処刑台に上がる前に女の嫉妬で胃に穴が空く奴の気持ちも少しは考えてほしい
昼食はビュッフェで立食スタイルだった。
様々な肉料理、麺類、スープ、野菜、そしてデザート類。
(コース料理よりマシだな)
ここぞとばかり、肉料理ばかり取る。
野菜はスルーした。
「ジノ様」
振り返るとルミナが笑顔で盆を持って立っている。
料理がてんこ盛りだった。
(めちゃくちゃ食う気じゃねーか……)
ルミナはサラダにフォークを突き立て、それを自分で食べるのかと思いきや、
「はい、ア〜ン!」
「は?」
「野菜もちゃんと食べないとダメです」
「いや、俺は……」
ルミナは笑顔を崩さず、口元にレタスを押し付けてくる。
「おい、待てって…」
「ア〜ン!」
とにかく圧が凄い。
ジノは押し切られ、仕方なく口を開けた。
ルミナはとても満足そうに、次の一口を準備する。
周囲の視線が痛い。
──ルミナは全く気にする様子はない。
「自分で食えるから!」
「ちょっと!」
リネットが小走りで近寄って来た。
「何を小っ恥ずかしいことを姫様にさせてんの?」
「いや、俺は別に……」
(どう見ても、俺が無理矢理食わされてるだろ……)
「ジノ様がお肉ばかり取るので、野菜も取らないとダメだと思って」
そう言いつつ、フォークに刺したトマトを口に押し込んできた。
その様子を見て、リネットが突然声を張り上げた。
「あっ、私ちょっと料理取り過ぎちゃって、良かったら、あんた食べてくれない?」
と言いながら、こっちは大きな肉の塊を口の中へ押し込もうとする。
(ていうか、これローストビーフの塊じゃねーか)
「先に野菜を食べるんです」
「順番なんかどうでも良くない? ジノは野菜より、お肉食べたいでしょ?」
(いや、一人で食べさせてくれよ……)
「……随分と余裕がおありなのね、色男さんは」
背後から現れたのは、イリスだ。
「女性を二人も侍らすなんて、良いご身分だこと……」
「別に、私はそんなのと違うわ!」
即座に反論するリネット。
「あら、あなたはまるで相手にされてないようだけど」
「何よ!」
完全に棘のあるイリスの言い方に、一触触発の雰囲気だ。
「何が言いたい?」
イリスはフフンと鼻で笑った。
「精々好き勝手にやればいいわ。明日処刑されるのはきっとあなたよ」
「……」
「それ以上は辞めてください。聞いていて不愉快です」
ルミナが苦言を呈すると、イリスは一瞥してその場を去っていった。
「やっぱり、あの女突っかかってくるわね」
「ジノ様の処刑を強く提案してましたからね」
(お前らさっきまで微妙な雰囲気だったのに……)
「取り込み中のところ、申し訳ないんだが……」
振り返ると、栗毛のパーマ男が立っていた。
(こいつは確かシモン。フェリクスの処刑を真っ先に推していた)
「少し君の意見が聞きたい。ジノ君」
「良いだろう。場所を変えるか?」
シモンは辺りを見回し、首を横に振る。
「いや、聞かれても構わない内容だし、彼女達にも聞いて貰いたいし」
「僕は『占い師』はリネットを真で追っているので、フェリクスが人狼だと信じてる」
これにはリネットは得意げだ。
「あなたは分かってる人だわ」
「処刑で人狼が一人吊れたと考えて、残り二人だが……僕は『霊媒師』のどちらかに人狼だと考えている」
「俺も同じ考えだ」
シモンは少し、ホッとしたような顔を見せた。
「おそらく明日は『霊媒師』の結果に関わらず、『占い師』が人狼を見つけられない限り、役職ローラーになると思ってる」
「イリスも言っていたように、君も処刑される位置だ」
「ジノ様は本物の『騎士』です!」
ルミナが強く主張した。
「……うん。僕もジノ君を真で見ているけど、村目線、ダグラスが『騎士』の可能性がないとは言えないからね……」
(その場合、俺とフェリクスが人狼同士で対抗に出るという暴挙になってしまうが……)
(実は戦略としてはありっちゃありなんよな……)
「君は分かってると思うけど、役職はほぼ襲撃されない」
ジノは頷いた。
「護衛位置は良く考えて欲しい。GJが出れば君の真が確定するから」
「分かった」
「それでは、失礼するよ」
シモンはその場を去り、すぐにリネットが小声で囁いた。
「あの人、要は護衛してくれって言いたいの?」
「まぁ、あいつは確かに襲撃位置ではあるが、フェリクスを真っ先に吊り推ししていたので、噛んだら露骨だな」
「あっ」
ルミナが小さく声を上げた。
「どうしたの? 姫様」
「どうしてイリスさんが、ジノ様を目の敵にしているのか考えていたのですが」
「ダグラス様を守って貰えなかった悔しさとかもあるのでしょうか?」
「……いや、そんなことはないな」
ジノに真っ先に否定され、ルミナは俯いた。
「でも、そういう視点を持つのは悪くはない」
そう言われて、ルミナはパッと顔を上げる。
「あいつらは明らかに顔見知りだった。初日に知り合いを失くすのは、まぁ心細くもなるだろう」
「俺が『騎士』の対抗に出るのが遅かったことは事実だ。それはあの女の指摘通りなんだ」
(そして俺が本物の『騎士』でないことも事実なのだから──)
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