騎士を殺すのに刃物はいらねー、疑心暗鬼という名の毒があればいい
処刑されることになったフェリクスは、速やかに別室へ連れて行かれてしまった。
その背を見送りながら、ジノは呟いた。
「たとえ自分が処刑されても、自分の陣営が勝てばいいだけだしな……」
「そうだとしても、私はジノ様に死んで欲しくないです」
ジノはルミナを見つめた。
「私がジノ様を……」
「姫さん、お前……」
「ちょっと!」
二人の間に割って入るように、リネットが声を掛けてきた。
「ジノが『騎士』ってんなら、あんたすぐ襲撃されちゃうわよ!」
「……てか、移動するぞ」
ジノは辺りを見回し、人目を避けて屋敷の外に出た。
裏に大きな温室があり、迷わずその中へ入った。
南国でしか育たない花が咲き、生い茂る木には実がなっている。
他には誰もいなかった。
「こんなところがあったんですね……」
「一応、屋敷内の設備は自由に使っていいらしいからな」
リネットは少しイラついていた。
「フェリクスが人狼なんだから、『騎士』だと名乗り出たら次に襲われるに決まってるでしょ!」
「だから、襲われねーって……」
「どうして?」
ジノは二人をベンチに座らせると、一息ついてから説明し始めた。
「リネット目線、フェリクスは黒だ」
「うん」
「つまり、人狼のフェリクスが『騎士』は絶対にない」
「だから、あんたが『騎士』なんでしょ?」
ジノはそれには答えずに話を続けた。
「今、『霊媒師』が二人いるだろう?」
「一応、昨夜襲撃された奴……あいつが『霊媒師』の可能性もゼロじゃないが、その場合、『霊媒師』の内訳が、人狼と狂人になってしまう」
「それだと『占い師』の内訳もおかしくなるだろう? だから、今お前の対抗の内訳は、狂人か人狼ということになる」
「つまり」
「『霊媒師』と『占い師』の対抗に、狂人と人狼、もしくは人狼と人狼。おそらく前者の組み合わせで、俺の予想では、『占い師』に狂人、『霊媒師』に人狼と見てる」
「ちょっと待って」
リネットは必死にメモを取っている。
「人狼残り二人のうち一人は『占い師』と『霊媒師』に出ているから、お前は残りの一人をグレー位置から占いするべきだ」
「……分かった」
頷きつつ、何だか話をすり替えられている気がして、リネットはモヤモヤした。
「……って、それでどうしてあんたが襲われないって話になるの?」
「露呈した『騎士』は襲撃されるのが当たり前でしょ?」
「私も気になります。どうして襲われないと断言出来るのか」
ルミナも目を輝かせ、前のめりになって聞く。
「答えは出てるよ。『霊媒師』が二人いる時点で」
「?」
「『霊媒師』の二人のうち片方は偽、フェリクスの結果を必ず割ってくる筈だ」
ジノはニヤリと笑った。
「人狼は今夜俺を襲撃してしまったら、リネットが真、そして霊媒師がいなくても、フェリクスが人狼だと誰の目線からでも分かる」
「あっ!」
流石に二人にも理解出来たようだ。
「同様に真の『霊媒師』を襲撃しても、リネットを襲撃しても、フェリクスが人狼という事実は確定する。そうなれば、残った偽物の処刑は免れない。だから俺は襲われないと言ったんだ」
「人狼陣営は、フェリクスの処刑で一人減り、残り3人しかいない。反対に村人側は、9人残ってる」
ジノは頭の中でサッと計算をした。
「今日襲撃されて減っても、明日8人か。残り3縄だな……」
「3縄て?」
「残り3回処刑するってこと」
「全然楽勝じゃない?」
「いや、そうでもない」
「残り3回で人狼を処刑し切らないとダメって意味でもあるんだぞ?」
二人は絶句した。
「もう狂人は露呈してるから、これから襲撃されるのは村人でしかない。村人は確実に減る」
(それに、俺を噛まない時点で霊能結果が割れれば、誰かが俺の処刑まで必ず提案してくる)
「つまり、ゲームはまだどうなるか分からないってことですね……」
ルミナの言葉が全てだった。
「まぁ、俺達が全員同じ陣営と分かっただけでも良しとしよう」
二人は強く頷いた。
「そして明日の『霊媒師』の結果で、どちらが真なのか分かる」
「クラリスさんと、ニコさんでしたか」
ルミナは二人を思い出す。
(確か先に『霊媒師』と名乗り出たのはクラリスさん。ニコさんはかなり戸惑って後から名乗り出た気が……)
「リネット、明日のお前の占い結果は大事だ」
そう言われ、リネットが姿勢を正す。
「任せてよ、二日連続で人狼を当ててやるから!」
「お、おう……」
(明日になってみないと分からないこともある。とりあえず今夜の襲撃を見て、明日の状況に任せるか……)
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