師』なのに」
「でもリネットは最後の一人をちゃんと見つけてくれたんだ」
ジノはサッと頭の中で整理する。
「生き残っている村人は、俺と姫さん、そしてシモンとヴォルフとロルフとティアの6人」
「人狼側はもう、ニコとゼノビアだけなんだ」
それでも、村人が人狼側に加担している現状はかなり厳しい。
(村でまともな奴がシモンくらいしかおらんからな……)
「人狼ゲームって難しいんですね……」
「そうだな」
(どう見ても『騎士』は姫さんな気がするんだが)
「俺と姫さんは黒塗り位置だから噛まれないとして……」
「シモン、ヴォルフ、ロルフ、ティア」
「今夜、襲撃されるのはこの中からだと思う」
「はい」
(姫さんが真『騎士』なら、GJさえ出せばゼノビア達を追い詰められる)
「ジノ様は誰を護衛するつもりなんですか?」
「……まともな村票を維持するなら、シモン一択だ」
ルミナの顔がパッと輝く。
「ですよね! シモンさんしか護衛位置ないですよね……」
(やっぱり姫さんの護衛位置はシモンか)
「シモン以外は、俺達に縄を寄せかねない」
「本当に分かって貰えないのはきついです」
人数が徐々に減り、食事をするダイニングルームも閑散としていた。
既に席は自由になっていた。
ゼノビアはニコとティアと行動を共にしている。
ヴォルフとロルフが一緒に食事をし、そしてシモンは誰からも距離を置き一人でいるようだった。
ふと目が合うと、シモンはニヤリと笑った。
(ん?)
その笑った顔が、誰かに似ている気がした。
「ジノ様?」
「あぁ、なんでもない」
「リネットがいなくて、寂しいですか?」
「静かになったな、とは思うが……」
(リネットは同陣営だから、処刑されたのはめちゃくちゃ痛い……)
ルミナは複雑な顔をしている。
「……あの、ジノ様」
「この試合に負けたら、ジノ様の試験の結果って……」
「負けた時点で、次期塔主の話はなくなるだろうな」
「絶対に勝ちましょう」
食い気味にルミナが言った。
(ジノ様が塔主にならなきゃ、結婚の話が流れてしまう……)
「そうだな。リネットの為にも絶対勝たないとな」
「……」
食事を済ませて部屋に戻る時も、心なしかルミナの機嫌が悪い気がした。
(やっぱり、リネットを助けられなかったことに怒ってんのかな?)
(でも、あれ以上はどうにも出来なかったしなぁ)
ルミナを部屋の前まで送ったところで、踵を返す。
「それじゃ」
「ジノ様、待って下さい」
いつになく真剣な顔をしている。
「私の部屋で、時間まで一緒にいてくれませんか?」
(相談事は終わったし、特に話すことは……)
「うん? 時間ギリギリまで相談するか?」
ルミナは膨れっ面で、そっぽを向いた。
「もう!」
「?」
ルミナは部屋のドアを開けると、ジノの手を引っ張って中に連れ込んだ。
部屋の中は静かだった。
ルミナはジノを連れ込んだはいいものの、何から話せばいいのか分からなくなっていた。
「……で、相談とは?」
「相談じゃないです」
「じゃあ何だ?」
ルミナはジノをまっすぐ見つめた。
「ジノ様に、絶対に勝って欲しいんです」
「……さっきも言ったろ」
「違います」
ルミナは俯いて、小さな声で続けた。
「リネットの為じゃなくて……私の為に、勝って下さい」
「お前の為?」
ジノは本気で首を傾げた。
「……理由を聞いてもいいか?」
「……」
ルミナはギュッと自分のドレスの裾を握りしめ、それ以上何も言えなかった。
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