『ひのき棒』で十分な奴に限って、周りが寄ってたかって『伝説の装備』を装備させたがる
町の防具屋で、最低限の装備を整えることにした。
魔導士として登録するというジノの要望に応える為、ルミナは張り切って衣装を選んだ。
しかしジノ本人が、
「シンプルなのでいい」
一般的なローブや帽子も、不要だと首を横に振った。
「ジノ様、魔導士にはちょっと見えないです……」
全身黒ずくめの、シャツにズボン、そして革のブーツ。
「これじゃ、暗殺者みたいだな……」
ルミナは、手触りの良い黒いマントを差し出した。
「せめてこれだけでも」
フードの付いたマントは、顔をなるべく隠したいジノにはうってつけだった。
「なら、これにしよう」
ルミナは微笑んだ。
(……良かった。お似合いだわ)
「お前も選べよ」
「はい!」
ルミナが選んだのは、動きやすいチュニックで、その下にレギンスと革のブーツを合わせた。
ジノとは反対に、全身白でまとめ、白いケープを羽織る。
「お、白黒コンビだな」
鏡に一緒に並んだ姿は、とても様になっていた。
まるで二人の属性を表すかのようだ。
「あっ、そういえば……」
ジノが荷袋の中から、銀の髪飾りを取り出した。
いつの間にか、荷物に紛れていたものだ。
(……あいつか)
「俺の母親の形見だ」
ハーフアップにしたルミナの髪に付けた。
「そんな大切な物、良いんですか?」
「女物で俺は要らないし、これには魔力を増幅する効果がある」
「お前にやるよ」
「……ありがとうございます」
ルミナの頬がうっすら赤く染まった。
(ジノ様からお母様の形見を……大切にしなきゃ)
「装備はこれで良しとして、武器をどうするか」
「魔導士なら、杖とかロッドですよね?」
「ぶっちゃけ俺は要らないんだよなぁ……」
(俺の魔力に耐えられる物があると思えない)
「でも、武器がないと格好がつきません」
「仮にも自称魔導士を名乗るんだもんな」
二人は近くの武器屋に移動した。
そこで、ルミナは最高級の白魔導士用の杖を買った。しかし、ジノは何の効果もない、ただの檜《ひのき》の棒を手にしていた。
「ジノ様、ただの棒ですそれ……」
「いや、一応杖だからこれ」
「あの、お金の事なら遠慮なさらなくても……」
ジノが選ぶ装備はどれも格安だった。
「俺はこれでいいんだ」
(どうせすぐぶっ壊れる)
「ジノ様は、格好でも魔導士らしくないのですから、せめて武器くらいはちゃんとして下さい」
ルミナに押し切られ、最高級の長老の杖を持たされた。
「木製に拘られるみたいなので」
ルミナは満足そうにニッコリ笑った。
「姫さんて、笑うと頬にエクボが出るんだな」
まじまじと顔を近付けて、ジノが言う。
「!」
突然の事にルミナは戸惑う。
カーッと頬が赤くなるのを自覚する。
「は、早く冒険者ギルドへ向かいましょう!」
早足で駆け出すルミナの背を見て、ジノは少し笑う。
「……ハムスターの時とそっくりだ」
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