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『勇者様』なんて呼ばれるより、『名無しの魔導士』でいる方が、大抵の場合メシが美味い

町に到着するなり、一行は町一番の宿屋に直行した。


ルゥがこの宿を手配したのは、値が張る分、ある程度の安全が保証されているからだ。

加えて、一階に食堂が併設されている。


宿の前で、ジノは辺りを見回した。


(……とりあえず問題なさそうか)


「一番良い部屋を取ってありますので」


ルゥが二人にそう告げる。


「その前に飯にしようぜ、飯」


一同、朝からまともに食事を摂っていなかった。

テーブルに座り、各々(おのおの)注文する。


「安心したら、何だかお腹が減ってきましたね」


「ネズミのままじゃ、満足に食べられなかったしな」


(いや、あれはハムスターじゃなかったのか……?)


食堂内は酒飲みの男達が目立つ。

多くは冒険者らしく、武勇伝や依頼の話で盛り上がっていた。


食事を終えたジノは、隣のテーブルに耳を傾ける。


「そういや、最近の依頼、妙に楽じゃね?」


「殆ど魔鉱石の採取だろ?」


「……嫌な感じしかしねぇな」


「馬鹿、それ以上は黙っとけ……」


「……」


「……使えるな、冒険者」


「ジノ様、冒険者に興味があるんですか?」


「いや。お前ら、帝国が戦争仕掛けるかどうか、裏取りしたいんだろ」


「勇者様は何が言いたい?」


ルディは苛立ちを隠さない。


「ギルドはどこの国にも属さない」


「つまり、情報の偏りが少ない」


「!」


「まずはギルドから当たるべきだ」


「……盲点でしたね」


ルゥが小さく(つぶや)く。


「各ギルドの情報を照らせば、動きくらいは見える」


「情報屋も使えば尚更だ。金はかかるがな」


(……知らないのか。いや、知らない方がいいか)


「……それも含めて検討しましょう」


「とにかく、まずは食事を済ませましょう。姫様とジノ様の格好もどうにかすべきですし……」


確かに二人は浮いていた。


ジノは上等な服だが血塗(ちまみ)れ。

ルミナは簡素ながらも派手な赤いドレス姿。


「商人ギルドには僕が行きます」


「俺は冒険者ギルドだ」


「登録しておいた方が動きやすい」


ルミナの顔が明るくなる。


「とうとう勇者として、正式に活動なさるんですね!」


「……いや、魔導士で登録するが」


「えっ?」


「勇者なんて登録したら即バレる。帝国に捕まるぞ」


「それは間違いないだろうな」


ルディも同意する。


「勇者というだけで、利用される可能性が高い」


「我々も国家の代表(・・・・・)として、勇者を探していたんですよ」


ルゥの言葉に、ルミナは言葉を失う。


魔物に(おび)える人々を、勇者なら救える。

そう信じてきた。


「代々の勇者は、どこかの国の支援を受けていました」


「……話は決まったな。俺はもう行く」


ジノが立ち上がると、ルミナも続く。


「私も行きます」


ルディが釘を刺す。


「騒ぎは起こすな。それと……」


「あー、この格好だろ。適当な店に寄る」


「……それじゃ、二人とも後でね」


二人を見送り、ルディが呟く。


「ジノはまんざらアホではないんだよな……」


「むしろ、一番現実を見ているのは彼です」


「……気に食わんがな」


ルゥは肩を(すく)める。


「お前は本国に連絡を入れろ」


「はいはい」


だが、その連絡は遅過ぎた。


既に、本国から追っ手は放たれていた。


読んでいただきありがとうございます。

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