秘密の隠蔽に一番役立つのは、知略でも魔法でもなく『人の話を聞かない剛腕』だ
冒険者ギルドは、夜分だというのに妙に活気付き、混雑していた。
ボードにはクエストが張り出され、様々な冒険者が仲間を募り、声を上げている。
そんな中をすり抜け、順番を待ち、カウンターへ。
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
丸い眼鏡が特徴の、ボブヘアでブルネットのギルド職員の女性が愛想良く対応した。
「クエストの受注ですか? それとも他の御用でしょうか?」
「登録をしたい」
「登録ですね? ええと、お二人とも?」
職員はジノの背後のルミナに気付き、ルミナも慌てて頷いた。
「はい、私もお願いします!」
「お二人、登録希望ですね?」
「担当者を呼びますので、暫くお待ち下さい」
(いや、担当わざわざ変わるのか……)
「お待たせしました〜! 私が担当のリリィよ〜!」
カウンターの奥から現れたのは──。
ドスの効いた低い声に、ド派手な金髪ツインテール。
そして、鍛え上げられた上半身が目に飛び込む。
──それはゴツイ何か。
ジノは反射的に顔を逸らす。
(本能で、直視出来ない……)
「新人さん、登録の受付は私にお任せよ!」
「……」
ジノは思わず踵を返し、帰ろうとする。
「あーっ、待って待って、お兄さん!」
「私の美貌に恐れをなすのは分かるけど、折角来てくれたのだから、登録はしましょうよ!」
「……誰がお前の美貌に恐れをなすんだ?」
身を翻し、思わずツッコミを入れる。
「キュピーーーーン!!」
「私、今ピンと来ちゃった! お兄さんて、めちゃくちゃイケメンでしょ?」
「もう、オーラが出てるもの。うん、めっちゃ出てる」
ジノの前髪をサラリと捲って、ゴツイ何かはニンマリと笑った。
「ほら、やっぱりイケメンよぉ〜〜! 久々のSS来たわ…」
(何だこいつは……? 何なんだ?)
「美しい者同士、仲良くしましょ?」
バチンと音が聞こえそうな程のウインク。
ルミナはずっとぽかんと口を開けたまま、固まっている。
「SSのお兄さん、ここにお名前とジョブを記載してね」
「はい、そっちの可愛らしさ満点のお嬢さんも!」
差し出された紙に、素早く記載して目を逸らす。
「ええと、お名前はジノ君ね? 可愛らしい名前だわ」
「えっ、ジョブは魔導士ですって? てっきり私の心を盗みに来た盗賊かと思ったのに……」
「こちらのお嬢さんはルミナ……ええと長いから、ルミルミちゃんてことにしとくわ。ジョブは神官、と」
ルミナは呆然としながら、うっかり本名を書いてしまったのだが、リリィは何とスルースキルを持ち合わせていた。
「これで書類による受付は済んだわ」
「これから冒険者ギルドの決まりをレクチャーしないといけないんだけど」
リリィはカウンター内を一瞬キョロキョロする。
──何だか嫌な予感しかしない。
「ええと、担当者がいないみたいだから、私がそのままやるわね!」
「……」
「このまま私に付いて、奥の部屋に来て下さいな!」
ジノは無言で再び踵を返す。
「いやーーーーん、だから帰らないで!!」
「ホント、ジノたんは照れ屋さんなんだから!」
「……」
腕を物凄い力で掴まれた。
固まっているルミナは、そのまま横抱きに担がれてしまった。
「はい、じゃあ、訓練場までレッツゴー!」
(……最悪だ)
読んでいただきありがとうございます。




