探し中(その二)
梅の季節が去り、桜の季節も過ぎ、暦は五月だ。
ある作戦の決行日になった。
今日は祭りだ。『博多どんたく』。博多の町がいつもよりも活気づいている。
この日は町のあちこちに、仮設の舞台が出現するのだ。それらの舞台で、三味線や踊り、唄が披露されている。
また、町中を『どんたく隊』が練り歩く。仮装した行列だ。『どんたく隊』が踊るのに合わせて、鉦や太鼓に、笛の音が鳴り響く。
この仮装した行列の中に、中山博士とその仲間たちの姿があった。
もちろん踊っている。今日のために練習してきた。
これも、幻の施設『鴻臚館』を見つけるためだ。
町のあちこちを練り歩いていく『どんたく隊』。
次に向かうのは、江戸時代に『福岡城』があった場所だ。
そこに現在、お城はない。「帝国陸軍の基地」になっている。基本的に「民間人は立ち入り禁止」だ。
しかし、今日は違う。『どんたく隊』なら例外だ。踊りながら基地の敷地内に入っていく。
(こんなにあっさり入り込めるなんて)
中山博士たちは心の中でほくそ笑む。
とはいえ、ここからが大変だ。
周囲には大勢の軍人たちがいる。彼らの目が光っているのだ。
この状況で、「『鴻臚館』の手がかり」を見つけなければならない。
しかも、「軍人たちから怪しまれずに」だ。
だから、事前に打ち合わせして決めている。
手がかりを探すのは、中山博士一人だ。全員で地面ばかりを見ていては、さすがに怪しまれるだろう。それは避ける。
探すことのできる時間は、非常に限られていた。この基地の敷地内を一周したら、『どんたく隊』は再び外へ。
あまりに短い時間だ。地面に落ちている物を拾うのがせいぜい。あまりに大きい物だと、あきらめるしかない。
しかし、それに賭けるしかなかった。最初から運任せの計画だ。正攻法での発掘調査が厳しい以上、こうするしかない。
中山博士は鋭い視線を走らせて、地面の上を探し回る。
何かないか、何かないか。
これまで生きてきた中で蓄えた知識、それを総動員して、「『鴻臚館』の手がかり」を探す。
何かないか、何かないか。それっぽい物は落ちていないか。
一方で、他の者たちはずっと顔を上げて、踊りに専念する。博士を囲む陣形をとっていた。そうやって、軍人たちの視線から博士を守る。
こんな緊張感の中で、笑顔で踊り続けるのは大変だ。
それでも、何とか踏ん張る。
こうして基地を一周した。『どんたく隊』は再び外へ。
中山博士は何度かしゃがみ込んでいたようだが、手がかりは見つかったのだろうか。
すぐにでも聞きたいところだが、ぐっとこらえる。
基地の外にも、軍人たちがいるのだ。今すぐに『どんたく隊』を抜け出すと、彼らに怪しまれるかもしれない。
だから、もうしばらく踊り続ける必要があった。お堀沿いを練り歩いていく。
とはいえ、やはり結果を早く知りたい。ちらりと中山博士の方を見る。
すると、博士は笑顔で踊っていた。
どうやら、それっぽい物を見つけたらしい。今日の作戦は大成功だ。




