選抜試験の入り口は、誰かの安眠(墓)の先にある
瀕死のゴブリンをルミナが治療し、適正価格で物資の販売をすることで落ち着いた。
「もうコリゴリゴブ……」
ゴブリンは涙目で去って行った。
長い道のりを歩ききり、ジノ達は漸く次の駅に到着した。
魔導列車を乗り継ぎ、一気に首都まで強行した。
首都は雪がチラつき、寒さが一層厳しい。
王城を中心に、高い尖塔が複数聳え立つ。
(いかにも、アイゼンガルツらしい街並みだな)
駅まで王宮から馬車が迎えに来ていた。
「王宮へは予定通り、私が行く」
「姫様が帝国内に来ていることは、まだ秘密だからな」
ルカが予定通り、王宮へ大使として向かった。
そのまま双子もルカに付き添う。
三人で縁談の答えをなるべく引き延ばす予定だ。
「姫様をくれぐれもよろしく。何かあったらただじゃおかない」
ルディに耳元でそう囁かれた。
(相変わらず俺に厳しいんだよな)
馬車を見送って、ジノ達は魔導の塔へ向かうことに。
選抜試験が開かれる魔導の塔は、王宮の目と鼻の先にある。
ジノとリネット、そしてルミナも一緒に向かう。
実は試験の間、ルミナをどうするかが問題になった。
その際、ネネが耳寄りな情報を落とした。
「魔導の塔が、帝国内で一番安全よ〜」
「歴代の塔主が結界かけまくってるから、まず壊れないの〜」
ネネのこの一言で、ルミナの同行が決まった。
そして三人と一匹は、魔導の塔へと辿り着く。
「結構遠いじゃない。馬車に乗れば良かった」
足が棒になったリネットがぼやくが、時既に遅し。
魔導の塔の入り口は、固く閉ざされていた。
門番もなく、呼び鈴らしき物もない。
広大な敷地にポツンと建つ塔はどこか寂しい。
「おい、これでどうやって入るんだ?」
懐のネネを掴み、問い質す。
「どうしてここが入り口だと思うのよ?」
「えっ?」
(ひょっとしてここから入る訳じゃないのか?)
「これ以上は言えないわ」
「ねぇ、もう試験が始まってるとか?」
リネットは塔の周りを色々と調べ始めた。
固く閉ざされたドアも注意深く観察する。
高い塔を見上げる。
外階段みたいな物もなく、完全にお手上げだった。
「流石に試験が始まっていることはまだないかと」
ルミナが冷静に分析をする。
「ヒントは既に出てるんだよな」
(魔導の塔は帝国内で一番安全、重ねがけの結界……)
ジノは神経を集中した。
折り重なった僅かな魔力を感じた。
それは塔からではない。
魔力を感じる先、塔の裏手に回るとそこは墓地だった。
古い墓石の間を抜け、一番奥の大きな墓の前に建つ。
「ジノ様、このお墓は?」
「多分ここが入り口かと」
念の為、ルミナに向かって左手を差し出す。
「ほら」
少し照れながらも、ルミナがその手を握る。
ジノは右手で墓石に手を触れると、景色が反転した。
「やっと来た〜」
呑気な声の主人は言わずもがなだ。
広い石造りのホールは声がやたら響く。
「魔導の塔とか言ってて、塔じゃねぇじゃねーか」
「いや塔は塔だよ? 塔は実際に建ってるだろう?」
「屁理屈にしか聞こえないんだが」
やけに圧迫感があると思いきや、このホールには窓がない。
「ジーク様、こんにちは」
「姫様も来たのか。どうぞ歓迎するよ」
ジークは恭しくルミナに頭を下げた。
「てか墓石が入り口とか趣味悪くね?」
「初代塔主の意向なんだから仕方ない」
(そういや、リネットを置いて来てしまったな)
「そもそも、ここの入り口が分からないと、試験には参加出来ないなぁ……」
「墓石が入り口だって、誰かの口から漏れたりしねーのか?」
「この塔に悪意を持って侵入しようとする者は、そもそも結界すら抜けられないから問題ないんだよ」
「歴代の塔主の魔法が効いてるからな〜」
ジークは何処か他人事だった。
(割とちゃんとしてんだな)
「それで、選抜試験とかどうすんだ?」
「参加者は結構集まってる。さて、試験会場に案内しようか」
「ちょっと待ったーーーー!!」
その時、丁度空間のうねりが起こり、リネットがそこから飛び出すように現れた。
「私のこと、完全に置いて行こうとしてたでしょ」
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