銀河鉄道は夜の闇に消え、残ったのは筋肉痛の予感だけ
「ていうか、ここ何処だよ?」
ジノは窓を開け、すっかり暗くなった外を確認する。
外気が差し込むように冷たい。
「予定停車駅を大幅にオーバーしてしまいましたからね…」
「この列車は確か首都直通ではないだろう?」
双子が話している隣で、ルカが腕を組んで考え込んでいる。
「ルディ、ルゥ」
ルカに呼ばれると同時に二人は、
「僕は車掌に問い合わせて来ます」
「私は外の様子をちょっと見てくる」
そう言って、二人とも車両から出て行った。
「暫く、お待ちを」
「……へぇ、君らは三人兄弟なんだね」
ルカがジークに頷いた。
「はい。あの双子の他に、あともう一人、国におります」
(赤毛、もう一人いるんかよ……)
げんなりするジノとは別に、ジークは違った。
「もう一人の顔も見てみたいな」
リネットはそんなジークにおずおずと話し掛ける。
「……あの、塔主選抜試験のことなんですが、私でも参加出来ますか?」
「勿論、魔導士で参加希望者なら誰でも可能だ」
それを聞いて、リネットは表情を輝かせた。
(選抜試験ともなれば、魔力の高さ一辺倒でもない筈。知性と経験もきっと必要だわ)
リネットはジノを睨みつける。
「もうお兄ちゃんだなんて、茶番はやってられないわ。選抜試験で正々堂々と勝負よ!」
「そもそも誰が参加するって……」
その時、物凄い勢いでルカに胸倉を掴まれた。
「姫様と結婚して頂かねば困る」
「……っ!」
「……姫様を、我が国を救って欲しい」
(いや、顔が近い…)
「ルカ様酷い!」
「酷いも何も、姫様の為を思うのならば」
ルカ達が騒いでいるのを尻目に、ジークは空いたルミナの隣の席にしれっと座った。
「なぁ、ジノのこと、好きなんでしょ?」
「!」
ルミナは一瞬、ジークと目を合わせて固まり、俯いてしまった。
「一回、王女って立場忘れていいよ」
それで漸くルミナは小さく頷いた。
「……大丈夫。私は味方だからね」
耳元で囁く。
「おい!」
ジークがルミナの隣にいるのを見て、ジノは焦る。
「変な真似すんなよ!」
(余計なことを吹き込まれたら困る)
ジークはジノに向かって手を振り、ニヤニヤした。
「皆さん、大変です!」
ルゥが別の車両から戻り、状況を伝える。
「……次の駅まで歩くしかないそうです」
ルカがすかさずルゥに問う。
「距離はどのくらいだ?」
「15キロ程」
一部は、その距離に愕然とする。
それを聞き、ジノはジークを使えばいいと考える。
「こいつに首都まで転移して貰えよ」
「こいつ呼ばわりとは何だ? 目上の人間に向かって……」
「そもそも私が運べる人数だって限界がある。ここに来るにも相当な魔力を使ったからな」
「それだと他の乗客はどうなるのですか?」
ルミナが不安そうな声を上げた。
「別に、歩かせたらいいだろう?」
ジノが何でもないことのように返す。
「それなら全員で歩きましょう」
ルミナは席を立ち上がり、デッキへ向かった。
戻って来たルディと丁度鉢合わせる。
「あっ、姫様」
「他の車両の乗客は、もう車両を降りてってますよ」
「私達も歩きましょう」
皆が顔を見合わせ、ルミナに付き従う。
「なかなか感心な、お嬢さんだな……」
ジークがジノに耳打ちする。
「ちぇっ、私達も歩くしかないか〜」
リネットは転移する気だったようで、面倒そうにルカ達の後に続く。
「さ、観念して私達も行こう」
ジークに促され、ジノは最後に車両を降りた。
(……どうせ、面倒なことになるんだろうな)
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