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『和平』という名のプレゼントの包装紙を剥がすと、大抵の場合『宣戦布告』が出てくる

「……畏まりました」


ルカは深々と頭を下げた。


主人であるルミナ本人が、あの青年を勇者だと認めている以上、素直に従う他ない。


「我が国は、今後もジノ様を全力で支援することとします。皆もそのように」


一堂が頭を下げ、ルミナはルゥに問いかけた。


「それで、ジノ様は?」


「えーっと、それが……」


(ジノ様を窓から突き落としたなんて、ちょっと姫様には言えない……)


「勇者様は、リネットを倒して逃走中です」


答えたのはルカの方だ。


「リネットの怪我の具合は? 私が診ます」


「命に別状はありませんが……」


ルカは兵士の一人に指示を出す。


「おい、姫様をリネットのところへお連れしろ」


案内されて、ルミナはリネットが休んでいる部屋へ。


「あんの、モヤシ男!!」


リネットは布団にくるまり、ボヤいている。


「今度会ったら絶対許さないんだから……」


「……リネット?」


鈴のような声に、リネットは飛び上がった。


「ひ、姫様!?」


ルミナが怪訝そうな表情で立っている。


「怪我の具合は……?」


「不覚にも電撃を喰らってしまって……」


火傷の箇所を見せた。

ルミナは回復(ヒール)で即座に治していく。


「……姫様申し訳ありません。誘拐犯を取り逃がしました」


「彼は誘拐犯ではありません。勇者様です」


「えっ?」


鳩が豆鉄砲を食ったように、リネットは固まった。


「えーっと……」


(あの、圧倒的な魔力で、自分を歯牙にもかけなかったアイツが勇者?)


「魔導士ではないんですか?」


「……そういえば、彼は魔導士Lv.1でしたね」


「えっ、Lv.1?」


(……冗談じゃない、あれがLv.1な訳)


「はい、治りました」


「あ、ありがとうございます」


全身に火傷を広範囲に受けたのに、回復(ヒール)でこんなに綺麗に治るとは……。


(姫様の回復(ヒール)の効果は確かに凄いけど、私への攻撃は明らかに手加減されている……)


「あのモヤシ男……いえ、勇者は何処(どこ)へ?」


「……ジノ様は、まだ戻られていません」


明らかにルミナの表情が翳る。


(姫様に心配させるなんて、何て不届きな奴なの?)


「姫様、勇者……さまの捜索を私にお任せ下さい」


一瞬の間。


「……確かめる必要があります」


「えっ?」


「……良いではありませんか。ここはリネットに任せましょう」


傍に控えていたルディが口を挟む。


「姫様は随分と心労も溜まり、お疲れですから」


「でも!」


「姫様、私にお任せを。必ず捕まえてみせます!」


「……」


リネットのちょっと違う意気込みに、ルミナは圧倒された。


「行きなさい」


ルディに(うなが)され、リネットは呪文を唱えた。


転移(テレポート)!」


空になったベッドを呆然と見つめるルミナに、ルディは何と声を掛けて良いのか分からない。


「……ジノ様が、このまま戻られなかったら」


胸の奥が、きゅっと締め付けられる。


(……嫌だ)


ジノがここに戻る保証は何処(どこ)にもない。


ましてや、捕縛命令が取り下げられたことすら知らない状態なら……。


「ジノを他の者にも探させます」


ルカ達のいる部屋に戻り、ルディがジノ捜索の話を持ち掛けようとした。


「リネットがいち早く、勇者様の捜索に出たが……」


「実は我らにはもう一つ役目が……」


ルカが面倒そうに切り出す。


「兄上、何です?」


「帝国首都の視察だ」


「えっ?」


「私達も、帝国首都を目指していたんですよ?」


「それについては、ルゥから説明は受けた」


ルカの隣にいたルゥが小さく頷いた。

そして、ルカが口にしたのはその場を凍り付かせるのに充分な情報だった。


「十中八九、帝国は侵攻の用意をしている」


「!!」


「その根拠は?」


「……秘密裏に和平の話があったからだ」


ルカは言葉を切る。

ルディは眉を(ひそ)める。


「和平……? まさか」


その場の空気が、僅かに張り詰めた。


「帝国皇太子と姫様との縁談だ」

読んでいただきありがとうございます。

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