『レベル1』は希望があるが、『ステータス判定不能』はもはやバグの領域だ
ギルドの奥の部屋に強引に連れ込まれ、ジノとルミナは、席に座らされた。
壁には黒板があり、教壇の前にリリィが立った。
「はーい、レクチャーを始めるわよ!」
「冒険者は、ギルドカウンターで新規のクエストを受けたり、クエストクリアをして報酬を受け取れます」
丁寧な説明を始めたので、ジノは途端に怠くなる。
「そこら辺の件、誰でも大概分かるから、端折ってくんね?」
「んもう、ジノたんは気が短いのねっ!」
リリィは二人にギルドカードを渡した。
「これが、あなた達の冒険者としての証明になるわ」
「ステータスとパラメータもここに記載されてるわ。カードを所持していれば、経験値を感知してレベルが上がっていくの」
「今までの経験も反映されるから、レベルはそれぞれ違うと思うわ」
「私はLv.25です」
「あら、なかなかの経験者じゃない?」
「俺はLv.1だが……」
ジノは手渡されたカードを見て、首を傾げ、隣のルミナのカードを覗き込む。
そこにはきちんとパラメータは表記されていた。
「なぁ、俺のパラメータが全部“ー”なんだが?」
「あら、おかしいわね」
「私のはちゃんと記載されてますけど……」
リリィはジノのカードを取り上げて、まじまじと見つめる。
「……ホントだわ。全部“ー”ね。壊れてるのかしら?」
「申し込み用紙と、魔法でこのカードを連携させて、最後に本人が触れる事で、登録者のデータを反映させるんだけど……」
「ちょっと待っててね」
リリィがカードを持って部屋を出て行き、ジノとルミナは顔を見合わせる。
「ジノ様、やっぱり職業が合っていないのが、マズいのではないでしょうか?」
ルミナが小声で耳打ちし、ジノは唸った。
「うーん……」
「お待たせ〜!」
リリィが戻って来て、ジノにカードを渡す。
「はい、もう一度試して」
カードを受け取り、パラメータを確認するが……。
「ダメだな」
空欄ではない。
数値の代わりに、ただ“ー”が並んでいる。
「……こんなの見たことがないわ。あ、大丈夫よ? あなたが悪い訳じゃないから!」
リリィは笑顔で話を続けた。
「とりあえず、登録は出来てるので、このまま進めちゃいましょ。後でマスターに問い合わせるわ」
(まさか自分のステータスが、カードに表記されるなんて、知らなかったな……)
「えっと、この後はチュートリアルなんだけど、簡単なクエストを受けて貰うわ」
「折角ヒーラーのルミルミちゃんがいるので、何処かのパーティに加わりましょうか」
リリィに提案され、ジノ達はロビーに戻った。
「もう時間も遅いけど、夜じゃないと出来ないクエストもあるのよ」
「近頃は、魔鉱石の採取の依頼が多くて……これは面白くないのよ」
(この話は後々調べないとな…)
「討伐クエストにしましょう! ルミルミちゃん向けのとっておきが……」
「スケルトン討伐クエスト、これにしましょう!」
「スケルトンですか?」
スケルトンはアンデッドなので、神官のルミナとは相性が良い。
「ちょっと数は多いけど、私もサポートするから平気よ!」
(こいつも参加するんか……)
ジノは思わずげんなりする。
「丁度、前衛職のクエスト参加希望の初心者さんがいるので、その子を誘うわね」
ロビーで待つこと数分。
現れたのは、およそ前衛職には向かない、焦茶色の髪をした、小柄で痩せた青年だった。
完全に鎧に着られているとはこの事で、サイズが合ってないのか、歩くのすらおぼつかない足取りだ。
「戦士のトビーです。よろしく!」
そして、何故かふんわりパンの匂いがした。
「……パン屋?」
「よく分かったわね。トビーは普段はパン屋さんなのよ!」
「……いや、そのままパン生地捏ねてろよ」
ボソッと呟くと、リリィが人差し指を厚い唇の前に立てて、
「ジノたん、シーッ!」
「……」
「こちらは魔導士のジノたん。こっちはルミルミちゃん、彼女は神官よ」
「よろしくお願い致します」
リリィに紹介され、ルミナは丁寧に頭を下げた。
「神官! ヒーラーさんと組めるなんて……」
トビーはいたく感激している。
「ヒーラーはなかなか貴重で、大概どこのパーティでも取り合いだから……」
ヒーラー不足は、常に深刻な問題のようだ。
「はい、それじゃこの四人で、スケルトン討伐クエストに行くわよ!」
「墓場までレッツゴー!」
(……いや、行き先墓場なんかよ)
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