五.「歓迎会前の女子会話」
「わあぁ~!!、小鳥可愛いっ」
「目鼻立ちがはっきりしているから化粧が映えるわねぇ~」
「この新作の紅とか付けてみましょうよ!」
「やっぱり衣装は、もう少し派手にした方がいいかしらね?」
翠夏含め、食婦と呼ばれる女官達に着せ替え人形にされているすずめ。
因みに食婦とは、後宮の料理管長と副官長の補佐的な役割を持つらしい。
もう間もなく夕餉となる試食会の時間が迫っていた。
「あ、あの…───正装って必要なんですか?。少し恥ずかしいのですが…」
「必要に決まってるでしょ!?。皇太子様達に会うんだもの。そ・れ・に…───新しい妃候補として引き抜きされるかもしれないって噂よ」
「き、妃候補!?。ちょ、ちょっと待ってください!そんな話は初見ですが!?」
「あら~、私達だってさっき聞いたばかりだものっ」
どうりで着飾っていたわけだ。
上級妃の総入れ替えの話は聞いていたが、まさか歓迎会を利用して妃候補を見つけようとするなんて……
(なんだか上手く使われているような……)
「小鳥が藍幻様から貰った搾菜が、まさか今回の試食会に出されるなんてねぇ…」
「藍幻様、普段はどんなに珍しい食材を手に入れても、一度も調理場に持ってきてくれた事もなかったのに……」
翠夏と食婦達は溜め息を吐いた。
すずめは藍幻に渡された搾菜を思い出し、ほんの少しだけ頰が熱くなった
《ちょうど良い搾菜が手に入ったのですが、貴女に調理して貰えた方が食材も喜びますね。》
《あ、ありがとうございます!。でも良いんですか!?》
笑顔を絶やさず、藍幻はすずめの耳元でそっと囁いた。
《満足させていただければ、それで文句なしです》
(いや、でも冷静に考えてやっぱり悪寒がするかもしれない…。まあ美味しい搾菜を貰ったことは有難いし……、試食会で沢山食べてもらえればいいか)
「もしかしてこれってこれって?」
「それってそれって!?」
「求愛!?」
「それだけは絶対ないですよっ!!。勝手な妄想を膨らませないでください!!」
。。。
歓迎会という名の試食会の会場である、四神堂と呼ばれる特別な食堂は、異様な緊張感に包まれていた。
この場所は、普段は一般の者が立ち入ることすら許されない神聖な空間だという。
(……き、緊張する……)
長い食卓の上には、藍幻から貰った搾菜を細かく刻んだものと薬味と白米。出汁とお湯───そして、茶葉が静かに並べられている。
食卓の向こう側には、薄いベールのような覆面を付けた三人の影が並んで座っていた。
(あれが……皇太子…)
すずめはごくりと唾を飲み込んだ。
——いよいよ、本番だ。




