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前髪かき上げてイケメンになるのは二次元の特権だが、本人はただ視界を確保したいだけだったりする

ルミナの頬を叩いて、何度も呼びかけるが意識を取り戻す気配がない。


「……そんな! 姫様が」


動かないルミナに、リネットはどうすることも出来ず、ただ狼狽(うろた)える。


「ねぇ、どう……」


その時、ジノは濡れた前髪を無造作にかき上げた。


「!!」


リネットはこの時、初めてまともにジノの顔を見た。

水の滴るなんたらとはまさにこの事。


(顔に自信がなくて前髪長くしてたんじゃ……)


「……水を飲んでいるな」


ジノはルミナの肺の辺りで魔力を込め、体内から水を吸い出す。


しかし顔は青ざめたまま、呼吸がない。

ジノはルミナの鼻を摘むと、口から息を吹き込んだ。


「……ちょっと! あんた何してんの!!」


それを見て、リネットは仰天した。


意識のない王女に、(おそ)れ多くもキスをしているのだ。


「じゃあ、お前がやるか?」


そう言いつつ、ジノはルミナの胸元を両手で何回も押し始めた。


「なななな、なんてこと……!!」


(キスして、胸まで触るなんて!!)


リネット驚きのあまり()け反った。

ジノは気にせずに、そのまま息を吹き込む。

それを胸の圧迫と合わせ、ひたすら繰り返した。


「うっ……ゴホッ、ゴホッ……」


ルミナが一瞬むせて、咳き込む。


「姫様!!」


リネットが半泣きになりながら、声を上げる。

まだ意識が朦朧としているルミナに、ジノは声をかける。


「大丈夫か?」


ゆっくり開く睫毛。

ルミナの視界にジノが映る。


「……ジノさま?」


「姫様、良かった〜!!」


「姫様、こいつが姫様にとんでもないことを!」


「とんでもないこと?」


ルミナが聞き返すと、リネットは興奮した様子で、


「姫様に何度もキスしてたんですよ〜〜!!」


「……えっ?」


顔をみるみる赤くしてルミナが口籠った。


「…………」


(だから目を覚ました時、ジノ様の顔が近くに……)


「めちゃくちゃディープなやつ」


リネットはジノを横目で見る。


(ていうか、モヤシの癖に顔が良過ぎるでしょ!)


「……そんな、えっと、私は別に気にしてませんから!!」


恥ずかしさでルミナはしどろもどろになった。


「あれはそんなんじゃない。助けようとしてたんだ」


「……息も止まってた。俺が息を吹き込まなきゃ、姫さんは助かってない」


「私は助けられたんですね」


ルミナは小さく頷く。

ジノはどんよりと曇った空を見上げて言った。


「とにかく、こんな所には長居は無用だ」


竜の背に乗って移動を開始する。


(それにしてもこんな竜を出して、ケロッとしてるコイツは何なの?)


リネットはジノの無尽蔵な魔力に改めて驚いていた。


ジノの魔法で作り出した竜は、水面ギリギリを滑るように泳ぐ。


ひたすら真っ直ぐ進むと、やがて前方に島が──。


「あそこに上陸する」

更新遅れました。

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