人狼ゲームの朝食はパンがおかわり自由でも喉を通らない
ゴーーーーン!
起床を知らせる鐘が鳴り、ジノは目を覚ます。
身支度を済ませて部屋を出ると、既にルミナが部屋の前で待機していた。
「おはようございます!」
「お、おう……」
(なんかやけに張り切ってないか?)
丁度その時、隣の部屋のドアが開き、リネットも顔を出した。
「あ、おはよう」
「朝食の後で、今日の話し合いなんだよね?」
「そうらしいな。とりあえず飯行こうぜ」
三人で連れ立って歩いていると、廊下の向こうから金髪の若い娘が真っ直ぐこちらへ向かって来た。
(確かイリスとかいう名前だったか)
不安そうな眼差しで、早口で捲し立てる。
「ねぇ、あなた達、ダグラスを見てない?」
「ダグラス?」
「ほら、昨日夕食の時に、あなたの向かいに座ってた彼よ」
「……知らん。見てない」
「そう」
女は足早に去って行った。
「何なの? あれ」
「知り合いがいないとなれば、心配するのは当たり前じゃないでしょうか?」
「ダグラスって奴、ひょっとしたら……」
昨晩の犠牲者が彼なのかもしれなかった。
だからといって、もうどうすることも出来ない。
三人はそのままダイニングルームへ向かった。
昨夜の通りの席につき、全員が揃わないのに執事からアナウンスが入った。
「皆様、おはようございます。昨夜、人狼の仕業と思しき被害が発生してしまいました」
「被害者はダグラスさんです。自室で無残な遺体で発見されました」
人々はざわめいた。
(やっぱり、やられてたのか……)
所詮はゲームなので、皆、本当にダグラスが死んだ訳ではないことは承知の上だ。
ジノは向かいの空席を眺めながら、食事を摂った。
(焼きたてのパンは美味いな……)
オムレツにサラダとスープ、そして焼きたてのパン。
パンは山から取り放題で、おかわり自由だった。
そんな中、イリスはずっとジノを睨んでいる。
ルミナはそんなイリスの視線にいち早く気付いていた。
(何なの? 非常に不愉快だわ……)
食事が済むと執事に誘導され、2階のダンスホールへ移動となった。
椅子が円を描くように設置されている。
(いよいよ、ここで話し合いの開始か)
「それでは只今より、話し合いを行なって頂きます」
「昨夜、ダグラス様が人狼によって殺害されました。皆様の中に、人狼が紛れ込んでいます」
「話し合いで、人狼だと思う人物を一人上げ、夕刻までに処刑して下さい」
テンプレ通りのアナウンスの後、いよいよ話し合いが始まった。
「あの……」
リネットが話し合い早々、挙手をした。
「リネットさん、どうされました?」
執事に尋ねられ、リネットが答える。
「ええと、私は『占い師』です。昨夜、フェリクスさんを占いして、『人狼である』と結果が出ました」
「!!」
(いきなり黒結果を出してきたのか!)
「待って下さい」
冷静な声が響いた。
昨夜談話室にいた、ミレイユという女性だ。
「私が本物の『占い師』です。昨夜、同じくフェリクスさんを占いし、『人狼でない』と出ました」
「結果が割れた……」
「どちらかは嘘を付いている!」
「僕目線、リネットさんは偽物だね」
フェリクスが立ち上がった。
「何故なら僕は『騎士』だから」
この宣言に、ホールはかなりざわついた。
「嘘よ! あなたは『人狼』だわ」
リネットが大声で叫ぶ。
(こいつが『騎士』だと? リネットが本物なら、本物の『騎士』は潜伏しているか、昨夜殺されたダグラスってことになるが……)
「他に『騎士』がここにいるのかい? いる訳がない。僕がティアを守ったんだ」
フェリクスは得意げに語り出す。
「……私を守ってくれたの? 嬉しいな」
丸眼鏡のティアが素直に喜んだ。
「そうさ。僕が『騎士』なんだから、僕に黒を出したリネットさんは偽物ってことになるよね?」
「だから僕は、リネットさんを処刑したいかな」
ここで、ルミナが震えていることにジノは気付いた。
何か言いたげにしている。
(姫さん、まさか……?)
リネットはフェリクスを鋭い目つきで睨んでいる。
ジノは溜め息をついた後、はっきりと声に出した。
「そいつは偽物だ」
人々の視線がジノに集まり、悠々と席を立ち宣言した。
「俺が『騎士』だ。だからそいつを処刑しろ」
「護衛先はルミナだ」
──これは一種の賭けだった。
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