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前髪を下ろして目を隠す奴は、大抵隠しきれないくらいの色気かヤバイ秘密を抱えている

島に上陸すると、水の竜は消え去った。

そして真っ先に小高い丘に建つ洋館が目に入る。


濡れてから(しばら)く経つが、体はすっかり冷え切っていた。


「さ、寒い……」


ルミナは震え、唇は紫色になっている。


(まずいな、まずは服を乾かさないと)


「見て、あそこ!」


洋館を指差し、リネットがこちらを振り返る。


「あそこに行きましょうよ!」


「いかにもって感じだが……」


ジノは半分呆れつつも、すぐ目の前に生えている木に向かって魔法を飛ばした。


木がバラバラに切断され、枝や葉が無残にも散らばる。


「あんた、何してんの?」


丸太や枝を魔法であっという間に組み上げた。


「先に服を乾かすんだよ」


そして一気に魔法で火を付けた。


「……デカすぎでしょ」


リネットが呆れたように呟いたが、ジノは意に介さない。


「姫さん、こっちに」


体温のすっかり下がったルミナを呼んで、まず火に当たらせる。


「服を脱いで乾かそう」


「!」


その場でジノは服を脱ぎ始めた。


それを見てルミナは一瞬、躊躇(ためら)うも、自分もケープを外し、上着に手を掛ける。


(濡れてて上手く脱げないわ……)


袖口を引っ張ってやると、ようやく脱げた。


「……ちょっと!!」


リネットは呆気に取られた。


「あの屋敷が見えないの? 今は一刻も早くあそこへ行くべきじゃない?」


「あそこが安全な場所って保証がない」


上半身裸になったジノは、ルミナの上着を丁寧に火の側へ広げてやる。


「ちょっと、姫様に何してんの!?」


文句を言いつつ、リネットは裸のジノに目がいってしまう。


細いが、均整の取れた引き締まった身体(からだ)。割れている腹筋が美しい。


(モヤシだなんて、言ってた自分が恥ずかしいわ)


「大丈夫か?」


「……はい」


座って寄り添う二人はまるで恋人同士のようだ。


そしてそれが、無性に腹立たしかった。


(姫様があいつを好きなのは、分かってはいたけど……)


自分をいとも簡単に負かした男。


圧倒的な魔力を持ち、王女に慕われる男。


──そして美し過ぎる男。


(あのダダ漏れの色気は何なの?)


「お前も乾かせよ……」


唐突に言われ、リネットは我に返る。


「私は平気よ! ……クシュン!」


「ほら、言わんこっちゃない」


「……」

リネットは下着だけになると、二人から少し離れて座った。


こっそりジノを盗み見る。


(真っ赤な瞳って初めて見た)


(──って、赤い瞳って確か)


かつて読んだ本に記載されていたことを思い出す。


(赤い瞳って、魔物の色じゃない!!)


(一体、あいつは何者なの……?)


そうして焚き火の側で、三人は(しばら)く過ごした。


あたりが暗くなり始め、(ようや)くジノは腰を上げた。


「そろそろ行くぞ」


すっかり乾いた服を着ると、前髪をまたくしゃくしゃして、下ろしてしまう。


「やっぱり、目の色を気にして隠すの?」


「それもあるが、俺の顔ばっかり見てくる奴もいるからな」


「えっ!?」


(こっそり見てたの気付かれてたんだ……)


「姫さん、あそこの洋館まで歩けるか?」


「……大丈夫です。頑張ります」


(これ以上、ジノ様の手を(わずら)わせる訳には……)


しかし、その足元は覚束(おぼつか)ない。


「無理そうだな」


ジノはルミナをひょいと抱き上げた。


「ジノ様、私歩けます!」


「巻き込んだのは俺だから」


そう言われると、ルミナは何も言えない。


(足を引っ張ってしまっているのに……ジノ様にこうされるのが嬉しいと思ってしまう)


甘んじて、抱き抱えられるのを受け入れる。


「リネット、付いて来い」


「私に命令しないでよ!」


洋館の窓に明かりが灯り始めた。


──たとえそこで何が起ころうと、向かわない訳にはいかなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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