二択のドアで迷った時はとりあえずムカつく身内の使い魔をぶん投げればいい
落ちた部屋はさほど広くはなく、大量の虫を処理すると、いかにも怪しい鉄製の錆びたドアが現れた。
「次の部屋かしら……」
リネットは肩で息をしている。
開けるのを躊躇っていると、ジノが背後から声を掛けた。
「俺が先に行ってやろうか?」
「結構よ」
虫を処理したのはリネットなので、優先的に進むべきなのはリネットだ。
ジノ達は一歩下がって様子を見守る。
リネットは意を決してドアを開いた。
次の間は、四方を石壁で囲まれた6畳程の広さ。
前方の壁に赤いドアと青いドア。
どちらかを選択して進むのだろう。
「これ、どっちか当たりでどっちかハズレとか?」
「そんな感じだったら嫌だな」
三人はドアの前でひたすら悩む。
「ジノ様、どうなさいますか?」
「うーん、姫さんどっちにする?」
ジノは少し考えて、懐からネネを掴み出した。
「何よ! 私は何も教えないわよ」
「お前ちょっと様子見して来いよ」
「は?」
ジノはいきなり青いドアを開けた。
ドアの向こうは水の膜が張ったよう波打っている。
「ちょ、ちょっとまさか……?」
「ジノさん?」
ジノの口角がニッと上がり、ネネは悪寒が走る。
勢いをつけ、ネネをドアの向こうへぶん投げた。
「えーーっ!!」
と同時にゴボボッと水に呑まれる音。
(……こいつ、やっぱりえぐい)
リネットは呆れつつ、ジノを見つめる。
暫く、ドアを開けたままにしておくが、ネネが戻ってくる様子がない。
「……よし、赤の方へ行くか」
ジノは迷わず赤のドアを開けようとする。
これにルミナが慌てた様子で、
「ジノ様、ネネちゃんを待たなくていいんですか?」
「……うーん、あいつ戻って来ねーし?」
「この人でなし!! あんたそれでも勇者なの?」
リネットがジノに食ってかかる。
「今は勇者じゃなくて魔導士の選抜試験中だろ……」
「ていうか、ネネはジークの使い魔なんだから、滅多なことにはなんねーよ……」
「ひょっとして、戻って来れないのでは?」
ルミナは心配そうに青のドアの前から動かない。
それを見て、ジノは溜め息をつく。
「……分かったよ。そっち行けばいいんだろ」
(まぁ、中に入ってクリアするまで戻れない仕様なら、どうしようもないし……)
青いドアの前に立つジノに向かって、リネットが言う。
「……本当にそっちに行くの? なんかヤバそうだけど」
「どの口が言うんだ? 人のこと人でなし言っといて……」
「……」
「お前は別に赤の方でも良いんだぞ?」
ジノにそう言われ、リネットは何だか悲しくなった。
「私も一緒に行く」
ジノは当たり前のようにルミナの手を握り、リネットを振り返って言った。
「それなら俺から逸れんなよ。近くにいなきゃ、フォローしてやれない」
「分かった」
ジノは青いドアの表面の膜にスッと手を入れる。
感触を確かめてから、指示を出す。
「この先は水の中だ」
ルミナの顔色がサッと変わった。
「ジノ様、私泳げません……」
「肺に出来るだけ空気を入れて、中に入ったら息を止めろ」
「俺がどうにかする」
「お前は?」
リネットは聞かれて、首を縦にふる
「平気よ」
目配せをしてから、ドアの中へ。
身体を圧迫する水圧を感じながら、やはりここが水中だと気付く。
水の透明感はかなり低く、底は暗い。
ルミナが身体にしがみつき、思うように泳げない。
とにかく浮上しようとするが、どれだけ泳いでも水面に出そうにない。
(赤のドアが正解だったのかもしれない)
そのうち、ルミナがもがき始めた。
ゴボッと息を吐いて、とうとう気を失った。
一方のリネットは魔法で推力を発生させ、水面に向かって強引に上昇を始めた。
元来た方に戻るにも青いドアの入り口は消えていて、
ジノはどうするべきか悩む。
一刻も早くルミナの為に、空気のある場所へ行く必要がある。
(仕方ない)
ジノは魔力を練って、周囲の水を操る。
大きな竜を作るとそれに乗って一気に上昇した。
すぐさまリネットに追いつき、ジノはルミナを抱えた反対の手でリネットを回収した。
水竜に乗ってそのまま水上に出て、ジノは気を失っているルミナに呼びかけた。
「おい、しっかりしろ」
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