『服を返せ』という正当な主張も、場所と格好を間違えればただの変質者だ
とうとう姫と遭遇しちゃいました。
混浴とか絶対無理ですよね。
村の奥にある温泉は、ちょっとした穴場だ。
まず森の中に普通にモンスターが湧くので、一般人は敬遠する。
それを隠れ蓑に、ジノは温泉を独占していた。
まずは川に入り、返り血をここで洗い流す。
服を脱ぎ、川で軽く洗ってから、そのまま温泉へ。
「……ふぅ」
一息ついて、王女と聖剣の問題を思い出す。
「結局行かなかったが、流石に諦めて次に行くだろう……」
「!」
──誰か来る?
足音を聞き付けて、ジノは急いで岩の裏に隠れた。
気配を殺して、聞き耳を立てる。
「僕が見張りをするんで、姉さんは姫様と一緒に入ったらどうですか?」
「あのゴブリンを倒した奴が、もし潜伏でもしていたら? お前一人でどうにかなるとは思えん」
(……最悪だ)
チャプン、と音がして湯に浸かる王女の後ろ姿。
岩の裏から少し覗くと、月明かりの中、髪が銀色に輝いていた。
「いいお湯だわ……」
鈴の鳴るような声がした。
ここはどうにかして、やり過ごすしかない。
ジノは息を殺して、ひたすら耐える。
(…………)
(いや、長風呂か!?)
先に湯に浸かっていたジノは、ちょっとのぼせた始めていた。
(頼む、早く出てくれ……)
「あら、これは何かしら?」
(そ、それは俺の服……)
岩の上に、軽く洗った服を置きっぱなしにしたのがまずかった。
王女はジノの服をつまむと、そのまま湯から上がろうとした。
(それを持って行かれたら、俺は──!!)
ザブッ!!
「き……」
「!!」
ジノは素早く動き、背後から王女の口を手で塞いだ。
「……しっ。静かに!」
王女は小さく震え、こくこくと頷いた。
悲鳴を上げられていたら、色々面倒なことになる。
「それは俺の服なので。持って行かれたら困る」
──耳元で低く囁いた。
読んでいただきありがとうございます。
温泉や銭湯で荷物は気にしましょう。
僕は鍵付きロッカーに入れます。




